少年少女の出会いに怒声を乗せて
フェニキア王国からはるか北西、シナイ王国南東にあるとある町、リーズ。
魔物が比較的多く、その魔物を狩る冒険者という職業がひときわ大事にされるこの町は、常に賑やかである。その性質から単純な戦闘力やそれにまつわる能力が重視されるその街では、よく言えば活気があり、悪く言えば乱雑で混沌としている。
そんなリーズの町のメインストリートから少し外れた脇道で二人の少女が怒声交じりの雑談に興じていた。
「クッソ!あのハゲ!!ついに数も数えられなくなったかッ!!!」
「あのハゲ、どうやら部下の二つ星冒険者に可愛がってた女が食われたらしい」
「はあ!?じゃあなにか?私たちの今日の報酬が銅貨五枚分少なかったのはあいつのジェラシーが原因ってか!?」
「ふふふ、ステ。随分かわいい言い方をするね。これはジェラシーじゃなく癇癪というんだよ」
「ああ、クソ、イライラするな。おいカンロ、一つ星冒険者様の財力で串焼きでも奢ってくれよ」
「唐突だな。答えはノーだよ、なんで私がステに奢らなきゃいけないんだ。大体、私だって報酬を減らされたんだ。そんな余裕はないし、むしろステが私にベーグルを奢りたまえ。ガレットでもいいぞ」
そんな軽口を長年の相棒とかわしながら宿に向かう。まったく今日は嫌な日だった。こんな日はふて寝でもするのがいいだろう。そんなことを考え、人通りの少ない町はずれにある、いつもの安宿近辺に辿り着いたとき、妙な男を見た。
まず、ほとんど全裸だ。服というか、身を覆う布と言えば腰に巻いたボロボロで汚い布一枚程度だろう。そんな男が木の棒を持ち、立っている。まあ、このあたりは治安もさほど良くないからいつもの浮浪者だろうと、男の横を通り過ぎようとしたところで、なんとその男が話しかけてきたのだ。
「あの………食べ物か働く場所を恵んでもらえないだろうか」
随分とまあ、厚かましいというか、図々しい奴だと思う。ちらりとカンロを見ると顔を顰めていたので、考えは同じようだ。
「断る、別のやつを頼りな」
だからそんな風ににべもなく断ったのだが、その男は私たちの進路上に立ちはだかると。
「いや、悪いが力ずくでもお前たちに頼らせてもらう。俺には余裕が無いんだ」
そう宣言し、木の棒を構えた。
「っは、そうかよ」
自暴自棄になった浮浪者といったところだろうか、面倒なことだ。そう思い腰のダガーを抜き放つ。
「ステ、面倒は勘弁」
「カンロ、お前こいつを見たことあるか?私はない。ようは問題にならなきゃいいんだろう?」
カンロからの苦言をそういって躱し、ダガーを構える。
「一応言っておくが、私はこれでも冒険者だ。今なら謝れば許してやるぜ?」
そう忠告してやるのだが、浮浪者が構えた木の棒を下ろす気配はない。
「まあ、いいか」
相手は木の棒に対し、こちらは安物とはいえ金属のダガーだ。仮にこいつが多少強くても負けはしないだろう。多少怪我をさせる覚悟を決めつつ、殺してしまったら処理が面倒だな、なんてことを考えていると、浮浪者が一歩踏み込み、急速に距離を詰めてきた。
「ッ!?」
咄嗟に防御姿勢をとるが
「二分裂き」
突如二つに増えた………ようにしか見えない攻撃によってダガーが弾き飛ばされる。その拍子に姿勢を崩す私の前には、木の棒を構えなおした浮浪者が今まさに再び木の棒を振ろうとしていて。
「アイスエッジ」
私の後ろから飛来した氷の刃を大きく後ろに跳んで回避した。
「こいつ、やるね。二人で潰そう」
そういいながらカンロが杖を構える。先ほどの氷の刃はカンロの得意技である中級氷魔法だろう。それにしても
「働きたいだぁ?その実力なら冒険者でもやりやがれ」
思わずそう愚痴をこぼし、地面に落ちたダガーを拾う。
「………冒険者?」
どうやら、私の愚痴に反応したらしい浮浪者がそんな言葉を口にする。
「冒険者………なるほど、いいかもな」
「はぁ?」
何やら一人納得した様子の浮浪者はそのまま言葉を続ける。
「もしかして、冒険者ってのは簡単になれたりするか?なり方など簡単に教えてほしいのだが」
「……………はぁ?」




