この世とあの世の境目
「ここが、灰色の世界の終着か」
ライトは半年間、灰色の世界を歩き続け、ついにたどり着いた。みると、黒い山々が広がっており煙が上がっていた。マグマなのか、時々赤い物が流れていた。そして、断末魔が絶えず響いた。ライトは面白半分で一歩足を踏み入れた。すると、誰かが肩を掴んだ。
「なぜ生きている人間がこの世界に入ってきた。ここ最近、出入りの音がよくするなとは思っていたが…」
振り向くと、ソレが大剣を身構えた。
「あーごめんごめん。実は、半年くらいに滑落してその時に迷い込んだんです。で、気になってずっと歩き続けて、今日ここへ来れたんです」
ライトはソレに謝った。
「ほう…じゃぁ、この世界の夜は体験…」
「あーしましたよ。いやー滑落した時さ、夜中でね。いきなり影だと思うんですが襲ってきてさ。ビビりましたよー」
ライトは笑っていた。
「え…あれ一晩耐えたんですか?」
「うん」
ソレは戸惑っていた。
「あ…そうですか。あ、言い忘れていました。私はここで門番をしている者です」
よく見ると、ソレには立派な角が生えていた。すると、また断末魔が響いたが声のトーンが違った。
「さっきから聞こえるこの断末魔は何ですか?」
すると、ソレは丁寧に説明をした。
「ここはな、あの世だ。お前が歩いてきた世界は、この世とあの世の境目だ。あの世では、善悪関係なしに、死んだものが来る場所だ。罪人にはもちろん地獄を見てもらう。善人はまた、生を受け誕生する。だが、全部が全部そうではない。善人が罪人と間違われる。真逆もある。我々も、そこの改善を目指しているが、この世の死亡人数が多いのか、追いついていないのが現状。罪人が地獄に行った悲鳴はいい音だが、善人だった人が間違えて地獄に行った悲鳴はいつも申し訳ないと思っている」
ソレは何処か寂しそうだった。すると、ライトはある提案をした。
「いいこと思いついた!」
「ん?」
「この世界に城を作り、善人だった人が地獄へ間違えて行ったら城に来るってのはどうでしょうか?私の兵士や部屋住として管理し、いずれ生を受ける。苦しんで死んだものを、死んでも屈辱を味わい続けるのは、かわいそうじゃないですか?」
ソレは少し悩んだが。
「いいだろう。ただし、万が一のことがある。あの世の近くに城を建てろ。そこの土地周辺は影が襲ってこないようにする。我々も、見てくれる人がおると助かる」
「おーよかった。いやー実は引越し考えてたんですがね。お金を盗られて引っ越せれなくて」
ソレは何処か引きつっていた。
「…言っておくが、死んでここに来た者は生きていた記憶が残っているが、名前は消去されている。そして、性別もない。言うなら体型はそのままだが、生殖器等がない」
「ほう…てことは、私も死んだら…」
「ただ生を受けたら、記憶どころか何もかもない。最初っからだ。生きる原点からだ」
そう言うと、ソレは灰色の世界の地面に手をついた。すると、一部だけ地面が青くなった。それはどんどん広範囲に広がった。
「このくらいあればいいか?」
みると、どこかの城がすっぽりと入る大きさだった。
「おー。充分だ」
ライトは拍手を送った。
「では、成立だ。所で、名は?」
ソレはライトに問いた。
「私の名は、ライト・ルーマスだ」
ライトはソレに礼をした。
「ほう。では、よろしくな。ライト」
ライトとソレは固い握手をした。
「で、今日はもう夕方になる。本格的には明日動こうと思う」
「なるほど。では、後日一人だけ入れよう」
そう言うとソレは溶けるように消えていった。
「さて、アパートでデザインでも考えてくるか」
ライトも指を鳴らすと、その場から消えて行った。
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