城の役目と過去
広すぎる城を三人は見回っていた。
「ライトさん。広いですね…」
ウルフはオロオロした。
「まぁ、いずれたくさんの兵士達がここで修行をして生へ帰っていくのが役目だからな。一人でも多く助けたい」
兵士たちが過ごす部屋や稽古場などを見回り、最後に広い部屋に入った。
「ここが私の部屋だ」
書籍やたくさんの本が入っている棚。テーブルにキッチン。そして風呂やベットまで完備されていた。
「一応城は男女一緒だが、風呂やトイレは別になっておる。性別はないって聞いたが、体型は変わらない。そこの配慮はしたから、安心して」
クロは見回りに疲れたのか、眠ってしまった。ライトはベットにクロをそっと寝かせた。
「ところで、君はなぜそんなにボロボロなんだ?嫌なら話さなくてもいい」
ライトとウルフは椅子に座った。
「…かなり、言いにくいんですが」
ウルフは震えていた。
「私…生きてる時に…殺されて…」
ライトは黙って頷いた。
「仕事の帰り道に…急に連れてかれて…襲われて…」
ウルフは涙がポロポロ流れた。ライトは優しくウルフの背中を撫でた。
「ウルフ。辛い話をしてくれてありがとう」
ウルフは興奮しているのか、震えが止まらなかった。ライトは落ち着くまでウルフを優しく撫でて待った。しばらくすると、ウルフの震えが止まった。
「ライトさん。ありがとうございます」
ウルフはずっと下を向いていた。
「いいや。私の方こそありがとう」
ウルフの頭を撫でた。
「私、生きてる時にありがとうとか、褒められる事がなかったので、死んでからこう言うことされるの、なんか変…」
「そうだったんか。辛かったな」
ふとライトは考えた。城にくる人達は、ウルフみたいに過去に屈辱や虐待などを味わった人が来るのだと。
「ウルフ。いいこと思いついた」
「なんでしょうか?」
「この城に来た者は最後は生になって帰って行くが、ただ帰るのも勿体無い。そこでだ。みんながこの城に来てよかったって思えるような場所にしたいと思っている」
「と言いますと?」
「みんながお互いにフォローし合い、助け合い、楽しい環境にしていきたい」
ライトの目は輝いていた。
「ライトさん…でも、私一人じゃ…」
「君一人だけでやれって言ってないよ。私と君で築き上げて、後から入って来た者も楽しく過ごせれるようにしていきたい」
いつのまにか、ライトはウルフの手を取っていた。
「ラ…ライトさん」
「頑張っていこう。まぁ、まだ計画は未定だがな!」
ライトは笑った。ウルフはどこか引きつっていた。
「まぁ、まずは君と仲良くやる事だな。あとは、ここに引越しして…」
「ライトさん。ここに住むんですか?」
「あぁ。住む。アパートの家賃勿体無いし…全財産姉さんに取られたし…」
ライトは人差し指で指遊びをした。
「え…最低ですね…」
「それに、クロ置いてくし」
ライトはクロを見た。クロは眠っていた。
「でも、この子には罪はない。むしろまだ赤ちゃんなのに、素直でいい子だ」
ウルフもクロを見た。
「可愛いですね…ライトさんはクロの事好きですか?」
「あぁ。好きだ。だが、また姉さんの所に帰る思うと寂しいな…」
どこか切ない顔をしていた。
「私…生きていた時、赤ちゃんなんて考えた事なかったな。毎日仕事して家へ帰るの繰り返し。生きている意味って何だろうって考えながら、毎日過ごしていました」
「そうか。私も、悩むよ。生きている意味とはってね。でも、ある龍に憧れていつかはライダーになりたいと思ってるんだ。それが私の夢だ」
ウルフは首を傾げた。
「ライトさん。ライダーって、龍と一緒になりたいんですか?私、ライダーの人と会ったこともないし、龍も見たことがありません」
「ほう。じゃぁ、教えようか。こう見えて、龍の研究について大学の教授をしているからな」
すると、部屋の壁に手を当てると黒板が出てきた。
「え…」
「さて、授業しようか」
ライトは黒板に何かを書き始めた。
いつも読んでいただきありがとうございます。
なかなか投稿ができなく申し訳ありません。
気まぐれに上げていこうと思います