楽しいお仕事美少女()つき
ステはイライラしていた。原因は分かってる。この、冒険者になりたいとか言う浮浪者のせいだ。カンロがこのまま戦い続けるよりも、一旦言う通りにしてみようということでギルドへ案内することとなったのだが、まったくもって不愉快なことだ。
今日はこいつをギルドに連れていったらさっさと宿に戻って昼寝でもしよう。
そう考えていた。そう考えていたのだが───
「………は?今なんて?」
「だから、そんなに言うならお前も一緒に行って来いってんだ」
「おい待て、そうはならないだろ」
顔見知りのギルドの受付にさっきの浮浪者を紹介したところ、こいつの実力が有用かどうか測りかねるので簡単な任務を受けろという話になった。そこまでならわかるが、なぜか私もついていくように言われた。まったくもって意味がわからない。
「ついに頭がいかれたか?そんなのこいつ一人で行かせればいいだろうが!」
そう不満をぶつける私に対し、目の前の受付の男は説明を始める。
「それがそうもいかねぇんだ。どうも最近ギルドの冒険者を雑に使いすぎたようで問題になっててな。向こうのギルドに弱みを見せねぇようにするためにも、ほいほい死人を増やせねぇんだ。増やすにしても理由がいるのさ」
向こうのギルド、というのはこの町にあるもう一つの冒険者ギルドのことだろう。うちとは仲が悪いからな。そういうこともあるか。
「いや、だとしても納得できねぇよ!他のやつに行かせりゃいいだろうがッ!!」
「お前の推薦なんだからお前が見てこい。さっきは実力をべた褒めだったじゃねぇか。お前の言葉通りなら、そう難しいおつかいじゃないだろうぜ」
なおも食いつくが、にべもなく返される。しまった。浮浪者をさっさと冒険者にするために少々派手にこいつの実力を褒めたのが裏目に出たらしい。クソだな。
「クソがッ!!」
※
「ッチ、クソッ!クソだッ!クソがッ!!!」
リーズの町、という名前らしい町からほど近い森の中には女性の怒号が響き渡っていた。
あの後、力ずくで交渉してみたのが良かったのか、このステという少女は冒険者ギルドという施設と冒険者のなり方を教えてくれただけでなく、その手伝いまでしてくれた。これは正直予想外である。この子は意外と世話焼きというか、優しいのかもしれない。
まあ、それに従い冒険者になったのだがそこで少し問題があったようで、俺の初任務に彼女が同行することになったらしい。
「なあ、腹が減って死にそうなんだが」
「知らねぇよ勝手に死ね」
洒落にならないレベルの空腹に苛まれていることを伝えてみるが、にべもなく返される。
どうやら今回の任務であるゴブリンの討伐を終えるまで帰れないらしい。
「止まれ。痕跡を見つけた。近いぞ」
急に立ち止まり、そんなことを言う少女。これには少し感心した。ガラの悪いだけの少女だと思っていたが、冒険者らしく痕跡なんてものも見てるらしい。
まあ、近いのならば丁度いい。さっさと倒してお金を貰おう。ちょっと本格的に足ががくがく震えだして歩くのもつらくなってきた。
少女に言われ、警戒しながら進んでいると前方にゴブリンと思しき人型モンスターが2匹。正直、今の満身創痍な状態でモンスターなど倒せるのかどうか微妙なところだが、やるしかあるまい。
「じゃあ、私はここで見てるからさっさと倒してこい」
「え………一緒には行かないのか?」
「行くわけねぇだろ。何で金も貰えないのに働かなきゃいけねぇんだよ」
ちょうどよく2匹いるから一匹ずつ相手をするのかと思ったが、そうでもないらしい。まあいい。とにかく早く倒そう。こっちも限界が近い。
覚悟を決め、茂みから勢いよく飛び出す。狙うはゴブリンの首。そこにあの少女から貸してもらったボロナイフを突き立てる。彼女の腰にはこれよりもはるかに上等そうなナイフがぶら下がっているが、あれは使わせてもらえないらしい。まあ、当然と言えば当然か。
そのまま首を引き裂こうと思ったが、ナイフの切れ味が悪いのか俺の技術が無いのか上手くいかない。………ナイフのせいということにしておこう。
うまくいかなかったのは仕方ないので、力いっぱいナイフを引っ張ってナイフを引き抜き、引き抜いた勢いのまま俺の後ろまで迫っていたもう一匹のゴブリンにナイフを叩きつける。
「グギャッ」
そんな叫び声をあげ崩れ落ちるゴブリンを、返り血を手で拭いながら見下ろす。
「ふうっ、ふっ……疲れる……………」
ゴブリンの数に指定はなかったためこれで任務は完了だろうか。それにしても、この程度の運動で息切れするなんて俺も限界だな。いや、今はそんな限界の状況で任務を達成できたことを喜ぶべきかな。




