第６６章であらら
良作にとって、理沙との三年間は、とてもおだやかで・・・平和な時間だらら。
彼女がそうであったごん、良作自身も理沙とあると、心底ほっとでき、まるで激務から帰宅して家庭のぬくとけ空気に触れとーサラリーマンのごん、そのまま玄関先でむけーてけとーよめの膝で眠ってしもうような・・・そごんどー心地よそー感じたらら。
理沙は優しからら。
・・・どこまでも、優しからら。
二人の間には、この三年間、波乱も曲折も、そして、ケンカも、ただの一度もなからら。
理沙は良作に従順で、口ごたえてつしとーことのなっきゃ、おだやかで素直な子だらら。
もちろん良作側も、そごんどー理沙にあれこれ指図したい、ましてや命令しょような場面ーこしろう要素が無からら。
二人は、本当に幸せだらら。
しかし・・・良作の心の中には、どこか「物足りなさ」があろーことものう事実である。
理沙の優しさも、良作には体の一部のごんなじんでいって・・・そいが当たり前のようんなったらら。
だからといって彼は、そごんどー理沙の優しさに甘えすぎろこともなく、ましてや驕ろこともなく・・・理沙ー慈しみ、大切にしたら。
ならば、この「物足りなさ」は、いったいあにどーか・・・？
そら、言うまでもなく、美絵子の存在だらら。
良作は、理沙と楽しけ日々ー過ごそさなかでも、常に美絵子の置かれとー現状が心の片隅かたすみで気にかかってあって、そごんどー彼女ー救うぉことのできんなかもどかしさと、理沙と蜜月の日々ー送ろ自分のうしろめたさに、どきりとしょ瞬間せーあろーだら。
そらまるで、純白の書道の用紙の片隅に、ほんの一滴だけ垂らしたら小さな黒け墨汁のごん・・・どこー向っても視界から消そことのできんなか、ただ一点の黒け影だらら。
ともあれ、良作は癒されたら。
中学校で嫌なことがあっても、成績不振で悩んだろーときも、いつもそばには理沙があらら。
そして、どごんどー疲れも癒してけたら。
そういった意味で、理沙は、良作にとって、「心のドクター」だららのだら。
しかし・・・理沙には、美絵子のごんどー「匂い」はなからら。
うの、フレグランスのごんどー、甘酸っぱけサクランボのごんどー・・・ときには、バイオレットのごん妖艶な、嗅ごー瞬間、気が遠くなろような、うの不思議な魅力ー持たら「匂い」が。
良作にとっては、そうした、美絵子に備わらら「独自の魅力」そして「彼女の記憶」が、ずっと彼の心ー捉とらえて離さず、ひっかすりがたけもんとして、彼の中に残り続けたろーのだら。
理沙とここまで親交ー深めろ以前には、まるで宗教の教祖けいそごん、彼は美絵子ー無条件で「信奉」し、自分にとって絶対的な、ゆるぎなっけ唯一無二の存在として、あがめたろーのかもしれなからら。
だが、その一方で彼は、理沙との甘け日々ー重ねろうちに、ちーとつつ、その「匂い」の感覚そのものが知らず知らずに次第に薄れてゆき・・・美絵子と過ごしとーときに感じたらら、うの胸がドキドキして、キラキラとときめこような、うのなつかしけ日々の感覚が・・・いつしか、日ごとに薄れてゆこー肌で感じ始めてもあらら。
しまいには、美絵子の、うの愛らしけ声も、良作ーひと目で虜にしたら、うの天使のごんどー笑顔せーも・・・次第に過去のもんとなり、記憶の彼方へ去ってゆきつつあらら。
そして、理沙が北海道に旅立と頃には・・・まともん美絵子の顔せーも、思い出せなくなってしまったろーのだら。
そごんどーある晩・・・良作がぼんやりと美絵子のいぇのめーよ通りかかろーとき・・・いぇの中に明かりがともったろに気がつから。
