誘い
「姉さん。クロ離乳食食べれるようになったんだ。ちゃんと食べさせてあげなよ」
大学の校門前でライトは姉にキツく言っていた。
「チャントメンドウミテル。アナタガクチダサナイデ」
すると、横にいた夫が口を出した。
「俺たちは今から海外で仕事をすることになった。向こう一年は帰ってこない」
ライトは驚いた。
「え!?クロは?」
「クロはちゃんと育てる。安心して欲しい。今まですまなかったな」
それだけ言うと、クロを連れて帰ってしまった。
「クロ…」
別れ際、クロは寂しそうだった。
教授室に戻り、期末テストの準備をした。
「多分…赤点にはならんと思うが…」
すると、チャイムが鳴った。テスト用紙を持ち、教室に入った。
「おはよう。期末テストだ。頑張ってな」
ライトはテスト用紙を配った。全員にテスト用紙が行き渡った。すると、チャイムが鳴った。
「はじめ」
生徒たちはテストに取り掛かった。ライトは教壇の椅子に座り、生徒たちを監督した。だが、途中で暇になった。
…暇じゃ〜
心の中で思っていたが、声に出すと生徒たちが怒る。退屈で仕方がなかった。が、残り十分で堪忍袋の尾が切れた。ライトは静かに立ち上がり、何故かパントマイムをし出した。
暇だし…声出さないし…退屈から解消…
最初は誰にも気づかれなかったが、数名の生徒がライトのパントマイムの動きに笑いを堪えた。そしてチャイムが鳴ると、生徒たちは吹き出した。
「ライト先生!テストの邪魔しないで!」
「えぇ〜。暇だったもん〜」
「俺たちを赤点にさせたいんですか!?」
生徒たちに詰められた。
「ごめんごめん」
ライトは謝り、テストを回収した。
「てことで、私の科目のテストは終わり。他の科目のテストがある人は頑張ってねー」
ライトは教授室に戻り、採点をした。
「うん…赤点いなさそうだな」
最後の一人まで採点し確認した。
「うん。大丈夫。よかったー」
ライトは安心した。テスト用紙を片付け、研究室に向かった。
「みんなお疲れ」
ライトの挨拶に皆が顔を向けた。
「お疲れ様です。ライト先生のテストは終わったのですか?」
桶谷が話しかけた。
「あぁ。赤点いなかったから、採点が楽だったよ」
ライトは椅子に座った。
「ライト先生のテストは優しいから、赤点取ってる人見たことないですよ」
桶谷は懐かしそうに言った。
「そうか?まぁ、あんまり見かけんな。でもさ、作るこっちも面倒じゃん?」
「それ言われたら…ちょっとね〜」
「だって、めんどくさいし。ある程度勉強しておれば点数取れれたら楽じゃん?授業しても難しいテスト出す先生の方が私はわからん!」
ライトはヘラヘラしていた。
「あはは…」
桶谷は笑っていた。
「そういえば鈴鹿くんは?」
ライトは辺りを見た。
「今日は休みです」
「そうか」
「そういえばライト先生。今度論文を出そうと思ってるんですが」
桶谷は論文をライトに見せた。
「あぁ。前から研究してたやつね」
「ロイと頑張って作ったんです。ロイと同じ骨格の龍が少ないから、病気や怪我したときに治療がしやすいようになればいいかなと」
見ると、事細かに書かれていた。また、骨格もリアルだった。
「いいんじゃないか?私は応援するぞ」
「ありがとうございます」
ライトは立ち上がった。
「今日が早く帰るよ」
「はい。お疲れ様です」
桶谷はライトを見送った。ライトは廊下を歩き、人目がつかない所で指を鳴らし消えた。
「ただいま」
部屋に戻ると、ウルフがいた。
「おかえりなさい。今日早いですね」
「あぁ。今日は期末テストだったから早いんだ。採点も終わってるし、もう帰ってきたわ」
スーツの上着を脱ぎ、ローブを羽織った。
「城の事は大丈夫かね?」
「はい。今日も兵士が入りましたが、みんな和気藹々と活動しています」
「それはよかった。君の方は?」
ライトは椅子に座った。
「今日午前だけトレーニングをしました。まだ、鞭の扱いはアレですが…」
「まぁ、慣れもあるからな。そうそう。クロのことなんだが、しばらく来ないと思う」
ウルフは驚いた。
「え!?なんで!?」
「姉さんたち海外に行くそうだ。一年は帰ってこないと」
ライトはどこか寂しそうな顔をした。
「そんな…」
「まぁ、こればっかりは仕方がない。向こうが親なんだから。だが、一応カラス達にお願いはした。見守ってくれと」
「そう…あーあ。もっと遊んでおけばよかった」
ウルフは項垂れた。
「まぁ、また会えるさ」
ライトは立ち上がった。
「そうそう。君に新しい服を用意したいんだが…」
ウルフはドキッとした。
「え!?いいの!?」
「だって私好みの着させてるから、私が用意するのが筋じゃ?」
ライトは首を傾げた。
「言いたいことは…わかるんですが。その…ライトさん」
「ん?」
ウルフの顔が赤くなった。
「こんな事言うとアレだけど…こんな服を女に着せて興奮しないんですか?」
一瞬静寂が走った。
「あ…あぁ…あ…あ゛っ!」
ライトの顔が赤くなった。と同時に、顔を手で隠した。
「私とした事が…龍が好きすぎるあまり…人間の女性に対してのアレが…」
ウルフは呆然とした。
言わない方が良かったと…
「あーもう。恥ずかしい…」
ライトのメガネがライト自身の熱で曇った。
「あ…私…出た方がいいですか?」
ウルフは部屋を出ようとした。
「いや。大丈夫」
ライトは顔を上げたが、メガネは曇ってるし顔は赤いしで忙しい。
「とりあえず、服作るよ。なんだったら複数」
ライトはノートとペンを手にした。
「あ…ライトさん大丈夫?」
ウルフはライトに近づくと、うっすらとだが頭から湯気が出ていた。
「大丈夫だよ。たださ、描きたくても見えなくてさ…」
ライトはメガネを何度も拭きながらデザインを描いた。
「ライトさんは…メガネないとダメなんですか?」
ウルフはライトに質問した。
「うん。色々やって目を悪くした。丸メガネだと人気な人たちみんなかけてるじゃん?で、それにしてる」
ライトはあっという間に複数のデザインを描いた。それも色付き。
「ウルフ。どうだ」
ウルフはデザインを見た。
「ライトさん本当に…絵が上手いし…何故か私のドストライクなんですよね…」
「まじ!?やったー!」
ライトは喜び、そのまま服を魔法で出した。
「はい!」
ウルフにそのまま渡した。
「もう…ライトさんは。ありがとうございます」
ウルフは受け取った。
「ライトさんだったら…良かったな…」
ウルフはそう呟いた。ライトのメガネがピキッとヒビが入った。
「え…どう言う事?」
ウルフはあざと可愛く言った。
「え?生きていたときに、ライトさんと出会ってたら付き合ってたかもって」
その言葉にライトのメガネが割れた。
「え…私と?」
ライトは驚いた。
「そう。だってライトさんかっこいいし、服くれるし。それに優しいじゃん?思うけど、なんでモテないんだろう思ってたけど…」
ライトは倒れそうになった。いや。倒れた。
「ライトさん!?」
ウルフは駆け寄った。
「あぁ。緊張しすぎてな…予備のメガネ…」
ライトは机にもたれながら、引き出しからメガネを取り出しかけた。
「初めてさ。女性からそんなこと言われたらさ。もう、頭が回らないじゃないか」
ライトは椅子に座り。深く深呼吸をした。
「生まれて三十年。初めてだよ…」
ライトは呆然としていた。ウルフはライトの手を取った。
「ライトさん。じゃぁ、私といいことします?」
ライトはまた顔が赤くなった。
「えぇ…」
「服のお礼ですよ。ライトさんには今まで感謝しても感謝しきれないですし。それに、ライトさんは私のタイプなので」
ウルフはライトの顔に近づいた。
「でも、ウルフは嫌な事あっただろ?」
ライトは心配した。
「ライトさんとなら大丈夫です。でも、私は女性じゃないじゃないから…」
ウルフはどこか切ない顔をしたが、ライトはウルフの頭を優しく抱きキスした。
「君は立派な女性だよ。何を言う。私には勿体無いよ。本当に後悔しないかい?」
ライトは真剣にウルフを見つめた。ウルフは笑顔で微笑んだ。
「うん!」
ウルフはライトの手を取りながら、ベットに二人は横になった。ライトはローブを外し、ウルフにキスをした。
「嫌だったら遠慮しなくていいからね」
ライトはウルフの頭を優しく撫でた。
「うん。ライトさん緊張しすぎよ」
ウルフは笑った。二人はそのまま楽しい時間を過ごした。
数時間後。
「ウルフ。ありがとうな」
ウルフの頭を撫でた。
「ううん。ライトさん。すごく優しくて惚れそうだったわ」
「そりゃ、嫌な思いはしたくないじゃん?こういうのは、お互いが満足していい思いじゃん?」
ウルフは微笑んだ。
「ライトさんらしいわ。ありがとうね」
「いや。こちらこそありがとう」
ライトも笑顔になった。ライトは窓をみた。
「あぁ。もう夜か。ウルフ。いつもの観測に行ってくるよ」
ライトは着替えた。
「うん。気をつけてね」
ウルフは起き上がった。
「ゆっくりしていっていいからね」
ライトはそう言い指を鳴らし消えた。
「あぁ…誘って良かった」
ウルフは満足し、着替えてライトの部屋を出た。
「さて、今夜はどうかな」
ライトはいつもの観測場所に来た。しばらくすると、三日月龍の群れが見えて来た。
「おぉ。今夜もいいな…ん?」
ライトは三日月龍の行動に少し違和感を覚えた。よく見ると、一匹の三日月龍が他の三日月龍にアタックをしていた。
「あれはなんだろうか…」
ライトはノートに記録をした。三日月龍の群れはそのまま飛んでいった。
「さて、帰るかな」
指を鳴らそうとしたが、何かの気配を感じ取った。
「…」
ライトは魔法で銃を出し握った。後ろを振り向いたと同時に発砲した。弾丸はまっすぐ行かず、カーブを描いていた。
「ぎゃ!」
声がした。ライトは草木を分け声のする方の所へ歩いた。すると、一人の男が足から血を流して動けないでいた。
「君は…誰だ?私に何の用かね?」
ライトは男の頭に銃を突きつけた。
「はぁぁ!」
男は怯えた。
「怖がらなくていいよ。ただ、君のせいでいい気分が台無しだ。その責任はとって欲しいな」
ライトのメガネが月光に反射した。
「撃てばいい!何も言わ…」
ライトは弾丸を放った。男は倒れた。
「やれやれ」
ライトは男の持ち物を確認した。
「またか…谷川」
谷川の印が入った持ち物を見つけた。
「まぁ…いっか」
ライトは死体を処理した。
「さて、帰るか」
ライトは指を鳴らすと、その場から消えた。
ライト「作者。テストの所…なんで私パントマイムしたんだ?」
作者「高校の時に、テストの監督の先生がテスト終了の十分前に、先生の武勇伝を黒板に描きつつ語って妨害してたので、面白半分で…笑」
ライト「でも、パントマイムじゃないじゃん!」
作者「小さいことは気にしなーい」
ライト「でも、そんな事したらみんな怒っただろ?」
作者「はい。チャイムが鳴ったと同時に笑いと怒号でしたね笑」
ライト「でしょうね…」




