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お転婆エミリアーナは好奇心のままにつき進む 〜私は悪役令嬢だそうですがヒロインにつきあっている暇はありません  作者: 帰り花


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第20話 おかしな噂(2)

「ねえ、あなた」


学園内の廊下を歩いていた私は、急に目の前に出てきて立ち塞がった三人の女子生徒にいきなり声をかけられた。


「あなた、大勢の男子生徒にすり寄って手を出してはご自分の周りに侍らせているそうですわね。公爵令嬢と言えどもそれはあまりにも傲慢ではなくて?」

「しかも見目麗しい殿方ばかりだそうじゃないの」

「その方たちはあなたにすり寄られて大層迷惑に思っているそうですわ。いい加減になさったらどう?」


矢継ぎ早に言われて私はぽかんとするばかり。

しかも心当たりが無いことばかり。


私は自分が見目麗しい殿方にすり寄る場面を想像してみようとした。

でも肝心要の手練手管が一つも思い浮かばない。


見目麗しい殿方と剣術か魔術か魔道具か魔石か薬草の話で盛り上がる場面なら想像できるのだけど、その先、すり寄って侍らせるところまでどうしても辿り着けない。


私の想像力は恋愛方面において壊滅的のようね。

現実でも恋愛方面において壊滅的なのは自覚しているのだけれど。



それはそうと、三人とも又聞きか噂話の受け売りをしているみたいだけど、何が狙いなのかしら?


「わたくしにはまったく心当たりがありませんが」


気を取り直してそう言いかけると遮るように言われる。


「まあ、図々しいこと」

「身分を笠に着てすり寄られたら断りきれないことぐらいわかりそうなものですのに」

「その通りですわ。その方たちも本当にお気の毒ですこと」


これは話になりそうもないわね。

でもいつものパターンだわ。

アントニオに好意を寄せる令嬢の時と同じだわ。

きっとこの人たちも誰か意中の人がいるのね。


「でしたらその方たちのお名前をお聞かせ願えますかしら?」


三人の目がキリッと吊り上がった。

あらまあ。


「まだとぼけるおつもり?」

「ガッティ子爵家ご令息のブルーノ様よ」

「それにウベルト商会ご子息のラウル様よ」


なるほど。

確かにあの二人は見目麗しい殿方と言えるわね。


実際は二人とは剣術か魔術か魔道具か魔石か薬草の話で盛り上がっているだけなのだけれど、他の人からは、私が二人にすり寄って侍らせているように見えているってことかしら?


でもそれを説明しても信じてもらえそうにないわね。

ならば。


「あなた方の言い分はよくわかりましたわ。ご助言ありがとうございます。あなた方の言い分が正しいかどうか、お二人の言い分も確かめた上で判断し、わたくしの不徳の致すところであればお二人に直接謝罪いたしますわ。もちろんわたくしの身分にお二人が忖度なさらないよう、あなた方からご助言いただいた事をお話すればきっと本心を明かしてくださるでしょう。どうかあなた方のお名前を教えてくださいませんかしら?そうすれば今日にもお二人に確かめ、あなた方のご懸念を早急に取り除いて差し上げられることと思いますの」


私がそう言うと、三人の顔色がさっと青くなった。


「いえ、その……」

「遠慮などなさらないで。わたくし、あなた方がさる子爵家と男爵家のご令嬢であることも、お名前も、そして二年生でいらっしゃることもわかっておりますわ。王国の貴族については家族構成から特徴まですべて頭に入っておりますので。ただお顔を拝見したのは今日が初めてのこと故、わたくしが万が一にも勘違いしていたとあってはあなた方にご迷惑がかかりますでしょう?ぜひお名前を教えてくださいませんかしら?」


三人の顔色はますます青くなった。


私が名前を知っているとは思わなかったのかもしれないわね。

それに二人に話されるのは困るみたい。

ということは又聞きした話か噂話を使って私を牽制してきただけなのでしょうね。


「どうぞ、わたくしを助けると思ってお名前を」

「いえ、いいのよ」

「ええ。わかってくださったのならそれでもう結構ですわ」

「わたくしたちの助言を素直に受け入れてくださったのならもうこれ以上言うことはありませんわ」


畳みかけるようにそう言って三人は逃げるように去っていった。



この場はこれでよし、として。


大勢の男子生徒にすり寄って手を出し侍らせている、というのはいったいどこから出てきた話なのかしら?


やっぱり剣術か魔術か魔道具か魔石か薬草の話で盛り上がっているところを見て勘違いされたのかしら?


それともそういう噂が流れているのかしら?



噂話だとしたら、エレナ嬢の関与が可能性としては一番高いわよね。

私を貶める材料にはなるだろうし。


あの噂ひとつでは足りないのかしら?


そうかもしれない。

本気で私を貶め叩き潰そうとしているのかもしれないわね。

それにしては手段が甘すぎると思うけど。


でも王太子妃になるなどあり得ない私をそこまで敵視するのはなぜかしら?



あ!

もしかして私がカルロ王太子殿下の従妹だということを知らないの?



いえ、いくらなんでもそんなはずは無いわ。

子爵令嬢なのだからそれくらいは知っているはずよね。


いずれにしても、こういった理不尽には慣れているから対処できるけど、不可解だわ。


まあエレナ嬢が本当に関与しているとは限らないから、今は様子見するしかなさそうね。


ブルーノやラウルに好意を寄せる令嬢からまた同じような攻撃をされることはあるかもしれないけれど、それはまあなんとかなるでしょう。



入学してからおよそひと月半。

入学式の代表挨拶を仰せつかった時に、波乱に満ちた学園生活になるかもしれない、と思ったけれどその通りになってきたみたいね。


さあ、これからどんな展開になっていくのかしら。


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