ポーション作成
ポーションの材料を買いに行こうとしたところ、いきなりカンロがついてくると言いだした。特に断る理由もないのでこれを許可し、一緒に雑貨屋までの道を歩いているわけなのだが。
「………おいカンロ、これ私がいる意味ないよな??帰っていいか?」
「おいおい、つれないな。私たちは親友だろう?」
ステが何やら文句を言っている。まあ無視しておけばいいだろう。
「おいタオル。お前からも何とか言ってくれ」
「……………おいおい、俺たちは親友だろ?」
「お前と親友になった覚えはねぇよ」
どうやら親友ではないらしい。というか、タオルってなんだよタオルって。その略し方はダメだろ。次にそう呼ばれても返事はしないでおこう。
まあ、実際のところステの言っていることは至極当然のことで、今回俺と行動を共にするのはカンロが勝手に言いだしたことであり、ステは関係ない。なんならば今すぐに帰っても文句を言われる筋合いなどないと思うのだが、それでもついてくるあたり彼女たちの仲の良さがうかがえるというか、ステの付き合いのよさがうかがえるというか。
まあ、そんなことより俺としてはカンロがついてきた理由をそろそろ聞きたいものである。
※
「よし、作るか」
雑貨屋でポーションの材料を買い、ポーション作成のために安宿の一室に戻ってきてもまだカンロとステの二人はついて来ていた。
「ふむ、ここがタオルの借りてる部屋か…………お前にぴったりのぼろ屋だな!」
「しばくぞ」
満面の笑みでそんなことを言ってくるステは一度女将さんに謝るべきだと思う。亡くなった旦那さんとの思い出が詰まってるらしいぞ。詳しくは知らんが。
「こんな場所でポーションなんて作れるのか?設備とかいるだろ」
「あー。まあ、上等なのを作るならそれなりの設備はいるけど、今回はそんないいものを作るつもりはないぞ。ほんとに簡単なやつだから」
そう、ポーションなんていかにもな薬品を作るためには専用の器具なんかを使う場合が多く。俺も学園の魔法錬金サークルでは高そうな容器やらなんやらを使っていた。しかし、別に専用の器具を使わずともポーション自体は作れる。まあ、この場合は少なくない効力が吹き飛ぶことになるのだが、今はとりあえず応急手当くらいのお守り用ポーションが欲しいだけなので問題はない。下級のポーションが作れる薬草を適当なお椀ですり潰し、魔力をいい感じに込めながらお湯に養分を溶かして雑貨屋で買ったガラス瓶に詰めて完成である。プラナ先輩に見せようものなら助走をつけて殴られそうな代物であるが、無いよりは圧倒的にマシだ。さらに追加でもう2本ほど同じように作り、作業は終了だ。
「よし、こんなもんかな」
「……ほんとに効果あるの?これ」
30分ほどで完成した3本のポーションをツンツンつつきながら、カンロがそんな声を漏らす。
「まあ、程度はおいておいて効果自体はあるぞ。多分」
「これがねぇ……?」
「なんだ、そんなに疑うなら試してやろうか?」
「ほう、いい考えだね。じゃあちょっと自傷行為でもしてくれたまえよ。私がこの液体をかけてやるから」
凄いことを口走り始めたカンロ。なんでわざわざ俺が自傷行為しなくちゃならんのだ。
「頑なに認めないが、それはただの液体じゃなくポーションだからな?あとそれ、かけるだけじゃ効果ないやつだから。飲まないとダメだから。てかナイフを持って近づいてくるのをやめろぉ!それはもはや自傷じゃないだろうがッ!!」
ナイフを持って近づいてくる危ない女から距離を取る。
「………はぁ。わかったよちょっと見てろ?」
正直、材料費がもったいないことこの上ないがここは特別サービスということで自分の体で実践してやることに決めた俺は、自分のショートソードを手に取り手を軽く傷つける。痛い。
「さ、ちゃんと見ろ。傷がついてるだろ?今切ったんだから当然だけどな!カンロは感謝しろよ?」
「わかったからこの液体を飲みたまえ」
カンロが、机の上に置いてあった三本の瓶のうち一本を軽く投げて渡してくる。
「あぶねぇな…………わかった。見てろよ?」
受け取ったポーションをグイっと一気に呷る。通常の下級のポーションよりもさらに薄い味が口内に広がり、傷つけた腕を見ると、みるみる傷がふさがっていく。
「ほら見ろ、どうだ?効果あるだろ」
「……………ほんとだ」
「うぉ、タオルすげぇ!」
それまで興味なさそうにボーっとしていたステまで食いついてきた。これは少し気分がいい。
「それなら、少し話が変わってきたよ」
「うん?」
それまでの胡乱気な顔をこちらに向けていたカンロが少し真剣な顔を向けてくる。
「なんでもいいから回復魔法を教えてほしいんだったよな?いいぞ。そのかわり、私に魔法錬金を教えてくれ」
……………ほう。
「全然問題ないが、俺は別に魔法錬金にすごく詳しいってわけじゃないし、カンロの思ってたのと違っても文句言うなよ?」
「言わないさ」
目を輝かせながら、若干食い気味に断言するカンロ。なんだ、そんなにポーション作りたかったのかこいつ。うぅむ、ここまで期待されてしまうとちょっと怖くなってきたが、まあ俺の知っていることを教えるくらいならいいだろう。むしろそれで回復魔法が使えるようになるのだからプラスだ。うん、そう考えることにしよう。
「ではまた後日、都合のいい日に教えてくれ」
「了解」
そんな会話を交わした後、ステを連れ部屋を出ていくカンロ。連れまわされるだけ連れまわされたステは軽く文句を言っていたが、カンロはどこ吹く風だ。
さて、何はともあれこれで回復魔法を覚えることのできる機会を得られた。素晴らしいね。




