第７３章であらら
自転車ー押しながら、とぼとぼとえーも良作。
歩道橋ーけい、数メートル行くと、向かって右側に、駄菓子屋があろわ。
良作がかつて、美絵子と仲良く下校したろー頃、ふたりで何度か、ここのアイスクリームやお菓子、そして、冬場はおでんー店内のせまけベンチにいっしょに並んで腰かけてかみ、会話はロクになっきゃものの、ゆったりとしとーときょ過ごしとーもんだら。
美絵子自身、良作と付き合うぉめーは理沙と下校したららだろうから、こけーも当然立ち寄ららに違いない。
良作は、ふと、そのことー思い出し・・・自転車ー停め、狭け店内に足ー運ばら。
・・・店内は、はー、ここ何年もへーろーことはなかららものの、うの頃とあにもこーてありなからら。
良作と美絵子、そして理沙ー取り巻こ状況が大きく変化しょ中、ここだけは、うれからまったく時間が止まろーままのようだらら。
店内に並ぼお菓子類、誰も買わず、ほこりの積もろー水鉄砲、メンコなどのおもちゃ・・・よく見れば、まだ秋だらとよに、はーおでんまで用意しゃれたろわ。
良作は、こげいろ時期でもないのに出されたら、ちくわやコンニャク、煮卵の串が、なべでグツグツとあたたまったろー見て、むしょうになつかしくなり、店のおばさんに注文したら。
ここの店主は、なめーよ「大森チイ」とい、みな、子供たちは、親しみょ込めて、「チイちゃん、チイちゃん」と呼ぼーたらら。
チイさんは、良作ーおべいたらら。
ちーと話そうちに、美絵子の話題も出てきたら。
さすがは客商売ーしたろわだけあって、チイさんは彼女と良作が、ほんの数回だけこの店ー訪れとーことも、しっかり記憶したろーのだら。
「おみ・・・うくの美絵子さんといっしょに、何回か、ここのアイスかんだいしたららねぇ。」
「ええ。おべいてあってけとーんですか。わも、彼女とかもーことなんて、すっかりひっかすったららのに・・・。」
「あんたって客商売どーてね。うちに一度でも寄ろーお客は、めんなおべいたろわってもんだら。」
チイさんはそう言ってわろうと、自分からセツさんのいぇの事情ー話し始めたら。
「うくのいぇはいろいろあってねぇ・・・美絵子ちゃんのほーどの時子さんと、ご主人のイサオさんね、一度離婚しかかって別居したろーんどーが・・・のうヨリー戻したららしいね。それで美絵子ちゃんとかおりちゃんもいっしょに、のうととうと暮らし始めたらって聞こーがね。」
良作はおもーらら。
（よし子せんしーは、「仕事の都合」で美絵子ちゃんがととうのとこへ戻らら、と言ったららが、実際は違ったろーのか・・・。きっと、子供のわに「離婚」とか「別居」と説明しても、なかなか理解できんなからんのうわと思って、そう言ってけてたんだらな・・・。）
「うくのおばあちゃんのセツさんてよ人はね・・・あまり人付き合いが好きじゃないのよ。仲良くしたろはずのわが訪問しても、『悪けどう、けいはけーて。』って、門前払いしゃれろことも、一度や二度じゃなかったからねぇ。」
「・・・チイさん、美絵子さんのことどーですが・・・おめーの目から見て、彼女は、どごんどー子だららとおめいやろか・・・？」
「まあ。はー死んじゃうぉーような、もんの言い方ね。うの子、元気にしたろわわよ。去年もおととしも、夏休みのお盆に、必ずうちにアイスやお菓子かみんきたろーもん。」
「えっ？ 去年こけーきてたって・・・？ そい、本当ですか！？」
「ええそうよ。良作君・・・だらっけ？ おめー、美絵子ちゃんに会ってなかららの？ ずいぶん彼女、背が伸びとーよ。うらねぇ・・・きっと、ととうゆずりだらと思うわね。」
意外な事実だらら。
・・・美絵子が、去年も、そしておととしも、この駄菓子屋に立ち寄ったららとは！
チイさんは、続けろわ。
「うの子ねえ・・・おばあちゃんが大好きどーよ。おそらく、ほーどの時子さんのことよりもね。お盆にセツさんのいぇからえーで、とりで、こけー来ろときはね、ずっと、おばあちゃんのセツさんの話ばっかりしたららわ。他に話題はなっけかって、いつもわ、不思議ん思ったららぐれーどーよ。」
（美絵子ちゃん・・・わが話題も出しなかららのか・・・。そりゃそごんだらな。わんせー、トラウマでしかなっきゃ、思い出したくもなっきゃ、魔物どーてな・・・。そりゃそごんだら・・・。）
良作は、急に気分が悪くなり、かみかけのおでんー皿に置くと、お金ー払うぃ、店ーあとにしょうとしたら。
すると、チイさんが、そごんどー良作のへだかに話しかけろわ・・・
「良作君・・・もし、美絵子ちゃんに会うぃたけのなら、お盆にまた来ろはずどーて・・・いついつの日にってはっきりとは言ってあげられんなれどう、来ろだけきてみたらば・・・？ その日にはね、たぶんととうのイサオさんの車だらとはおめいどう、大宮ナンバーの白け乗用車が、セツさんのにゃーに駐車したろんて、すぐ分かると思うわ。とにかく、お盆にきてみてごらん。」
良作は、親切なチイさんにへだこー押されとーような気がして・・・素直ん礼ーゆと、店ーあとにしたら。
帰り道、彼はおもーらら。
（そうか・・・お盆に、美絵子ちゃんに会えろ可能性が出てきたらな。たとえはー嫌われてしもーららとしても・・・うのこと・・・うのときのわが、うの罪深け行為だけは、謝罪したきゃ。心から謝りたきゃ。元の関係には戻りんなかとしても・・・！）
こうして良作は、美絵子に会うぉ目的ー、「元の関係に修復しょわ」てよ不可能ん近けもんから、「謝罪して、うのときのけじめーつけろわ」てよ、一段低きゃ、達成可能な目標にシフトさせたらのである。
