トロル狩り
「さて、トロルはどこかな?」
このリーズの町はシナイ王国の中でも魔国?に近いらしく、町の北西にはモンスターがたくさんいる深い森が広がっている。いつもはこの森の比較的浅い場所でゴブリンやオークを狩っていたのだが、今日はもう少し深く森に入ってトロルというモンスターを狩るのだ。この森は深く入れば入るほど強いモンスターが縄張りにしているらしいので、あまり深く入りすぎないように注意は必要だ。
「さて、この辺りから注意していかないとな」
いつもゴブリンだのを狩っているエリアからかなり奥に入った場所。この辺りからトロルが出現してくるだろう。この一か月ほどで手になじんできたボロナイフを持ちなおし、周囲をそれまで以上に警戒しながら進む。
このボロナイフは初任務をクリアするときに使ったナイフで、あの後もう使わないからとステにもらったナイフである。
「見つけた………」
探すこと数十分。想定したより早めに目的であるトロルは発見できた。ある程度出現地域の候補は出ていたとはいえ、なかなかいい調子だ。
見える範囲でトロルは三体。四メートルほどの巨体でのそのそ歩きまわっていた。さて、どうしよう。正直俺の戦闘方法なんて、とりあえず突撃くらいしかないのだが、相手は始めて戦うモンスターだしせっかく先に見つけたのだからこの有利を生かして戦いたいものだ。
こっそり近づいて不意打ちを……………三体から隠れながら近づけるか?俺が?そもそもトロルの索敵能力がどんなものかなんて知らないのに?よし、じゃあ一体が別行動をするのを待って……………うぅむ。
「…………よし」
小さく呟き、気合を入れた俺は覚悟を決めてトロルの群れに突っ込んでいった。思考の放棄だね、うん。
「ゴガァッ!?」
突撃をする俺に気付き、驚きの声をあげるトロルたち。そのうちの一体に飛び掛かる。
「三分裂き!」
このボロナイフの切れ味やリーチは既に分かり切っている。かなり近づいて、なるべく同じ位置に三度斬撃を浴びせることでやっと血を吹き出しながら倒れる。
「ふむ……」
想定以上だな。トロルは体が大きく、その上ゴブリンなどよりもはるかに皮膚が硬いことは聞いていたが、三度切ったにしては想像以上に傷が浅い。俺の想定では、切断まではいかないまでも、こう…………もっとがっつり肉をえぐり裂くくらいの気概で攻撃したのだが、実際にできた傷は致命傷にもならないものだ。証拠に倒れたトロルはまだ息があり、今にも立ち上がって反撃してこようとしている。
「おっと」
三体のトロルのうち、俺が攻撃を仕掛けていない二体が俺に襲い掛かるのをバックステップでかわしながらナイフを構えなおす。
速度は俺の方が上だし、一対一ならまず負けないだろう。まあ、今回は三体いるのだが。
距離を取り、様子を見る。無傷のトロル二体もこちらの様子をうかがっているようで、一瞬の静寂があたりを包む。
「はっ!」
一瞬の膠着状態を破ったのは俺だった。強く踏み込み、素早くトロルの一体の間合いに入る。当然トロルもこぶしを振り回すが、そんな遅いこぶしには当たらない。素早く肉薄すると、軽く跳びあがりトロルの首にナイフを突き立てる。すぐにトロルの首に突き刺さったナイフを引き抜きながら、そいつの体を蹴って後ろに下がると、そこに仲間が刺されたことに怒りの声を上げながら、まだ唯一無傷なトロルが突撃してくる。
「ゴガァッ!」
突撃してくるトロルの動きをよく観察し、タイミングを合わせてそいつの眼球に突きを放つ。
「ガアァッ!!!」
「うおっ!」
確かにナイフは刺さったのだが、トロルはそれで突撃の勢いを弱めることはなく、そのまま突き進みナイフごと俺を近くの木に叩きつけた。
「ぐぅっ!」
トロルと木でサンドイッチにされた衝撃に視界が明滅するが、ナイフを強く握り意志の力で切り裂く。
「ッ!」
気配を感じ、体を無理やり動かして飛びのくと、俺がいた場所にこぶしが振り下ろされる。最初に切りかかったトロルが復帰したらしい。いや、切り傷からはまだ血が流れ出ているし満身創痍ではあるのだろう。かくいう俺も思わぬ反撃を食らってボロボロである。
「ガァアア!」
咆哮を上げるトロルに突撃し、俺に向かって振り下ろされたこぶしをなんとか回避する。
「これで、勝ちだッ!」
少し飛び上がり、ボロナイフの微妙な切れ味で無理矢理トロルの首を切り裂くと、トロルは倒れ動かなくなった。
「はぁっ、はぁっ…………」
やっとの思いで討伐できた三体のトロルの死体を眺めながら息を整える。思ったより手こずってしまった。反省点は多いな。とりあえず武器は買い替えよう。うん。
「疲れた…………」




