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フラグたった?

 「シャイ?準備はできたの?」


 「はい、お母様。行ってきます!」


 12歳になった。気が付いたら、と言うべきか。やっとというべきかはわからないが、俺もこの家を離れて学園に通うのだ。学校、ではなく学園と言うと何だか高級感を感じるのは前世が一般家庭であったからだろうか。日本では、厳密にいえば学校と学園は別のものとして定義されていたはずだが、この異世界ではそんなことは関係ない。


 さあさあ、異世界に来たは良いものの本格的に使えないクソスキルを与えられ、かといって才能があるわけでもスペックが高いわけでもないかわいそうな俺は、学園と言う可能性の塊を信じて学園に向かうのである。




 ※




 「……………おお」


 圧巻である。俺の目の前にはザ・異世界の貴族が通いそうな学校と言ってもいい、何やら複雑な意匠が施された門と城か何かかと見まがうレベルの立派な建物があった。

 感動だ。俺は今から異世界の、それも魔法なんかがあるタイプの、学校に通おうとしているのだ。いや、俺は魔法使えないんだけど。しかし、数年にわたる修行は裏切らない………はず。

 ゆえに!!俺は前世で読んだ異世界小説よろしく、モテモテのハッピーな学園生活が送れる………と思いたい!!!


 そういえば、この学園には入学時に試験のようなものもあるようなのだが、それを受けずとも学園に入ることはできる。ただ、試験で良い成績を出すと学費が免除されるようなので、学費が払えないような人達が利用するようだ。もちろん俺は受験しない。家が裕福だからね。

 試験の内容はもちろん学科によって異なる。いや、学科と言っても文官コース的なのと騎士コース的なのに分かれているだけなのだが。あ、もちろん俺が入学するのは後者だ。

 本当は試験で一人だけ凄まじい力を見せつけて俺スゲーってやりたかったのだが、どうせ普通入学になるのだから受験料の無駄だと言われてしまった。


 大きな門をくぐり、指定された部屋に向かいながら考える。議題は「俺の強さについて」だ。俺は異世界転生者だ。それも神的存在からスキルまでもらっている。これは間違いない。いや、それすら怪しいのだが、いまは間違いないとしておこう。そして、その上俺はそれなりに強いらしい父から戦闘訓練を施されている。いや、まあ後半は結構逃げたりさぼったりしていたが…………それでもここまでフラグが立っていれば、それはもうある程度はチート的に無双的な生活を送れるのがお約束ってもんだろう。故に俺はそれを信じてこの学校までやってきた。

 しかしだ、一方で懸念点もある。俺は訓練をそれなりにさぼってしまっていて、父からは学園の特別試験になど受からないとまで言われてしまっている。そして、頼みの綱のスキルも称号ほどの役割しか果たさない無能スキルだ。


 その前提の上に問おう。俺は、どの程度強いんだ?


 もちろん、前世基準で考えるならば俺は相当に強い。最強と言ったっていいかもしれない。前世の全盛期である20歳前後の俺より強いのは言わずもがな、不良グループや格闘家とだって戦えるだろう。

 しかしここは異世界。不良グループは悪魔を倒せないし、プロの格闘家はドラゴンを狩れない。前世の基準などどれほどあてになるだろう。


 と、そんな事を考え、当たり前に結論などでないうちに指定された教室についてしまった。

 さあ、結論を出さねばなるまい。


 俺は、この異世界の学園でどのようなキャラで行くのかッ!!!素の自分で行こうか?さながら主人公なキャラ付けを施そうか?


 建物の雰囲気に違わず小綺麗な扉に手をかけ、さらに考える。


 さっきまでは自分を騙しながらギリギリいい方に考えられていたが、そろそろそれも限界である。クソッ、こんなことならもっと真剣に訓練をしてベストな状態で来ればよかった。


 「あのー………」


 いや、でも自分にできることはやったほうだと思うよ?うん、そうだぜ俺は結構頑張ってたじゃん。問題なのはスキルの方だよ。何でせっかく異世界に転生できたのに現地人と同じ土俵でスタートなんだよ。いや、記憶の分有利ではあるんだろうけどさぁ。


 「えっと……」


 いやいや、むしろ変に前世の価値観がある分不利なのでは??くそっ、無難にいくか?モブになるのか?もうそれが俺にあってる気がしてきた。そうだよ、何も初めからキャラを付けに行く必要はないじゃないか。あとからどうとでもなるだろう。


 「すみません!!!」


 「うおっ!え?」


 急に大きな声が聞こえたので振り向くと、推定同い年のかわいらしい女の子が。話しかけられたことはうれしくあるのだが、俺はこの子に見覚えが無い。いったい何の用だろうか。いや、もしかすると


 「え?フラグたった?」


 「ふら……?なんですか?」


 「いや、なんでもない。それより、何か用?」


 努めて自然な風に返事をすると、その子は何やら言いにくそうにこちらを見て口を開く。


 「えっと、私そこに入りたいんですけど………」


 「………っあ、すみません」


 そういえば、俺は扉の前にいたんだった。うん、すごく邪魔だな。ごめんなさい。………恥ずかしい。

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