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16/28

16 幕間1

校正、誤字脱字の修正……大歓迎です! ありがとうございます!

なろうの使い方分かっていません! こうしたら良いも教えてください!



 〈ロア・ルンド〉の中心から北西に向かった辺りには、太古の昔に遺棄されたのであろう教会群がある。


 信仰は廃れ、当時の隆盛の面影すら感じることも出来ない。


 失われた神の威光か、ここでは魔物も現れない。


 もっとも巨大な、ゴシック建築にも似た廃墟に、月明かりを受ける人影が3つあった。


「あーつかれちったよー」


 ラヴは桃色の髪を人差し指でくるくる巻きながら、誰にともなく呟いた。


「やほやほ」


 〈鎌喰み〉から奪った武器を地面に突き刺し、手を振る〈歪曲した親愛の〉ラヴ。


「レッド・ラヴ、収穫はあったのだろうな」


 声の主の男……奇妙な髪型だ。


 黒髪と金髪が左右で分かれており、黒髪を耳にかけ、長い金髪は目の横に流している。


 長い髪……顔立ちは整っている。


 彼はネイビーのロングコートの襟元を直しながら、ラヴに声をかけた。


「あ、ノヴァー」


 長身の男、ノヴァは目を細くしてラヴを見つめた。


 コートの内側、紫がかった色遣いの鎧が月の光に照らされ、輝く。


「鎌喰みは殺っちゃったー楽しかったよー」


 左右のピンク色の三つ編みを揺らして、ラヴは笑う。


「でもねー邪魔されたー」


「貴様がか。珍しい」


 少女の言葉を聞いて、不敵に笑うノヴァ。


「うん。でも、若かったよ。あー、青頭の子はそうでもないけど。どのみち、イリーガルの探してたやつじゃないね」


 イリーガルと呼ばれたのは、筋骨たくましい体付きをした銀色の髪の男だ。


 彼もまたフォーマルなスリーピーススーツに身を包んでおり、ノヴァ同様、一見戦うのには適さないようにも見える。


「探してなどいない。どうせ、いつかヤツとは会う……。ヤツが吾を探しておるのだ」


 目は赤に輝き、鋭い。


 イリーガルの言葉に対し、ラヴは口角を上げた。


「同じ格闘ゲーマーのー? オワコンじゃん」


 その言葉を聞くや否や、イリーガルは瞬時にラヴの近くへと動く。


 喉元を掴まれたレッド・ラヴは、簡単にそのまま持ち上げられた。


「貴様、死にたいらしいな」


「あはは、殺し合いならいつでもウェルカムカムムムムーだよ」


 お互いの見えぬ〈オーラ〉のようなものが熾烈に絡みつく。


「やめておけ。行くぞ……次は中央だ。1つ鐘は鳴らしたわけだからな」


 痩身で背の高い男……ノヴァは2人を後ろにしてそう声をかけた。


 ひょいっとイリーガルの手から離れ、ラヴは器用に着地する。


「東エリアは邪魔してきた知らない子たちに先を越されちゃったしね」


「攻略自体はレベルと能力さえあれば難しくはない。問題は先に進むためのギミックだ。東と中央は明かされていないわけだからな」


 この世界はステージごとのギミックを解くことが難しい。


 またそのギミックも都度変わり、正解が見つからずさまよいロストすることも多い。


 東を準備運動のように侵攻したラヴによって〈鎌喰み〉を倒したが、その後新しい〈主〉が現れている可能性もある。


「まずは〈踏破組〉とやらを拷問し、中央のギミックを吐かせれば良い。次にレッド・ラヴを退けたガキどもを狙う」


 月明かりを受けながら、男は口角を上げる。


「我々、ヴァンキッシュが総取りする。我々の目の前には何もなくて良いのだ」


 情報……それが全てだ。


 ノヴァはこのゲームの攻略法をすでに見つけた。


 そう考えながら足を進める。


「なんか悪役っぽいじゃんー。ラヴちゃん、悪役じゃないよー。こんな暗いところで笑ってたらヒール扱いされるってー!」


 鎌を掴み、ラヴは跳ねた。


「そうだな……我々は正当だ。我々は我々の敵を討ちに行く。それが何であれ、な」


 3つの影が動く。


 やがて月は隠され、完全な闇がそこに訪れた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 白い景色。


 男は魔力で作られた転送門から出ると、後ろを振り返った。


 この山には祖竜が封印されている、という。男は考えながら、深い雪に足を埋めた。


 彼は銀色の鎧、白色の外套を纏っている。髪色も衣服と同様の雪のような色だ。


「白銀様……」


 男の名……白銀を呼ぶ女性。透き通る空のような美しく青い髪。


 雪山にいるというのにかなりの薄着……もう彼女は寒さなど感じないのだ。


「体に障るぞ、エスタトゥア」


 エスタトゥアはよろよろと魔杖を使いながら、白銀を出迎えた。


 身の丈ほどもある杖も、以前は魔法を使うために用いられていたものだが、今や歩行補助の道具でしかない。


 青色のドレスの上にフードのあるケープを羽織っているエスタトゥア。


 よろよろと歩く度に、踏みしめられた足元の雪は黒い〈澱み〉に染まり、放射状に広がった後、空へと黒い軌跡を残して登っていく。


 彼女が歩いた跡は〈澱み〉によって汚染され、所々黒色に染まっていた。


「こんなところまで……エスタトゥア、出迎えなんてしてくれなくていい。いしずえは其れとなくありて、ただ日々の訪れを待つ……だろう」


「マリートヴァの予言では、間も無く私は苦しみから解放されるのです。だから、多少の無理は大丈夫です」


「……」


 白銀はエスタトゥアの身体を支えながら、足を進めた。


 神殿の廃墟群……その最奥にある一際大きい廃墟へと向かう。


 廃墟の中には明らかに異質な和服の少女。


 紫色を基調とした美しい意匠の和服である。


 ショートカットの黒髪、細身の身体……少女という言葉がふさわしいが、しかしその瞳の奥にある闇は深い。


 少女は凛とした佇まいで、ゆっくりと口を開いた。


「申し訳ございません。白銀様。エスタトゥア様がどうしても、というので……わたくしも止めたのですが」


「そうだろうな。いや、良い……リゼさん、鐘の音は聞こえたか?」


 少女……リゼは小さく笑みのようなものを浮かべて、白銀を見た。


「ええ。聞こえました。あれが……〈再生の鐘楼〉ですか」


「そうだ。すまない。僕が行った時にはもう……」


「いえ、遅かれ早かれ彼らとは見えるでしょう。その時に屠れば良いことですから」


 リゼの言葉は冷たく、感情を読み取ることが出来ない。


「白銀……」


 廃墟の奥から眠そうな目を擦り、現れたのは修道女のような服装の少女。


「マリートヴァ……どうした」


「見えたよ。啓示」


 マリートヴァの服装は現実の修道女の衣服と似ているが、その実細かなデザインに禍々しさが感じられた。


 彼女の目が紫色に輝く。


「うん……見える。プレイヤーたちが中央を目指してくるのが。門を開いたものたちが、中央を攻め上ってくる」


 憑かれたような様子で話すマリートヴァ。


「踏破組か?」


「うん。多分ね」


 言葉を聞いて白銀は銀の鎧をガチャ、と鳴らした。


「またとない機会だな」


 そして不敵に笑う。


「どうなさいますか?」


 リゼの言葉。


 白銀は剣の柄に手をかけ、鋭い目つきで答えた。


「根切りにする」


 一網打尽……ここでプレイヤーの動きを挫けば、しばらくは落ち着くだろう。


 白銀は逸る気持ちを鎮めて、深く息を吐いた。


「……久しぶりに、強者との戦いですね。たぎります」


 リゼから漏れた白い吐息が、廃墟の壁にぶつかり霧散する。


 ゴホッゴホッというエスタトゥアの咳の音。


 白銀はギリ、と歯を鳴らした。


 全ては彼女のために……。

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