第18話 出会いのチャンスのはずだったのに
エレナ視点
私は先に攻略対象の残る二人を探すことにした。
それだって本当はすでに出会っているはずなのに、あの女が邪魔をしているに違いないわ。
本当に嫌な女だわ。
とにかく彼らは一般生徒で二年生のはずよ。
一人は茶髪碧眼で美丈夫のアントニオ、もう一人は銀髪碧眼の中性的な魅力を持つガブリエーレ。
二人とも剣術の達人で背が高くてすっごくかっこいいのよね。
もちろん顔は記憶に残っているから見ればわかるわ。
なんといってもめちゃくちゃ目立つ美形なんだから。
そう思ってニ年生のクラスルームフロアへ足を運んで該当する男子生徒を探してみたのに。
おかしい。
こんなに探しているのに、ぜんぜん見つからないわ。
どういうことなの?
私が戸惑った顔で佇んでいると、通りかかった男子生徒が何か困ったことでも?、と声をかけてきた。
そうよ。
こうやって全ての男は私に親切にすべきなのよ。
とりあえず二人の名前を言ってどのクラスか聞いてみると、そんな名前の生徒はニ年生にはいない、と言う。
こんなの絶対におかしい!!
どうしてよ!!
必ずいるはずよ!!
そうだわ!
一年生と三年生も探してみればいいのよ。
ちょっとだけ設定が変わっているのかもしれないから。
そう思って探してみたけれど、アントニオという名前の生徒は複数いてもみんな顔がまったく違う。
そしてガブリエーレという名前の生徒は一人もいなかった。
そう。
簡単なことだったはずなのに。
この一週間、誰ひとり攻略できなかった……。
だいたい特待生って何なのよ!!
特別科目を受講するための試験で忙しい?
そんなの知らないわよ!!
知り合った人と交流を深める時期のはずでしょう?!
なんなのよ!!!
それにアントニオとガブリエーレがいないって、どういうこと?
このルートで私は五人の美形に愛されるのよ!!
いないはずがないでしょう?!!
王太子に至っては一度もその姿すら見ることができなかった。
絶対におかしいわ!!!
なぜシナリオ通りにいかないの?!
どう考えたって私のせいじゃないわ!
入学前の出来事はすべてシナリオ通りに起きたんだから。
入学後にシナリオ通りにいかなかったのはあの女のせいに決まってるわ!
あの女が私の邪魔をしているからこうなったのよ!!
絶対に許せない!!
この私の邪魔をするなんて!!
脇役の分際で!!
あ!!!
もしかして?!
そうよ!!
あの女も転生者なんだわ!!
だから断罪回避に動いたんだ!!
出会いのフラグを全部横取りしたのがその証拠よ!!
絶対にそうだわ!!!
許せない!!
このまま黙って引っ込む私ではないわ!
見てなさい!
悪役令嬢エミリアーナ!!
あんたが断罪回避に動くなら、こちらも実力行使よ!
こうなったら噂を流すのが王道ってもんでしょ。
どのみちそうなるんだからかまわないわ。
私が実は王太子の婚約者候補だ、だけどそれを妬んで邪魔をする人がいて会うのもままならない、といった噂。
ここだけの話、として悲しげに、時に涙をこっそり拭うふりをして打ち明ければ、それを聞かされた子は黙っていられず、友達や知ってる子にそれを話すはずよ。
そうやって私があの女に虐げられていると見せかけたらいいのよ。
ふふん。
私って頭いいわね!
さあ、エミリアーナ!!
首を洗って待ってなさいよ!!
必ずあんたを叩きのめしてやるんだから!!




