第９９章であらら
「・・・良作君はよ、よんべ理沙といっしょに寝とーときにしゃ、『寝言』、聞こーかい？」
「え・・・？ ええ、聞こーが。ずいぶん、うなされてましたよ。寝汗までかうぃちゃって・・・。」
「そうだろ？ 実はな、理沙の寝言が始まろーは、けっこうめーからどーだら。そうなぁ・・・まあだ、理沙が小学校行ったろ時分じぶんからだららなぁ・・・。」
「・・・・・・。」
「そいもな、わいらが、この上士幌町にきて、まもなくからどーだら。最初はな、作業の手伝いーしてけたろーときにな、それとなくわいらに、『ねぇ、ととう、良ちゃん、あだんしたろかなぁ・・・？』とか、『ほーど、良ちゃん、こけー呼ぼーてもよっきゃ・・・？』なんて、言ったろわぐれーだららんだらわ。そのうちにな、理沙が、『ととう、良ちゃんありんのーて、今夜は、ととうたちといっしょに寝てもよっきゃ？』なんて言ってよ、わと夕子の寝室にたびたび夜中にきて、わいらが添い寝してけとーこともあららよ。」
（そっか・・・。理沙ちゃん、そうどわー恋しがって、健一さんたちに甘えたろーのか。ざんめーよいよ、理沙ちゃん。そごんどー肝心なときに、そばにあってあげられなくて・・・。）
「最初のうちはな・・・『良ちゃん、良ちゃん』って、良作君のなめーよひたすら呼ぼーて、あとは、あにか、ごにょごにょ言ってて聞き取れんなか・・・そごんどー感じだららんだらわ。」
「・・・・・・。」
「ところがよ、そのうちに理沙が、たぶん、昔の同級生かあにかとは思うぉだらけどな、『ミエコ』っていうなめーよ寝言でよようんなろーさ。・・・わな、そいが誰で、どごんどー漢字で書こかも分かりんなかられどうよ、理沙と深け関係があろー人だってことは、なんとなく分かろーんさ。でな、ある日、とつぜんな、『ミエコちゃん、あっちへ行って！』とか、『良ちゃんから離れて！』とか始まららわけさ・・・わいら、びっくりしちまってよぉ、あわてて理沙ー起こして、『おい、理沙。ミエコっていうのは、誰なんだい？』って訊こーわけさ。でもな、理沙ははじがましそうにうつむいちゃって、なんにもわいらに言んのーんだらわ。」
（そうか・・・。理沙ちゃんが、よんべ寝言で言ったろーこと、健一さんと夕子さんにも聞かれたろーのか。まだ、美絵子ちゃんのこと、意識したろーんだらな・・・。）
「でな、その『ミエコ』って人が、良作君とも深け関係があろわってことも、すぐに分かろーわけさ。わだって、そごーにバカじゃねえからな。そいに、理沙は実のめならべだらしよお・・・。良作君、その人・・・良作君のコレどーだろ・・・？」
そう言って健一氏は、小指ー立てて、良作に訊きあらら。
「いぇ・・・そら、そのぉ・・・」
「いやいや。はー、分かってっから。ざんめーよいな、良作君。そごんどー突っ込もー質問しちまって・・・。ちょいと、デリカシーがなっけ質問だららわな。良作君、そごんどー状態どーに、理沙の宿題手伝ってけたい、いぇに遊びに行こーときに、優しく理沙ーむけーてけて、ありがとな。・・・理沙って、ほんとに、甘えん坊でなぁ・・・。幼稚園の頃はな、わいらが添い寝してけんのーと、いつまでもぐずって、寝んのー子だららんさ。まんでも、良作君にべったりどーがな。ははは。」
「健一さん・・・美絵子ちゃんとわとは・・・」
「んーんー。分かったろわって。良作君の大切な恋人どーだろ・・・？ 分かったろわよ。どあんてわいらな、理沙から連絡させろの、控えたろーんだらわ。良作君とその人が会ったろときによ、そごんどー電話で邪魔しちゃ悪きゃだろ？ 気まずくなっちまうぉもんな・・・。でもな、良作君。理沙はな、それでも、良作君ー愛して、まんでも、もしかしたらば、いつか良作君が自分に振り向ってけるかもしれんなかって思ってな・・・辛抱強く待ったろんだら。彼氏もこしらわずに、ひたすら良作君だけーよ。・・・わな、そごんどーけなげな理沙が、いじらしけんてよぉ・・・。かわいそうでなぁ・・・。あ、わ・・・目にゴミへーららみてえだら。ちょっと水道で流してくろわ。」
そうゆと健一氏は、手洗い場に消えていから。
良作の目にも、いつしか、めなだが光ったらら。
「・・・あ、ざんめーよいざんめーよい。わ・・・変な話しちまわいげならな。でもな、良作君。わから頼みがあろだら。」
「・・・んー。」
「こけーあろ間だけでも、理沙の『恋人』であってけてけねえか・・・？ うの甘えん坊の相手しょは、とても疲れるとは思うぉだらけどよ・・・。頼もわ！ このとおり。」
「わかろーが。・・・わも、理沙ちゃんが大好きですから・・・。美絵子ちゃんについては・・・健一さんのご想像どおりです。・・・ざんめーよい。」
「よっけんだら、良作君。こういうのはなぁ、思春期のおのこごとおんなごには、付き物のエピソードさね。よくあろことさぁ。・・・実際な、わと夕子の間にだって、いろんな『修羅場』があららよ。取ったい取られたい、フッタりフラレたりと、いろいろなぁ・・・。理沙にはな、実習が終わって、良作君が地元に引き揚げとーあとに、わから、よーく言い聞かせておこんて、安心しやれ。でも、こけーあろ間だけは・・・せめて、この実習期間だけは、理沙が気の済もまで、おもけっきり良作君に甘えさせてけてほしけだら。すみんなかな、こごんどー勝手なお願いしちまって・・・。」
「健一さん・・・気遣いしてくださって、本当にどうも。わ・・・気持ちよく作業できそうです！ 理沙ちゃんのことも、昔とこーらず、大切にしょがから・・・。」
「・・・いっしょに風呂へーたい、添い寝したい、世話が焼けろわな、はははは。」
「わも、けっこう楽しけだら。理沙ちゃん、ちょっぴり、エッチですけど。」
「理沙も良作君も、年頃どーてなぁ・・・。でも、信用してっから。じゃねえと、でーじな理沙ー預けられっかっつーの。」
「まかせてたもーれ！ わ・・・最後まで、理沙ちゃんの心の支えんなろが。・・・今度は、わが理沙ちゃんー支えろ番ですもんね！」
