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お転婆エミリアーナは好奇心のままにつき進む 〜私は悪役令嬢だそうですがヒロインにつきあっている暇はありません  作者: 帰り花


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第13話 私がヒロインのはずでしょ?〜入学式

エレナ視点

フラグ立っ…………えっ?!


え?

まってまって?

どういうこと?



私はいきなり入学式イベントで一人めの攻略対象との出会いを失敗して呆然とした。



「あの、ブルーノ・ガッティ様では?」


彼にそう声をかけて振り向かせ、手にしたハンカチを手放したらシナリオ通りに風が吹いて二人の間を綺麗にふわっと舞った。


来たわ!


この流れでシナリオ通りブルーノとロマンティックな出会いを果たす!


……はずだったのに。


本当なら彼がそれをすかさず掴んで、美しい刺繍を褒め、さらに私の美貌を熱のこもった目で見つめながらハンカチを手渡してくれるはずだったのに。


彼はハンカチに目もくれず、私のさらに後ろへと目を向けている。


この私、子爵令嬢エレナ様の美貌に目を向けることすらしないだなんておかしいでしょ!


「あの……わたくしのハンカチが……」


そう言ってみたものの彼は聞くそぶりも見せず、踵を返して去っていってしまった。


なんでよ?!

おかしいじゃないの!


怒りのあまり表情を崩しそうになったけれど、なんとか堪える。


イベントはまだ続くんだから、こんな所で立ち止まっている場合じゃないわ!

とにかく二人めにアプローチよ!

今度は必ずものにしてみせるわ!


私は気を取り直してハンカチを拾いあげると小走りに次のポイントへと向かった。



二人めの攻略対象は本命の王太子。

最初の出会いを果たすべく、私は入学式会場入り口へと急ぐ。

入り口まで来たとき、ちょうどいいタイミングで廊下を歩いていく王太子の横顔が目に入った。


そうそう。

ここで私が転びかけて、それを王太子が支えて助けてくれるのよね。

その時、王太子が私に一目惚れするのよ。


今度こそこの流れでシナリオ通りに出会いを果たすわ!


そう思いながら王太子めがけて転ぶ真似をしようとした瞬間、王太子と連れの足が急に早まって目の前を通り過ぎていく。


「あっ……」


思わず王太子に手を伸ばしたけど、その手はむなしく空を切る。

しかも咄嗟のことで足も動かず、そのまま本当に転んでしまった。


まわりを見渡してみても、近くの女子生徒たちは知らぬ顔をしているかクスクス笑うばかり。

誰か男性は、と探してみるも、自分に気がついている人がいないという間の悪さ。

会場の扉前に立っている警備員も動かない。

仕方なく自分で立ち上がったけど、とんだ恥さらしに自分の顔が真っ赤になるのがわかる。


どうしてよ?!

こんなのおかしいじゃないの!

なぜシナリオ通りにすんなりいかないのよ!


ニ度目の失敗に怒りも湧いてきて、癇癪を起こしたくなるのを必死で抑える。


でもまだチャンスはあるはずよ。


そう思って王太子の姿を目で追ってみる。

すると、黒髪の女子生徒と話をしている王太子の姿が目に入った。


何よ!

あんな女!

私の王太子に図々しいったら……。


あ!!!

あれは!

ゲームに出てくる悪役令嬢エミリアーナだわ!

あの女!

あの女がさっそく邪魔をしかけてきたのね!!

冗談じゃないわ!

わたしが主役なのよ!

王太子は私のものよ!

 

話を終えたのか、王太子と連れの男子生徒、そしてあの女がこちらへ歩いてくる。


このままじゃヤバい。

どうにかして王太子の気を引かなくちゃ。


そう思ったのに、あの女と王太子に連れの男子生徒は急に歩みをそらして入学式が行われるホールへ入っていく。

あわてて後を追いかけようとしたけど、ドアは警備員によってすぐに閉められてしまう。

ムッとしたけど表情を取り繕って言ってやった。


「わたくし、こちらに用がありますの。入れてくださる?」


この私が笑顔で丁寧に言ってやったのに、警備員はにべもなくドアの前に立ち塞がって言った。


「まだ準備中です。警備上、関係者以外の立ち入りはできません」


なぜあの女が関係者なのよ!

新入生のはずでしょ!

なんなのよ!

あーもうイライラする!!

こうなったらひとこと言ってやらなくちゃ気が済まないわ!


私はあの女が出てくるのを待ち構えた。

しばらくしてあの女だけがホールから出てきた。


さあ。

あの女に王太子は私のものと釘を刺してやらなくちゃ。

悪役は私の引き立て役にすぎないんだから、身の程を知りなさいよ。


ところが。


ふいに入り口を入ってきた男子生徒が私を追い越し、あの女に声をかけた。


「やあ、エミリアーナ。代表挨拶の準備できた?」

「ええ。今、手順を確認してきたところよ」

「どう?緊張してる?」

「少しね」

「大丈夫。僕がついてる」

「それは……本当に、とっても、この上なく、心強いですわ」


あの女が急に真面目な顔になって言い、その男子生徒が吹き出した。


なによ。

気取っちゃって、ホント嫌な女!


そのまま二人は笑いながら私の横を通りかかった。

ひとこと言ってやるつもりだったのに、その男子生徒の向こう側にあの女がいるから声をかけそびれる。


だけどふと、その男子生徒が言った『大丈夫。僕がついてる』というセリフが気になってその顔をよく見てみた。


あ?!!

あれは大商人の子息ラウル?!!


ラウルは私の三人めの攻略対象。

シナリオではこの後のクラス分けでラウルと隣の席になって仲良くなるのに。


それなのに、なんで私より先にあの女がラウルと親しくしてんのよ!

あのセリフも本当は私のものよ!

学園生活の心細さをこぼす私にそう言って元気づけてくれるはずよ!

ふざけないでよ!

どういうことよ!!!


もう私の怒りは爆発寸前。


怒りのまま追いかけ、二人が待機室へ入った後に続こうとするけれど、ドアが開かない。


どうして?


近くにいる警備員が私に淡々と説明してきた。


「こちらは特待生用の待機室です。一般生徒はあちらの待機室を利用願います」


特待生?

何よそれ。

聞いたことないわよ!

あ、貴族と平民の区別のこと?


「私だって特待生よ!」

「ではこの認証センサーに手をかざしてください」


言われるまま手をかざしてみたけどドアは開かない。


「一般生徒用待機室を利用願います」


慇懃無礼に言われてますます腹が立つ。

しぶしぶ一般生徒用の待機室に入ったけど、とにかく気持ちはおさまらない。


イライラしながら開式を待つうちに、ふと不安になる。


ここまでシナリオが崩れるだなんて、どういうこと?

二人との出会いが両方失敗するだなんて。


あ、でもまだクラス分けが残ってるわ。

シナリオ通り、ブルーノとラウルは私と同じクラスになるはず。

そして三人めのラウルと仲良くなるんだから。


今度こそ大丈夫。

それに同じクラスなんだから、ブルーノを攻略する機会はいくらでもあるわ。


見てなさい、エミリアーナ!

あんたはどこまでいっても悪役令嬢で、主役の私の引き立て役に過ぎないんだからね!!!


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