生きてる……生きてる……生きてる……
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
今朝、こんな夢を見たんですよ。
胡蝶の夢なので、耽美奇譚にでも。
目覚ましの鳴る一時間前。俺はスマホのサイレンによって叩き起された。着信音を見ると、隣人で恋人の名前が記されている。
寝ぼけた状態のまま出ると、物凄く焦った様に、混乱した様に、泣きじゃくった様に、部屋の硝子扉を開けろと叫んでくる。
携帯を耳に開けたまま、カーテンを開く。すると隣人で恋人の彼奴がベランダに立っていた。彼奴は慌てたように硝子扉の鍵を探り、必死になってこの境目を飛び越えようとしていた。
家が隣同士、互いのベランダを超えれば互いの部屋、時折こうやって彼奴は意図も簡単に壁を越えて現れる。
「なんだよ。犬でもあるまいし」
欠伸混じりに戸を開けると、そのまま飛びかかられ、尻餅を着く。思い切り押し倒された。
隣の彼奴はよく泣く。今もこうして馬乗りになって、ぼたぼたと丸こい涙を落とした続けている。そして俺の存在を確かめる様に、頬やら腕やら胴やらに触れ回るのだ。
「生きてる……。生きてる……。生きてる……」
「勝手に殺すなよ……」
其れから少し落ち着いた様に俺の胸に顔を埋めて眠り始めた。何処にも行かない様、服を握り締めたまま。
次に目が覚めたのは、俺の目覚ましが鳴ってからだった。俺はベッドで眠っていて、馬乗りになった隣人兼恋人の存在も居ない。どうやら夢を見ていた様だ。
登校時、隣を歩く隣人は少し虚ろな目をして切り出した。心做しか何時もよりぼんやりしている。寝不足気味なのかも知れない。
「今日、怖い夢を見たんだ。真っ白でふわふわな猫が殺される夢。ファラリスの雄牛……鉄の箱に猫を入れて、火炙りにする夢……。その猫が……なんだか君のようで、其れで……目覚ましが鳴るまでずっとベッドで泣いてた」
「……」
その言葉を聞いて、俺は今朝方の夢を思い出す。相手は俺を押し倒しながらなんと言ったか。酷く焦った様に、同じ言葉を繰り返した様な気がするのだが。
隣人は、ほっとした様に俺の頬に触れて、ぽろぽろと丸こい涙を零し始める。
「生きてる……。生きてる……。生きてる……。良かった。君が殺されたんじゃないかと思って、部屋に飛び込うかと思ったんだ」
そうして、俺の服を鷲掴みにする。何処にも行かないように。
「勝手に殺すなよ」
結局、これしか言えなかった。現実と夢が繋がるなんて、境目が分からないなんて、言えなかった。
こんな夢を見たんですよ。
古い館に住み着いた幽霊を退治する夢。
そのままでは除霊出来ないから、猫に宿らせて焼き殺すっていう。
目覚め? 勿論、最悪ですよ。
あとは朝方浮かんだものですね。
ベランダ越えて、確かめるっていう。
違うのは台詞が一つ抜けてたところ。
『悪い夢で泣くとかガキだね〜』
というからかいがないところ。