13.初めての任務にトラブルはつきもの!?【後編】ーー護り屋は美少女少年と寝ぼすけ大男ーー
「……」
ジョセフと別れたあと、イブはコンテナの陰に隠れながら倉庫の奥に隠したというブツを取りに行く男たちのあとを尾けていた。
「おい! どこに置いたんだ!」
「あっちだ。あのボードで仕切られたスペースに置いてある」
乱暴な口調で尋ねる男に静かに答える男。
イブは冷静にそんな男たちを観察する。
『ターゲットをよく観察しろ。相手を知れば、自ずと殺し方も見えてくる』
イブはジョセフの教えを忠実に守る。
最強の殺し屋『銀狼』の教えだ。
それにはどれほどの金を積み上げただけの価値があるというのか。
イブは『銀狼』の教えを余すことなく吸収する。いつかはその技術を使って、『銀狼』を始末するために。
男が指を差した方向にはいくつかのホワイトボードやパーテーションで囲われた簡易的な部屋があった。
どうやらそこにトランクケースに入ったブツがあるようだ。
中身は銃かクスリか。
ジョセフはその辺りだろうと言っていた。
「……」
イブはそんなものを取引前から事前にこんな倉庫に無用心に隠しておくだろうかとも思ったが、ジョセフが特段気にしていなかったので、まあいいかと男たちを引き続き尾行した。
「……」
武器はすでに持っていた。
ジョセフから渡されたナイフ。
刃渡り13cmのミズカタナ改。刀剣の製作に秀でた国の作品だそうだ。
水辺で使いやすいように作られたもので本来は剣先が平らになっていて厚みがあるが、ジョセフの要望で刺突もできるように平らの剣先は薄く鋭くなっていた。
水辺で使うということで血糊を受けても切れ味が落ちにくく、また、鍔がないのも特徴だ。剣先が平らなスローイングナイフといったところだろうか。
軽さと速さが武器のイブに向いているということで用意されたそうだ。
イブは最初はジョセフとお揃いじゃないとむくれていたが、ジョセフが自分のためにわざわざ特注で用意したということを聞いて機嫌を直していた。
「……」
イブはそのナイフを愛おしそうに軽く一撫ですると、同じものをもう一本取り出し、逆手に持って両手に構え、男たちに視線を戻した。
幼い頃から武器を持つことに慣れさせられたイブにとって、殺気を出さずに武器を構えることは難しいことではなかった。
トランクケースが置いてあるという簡易的な部屋に向かう男たちに気付かれないように近付く。
「……」
イブはあのレベルの男たちなら今すぐに飛び出していっても問題なく処理できるだろうと思ったが、今回は相手に声を出させずに仕留めた方がいいということで慎重に行くべきだと判断して機を待った。
そして、その機は存外すぐにやってきた。
「……!」
突然、倉庫内が真っ暗になったのだ。
停電?
なぜ?
誰が?
スイッチは入口。
ジョセフは?
ターゲットは?
「……ふっ!」
さまざまな考えがイブの頭のなかを駆け巡ったが、イブはそれらの考えが浮かぶ前に体を動かしていた。
本能的に今が機だと理解したのだ。
そしてそれは正しかった。
倉庫内の電灯のスイッチは入口にある。
ジョセフがいる方の誰かが明かりを消したのだ。
つまり、自分のターゲットにとっては完全なイレギュラーなはず。
『自分にとってのイレギュラーが相手にとってもイレギュラーならば、それはチャンスだ。自分にとってのそれが相手よりもイレギュラーでなければいい』
イブはジョセフの教えを思い出して体を動かしたのだ。
そしてそれは、ジョセフ側で起こったことならば自分に何の影響もないようにジョセフが対処するであろうという信頼の現れでもあることに、イブ本人は気付いていなかった。
「なっ! なん……かっ!」
「……っ!?」
突然の暗闇に戸惑う男たちの首に順に刃が這う。
イブは翔び、舞った。
声を上げそうな男から順に。
突然の闇への順応の仕方はジョセフに教わっていた。
突発的な闇に戸惑う男たちとは違い、イブには男たちを殺せる箇所がはっきりと把握できた。
「くっ……かっ!」
慌てて武器を取り出そうとした男の喉にナイフを走らせる。
途端に男は血が流れる喉を抑えながら倒れる。
本来ならば首の側面にある動脈を狙う。体が小さく力も弱いイブが大の男を一撃で始末するにはそれが最も効率的だからだ。
だが、今回は極力音を立てないことが条件として存在する。
動脈からの血の吹き出しは意外と音が大きく、かつ男たちに声を発せられる可能性があった。
そのため、イブは発声に必要な喉を切ることにしたのだ。
「……う、ぐ……」
死に至らない者が多い。
それでも男たちは声を出せず、動けなくなる。
イブは立っている者がいなくなるまで舞った。
そして、すぐにイブ以外にその場に立つ者はいなくなった。
「か……はっ……。ぐ! ……っ」
男たちが全員地面に落ちると、イブは一人ひとり確実に止めを差していった。
「……ふぅ」
最後の一人の首からナイフを抜くと、イブは額の汗を拭う。
「……」
ジョセフならばこの程度の仕事、きっと汗ひとつかかずに、自分の半分の時間で終わらせるだろう。
イブは自分と『銀狼』との差を痛感していた。
「……まだまだ遠い」
そうポツリと呟いてから顔を上げる。
そういえば、そのジョセフはどうしているだろう。突然の暗闇はおそらく潜んでいた一人の仕業。まだ戦闘中だろうか。
イブが他に意識を向けた次の瞬間、無線のノイズ音がすぐ近くで鳴る。
「!」
ガガ……という微かなノイズ音。
それは無線の音。
聴こえたのはイブのすぐ近く。
ブツを隠してあるという小部屋の中。
『おい! ガイ! 聞こえてるのか!?』
聞こえてきたのは少女のような若い声。
機械越しのそれは、無線の向こう側からの声だろう。
だが、イブが注意すべきはそこではない。
その無線を受ける存在がそこにいるという事実だ。
「……」
警戒はしていた。
ターゲットを始末する瞬間が殺し屋にとって一番のウィークポイント。
ジョセフもそう言っていたし、イブ自身もそれは理解していた。
獲物を狩る瞬間に他に意識を向けることは難しい。
虫を捕まえる瞬間の魚を鳥が狙うように、殺し屋を殺すには殺しの瞬間を狙うのが最も適しているのだ。
そのため、イブは実行前に周囲を極端に警戒する。
今回も、実行自体は突然の停電というイレギュラーによるものだったが、それまでの間にしっかり周囲の状況は確認していた。
ジョセフほどではなくとも多少は気配を感じることができるし、音や匂いの感知に関しては自信があった。
ーーあそこには誰もいない。
イブは実行前に確実にそう判断していた。
『おい! 寝てんのか! 起きろ! ガイ!』
「……ん? ……起きてる。起きてるぞ」
「……」
男の声。
無線の先の少女よりは年上のようだが、それでも若い男の声。
やはりいた。
寝ていた? としても、それに自分が気付けないとは……。
イブは最大級の警戒でもって男の動向を窺う。
『嘘つけ! おまえ絶対寝てただろ!』
「……うるさい。それより状況は?」
キンキンと喚く少女を煩わしそうにしながら男が尋ねる。
『ったく。把握してない時点で寝てんじゃんかよ。
殺し屋と遭遇。こっちの組員は全員やられた。そっちはどうだ?』
「んー……」
小部屋で人が起き上がる気配。
イブは緊張の面持ちでナイフを構える。
「……あー、こっちにもいる。こっちも全滅」
『……絶対寝てただろ』
男の声と少女の声が近付いてくる。
「……」
イブは近くに来た男を見上げる。
男は背が高かった。
自分の二倍近くあるようにも思える。
しっかりとした体格。
掴まれたら逃げられない。
男がイブを冷たく見下ろす。
「……」
イブは頭の中で男と仮想戦闘をした。
結果、自分が即座に殺されると判断した。
「……っ」
逃げるべき。
イブはすぐにそう判断したが、男には隙もなかった。
「……おい」
「!」
男がイブに近付く。
イブは咄嗟にナイフを構えて下がろうとした。
「……止まれ」
「!」
「……」
だが、声が聞こえて何かに下がるのを妨害された。
声はイブの後ろから。
そこにいたのは見慣れた『銀狼』だった。
ジョセフはイブの肩に手をのせ、もう片方の手に握ったナイフを男に向けた。
ナイフを向けられた男はしばらくジョセフを見つめたあと、ゆっくりと後ろに下がった。
「……」
ジョセフが来たことで、イブは自分の全身に力が入っていたことに気が付く。
それと同時に、自分が酷く安心したことにも気付いたのだった。
「あー! もう! あんた速すぎ!」
「!」
そして、少し遅れて可愛らしい格好をした少女がパタパタと走ってきたのだった。
いた!
イブの姿よりも先に、俺は長身の男を見つけた。そして、すぐにその手前にイブがいることが分かった。
「……ちっ」
男を見て俺は加速する。
アレはマズい。
二メートル近い長身。
一見、細身にも見えるが、筋肉質のがっしりとした肉体。
完全なプロだ。
暗器使いの少女も相当な手練れだが、あの男も相当ヤバい。
おそらく、かなり速く、そして強い。
シンプルにフィジカルが強いタイプはどれだけのポテンシャルを秘めているか判断しづらい。
男がイブに近付こうとする。
イブはナイフを構えて下がろうとしているが、男がその気になれば今のイブでは瞬殺だろう。
「……くそっ!」
俺は地面を一気に蹴ってイブのもとへ。
「……止まれ」
イブの後ろに立って、男にナイフとともに殺気を向けると男は素直に止まった。
男はしばらく俺の方を見ると、ゆっくりと後ろに下がった。
俺との格の違いを見抜いたのか。
ヤり合うと厄介な相手。
その判断ができるレベルの手練れだということ。
「……」
イブはずいぶん緊張していたようだ。
殺されるかもしれないと思っていたのだ。当然だろう。
肩に手を置いてやって、ようやくイブの体から力が抜ける。
「あー! もう! あんた速すぎ!」
「!」
少しして、先ほどの少女が追い付いてきた。
俺たちを素通りすると男の横に並ぶ。
「……」
改めて二人を観察する。
一人は少女。
黒髪黒目。長い髪を左右で二つ結び。
黒目がちな大きな猫眼。
右目に眼帯。が、今は上にずらしている。
やたらと袖の長い、袖口の広がった服。長い袖は地面につきそうだ。
今は破れた袖から隠していたトンファーブレードが覗いている。
もう一人は男。だが、おそらく若い。
まだ二十歳にもなっていないだろう。
黒髪短髪。茶色がかった切れ長の黒目。
端正な顔立ちで無表情。
二メートル近い長身。
黒のTシャツと黒の長ズボン。
二人とも、かなりの手練れ。
二人同時に相手をするとなると俺でもかなり手こずるだろう。
「ったく。もう話はついてんだよ! ほら、さっさとトランク持ってこい! とっとと帰るぞ!」
「いたっ」
少女が飛び上がって男の頭を叩く。
男の方はボーッとした様子で叩かれた頭をぽりぽりとかきながら、後方の小部屋へと入っていく。どうやら本当に寝起きのようだ。
「……話って?」
「ん?」
ようやく落ち着いた様子のイブが俺の袖を引いていつもの調子で尋ねてきた。
「ああ。あいつらは護り屋。今回、取引されるブツの護りを依頼されたらしい」
「……でも、それを運んでる人たち、殺したよ?」
イブが地面に散らばるソレらを見回す。
全員、喉をかき切られたあとに丁寧に止めを差されている。イブはきっちり仕事をこなしたようだ。
「問題ない。こいつらが受けた依頼はブツの護りで、組員の護りじゃない。
そうだろ?」
「そーだね」
俺が話を振ると、男を待つ少女が退屈しのぎとばかりに口を開く。
「俺たちが運搬の役割まで担っちゃうのは少し不本意だし、こっち側のブツを相手に渡せてないけど、まあ両方持ち帰れば問題ないでしょ。今回の依頼主は細かいことはあんまり気にしない奴だし。俺たちはあんまり面倒な奴の依頼は受けないしね」
どうやら依頼主側からしても問題ないようだ。ある程度想定していた結果でもあるのだろうか。
「……ふーん」
「な、なんだよ」
イブは得意げに話す少女をじーっと見つめた。
全身を舐めるように見られ、少女は体を隠すように身をよじった。
「……なんで男の人がそんな格好してるの?」
「なっ!」
「……は?」
イブさん。何を言ってるんですか?
「……すごいな。初見でジンの性別を当てたのは初めてだ」
五個の大きなトランクケースを軽々と持ちながら、男が感心した様子で小部屋から出てきた。
……というか、この少女が男?
「……なぜ分かった?」
少女? がイブを睨む。
声も少女のそれだし、容姿は何なら美少女の類いにしか見えないのだが。
「え? いや、普通に。骨とか、筋肉とか、匂いとか?」
「……普通はそんなん分からないぞ」
「そーなん?」
「そーなんよ」
言われてみれば、よくよく観察すると確かに違和感はある。だが、大きめの服や内部に隠した武器がそれをより判別しにくくしている。
初見でそれが分かるのは確かにイブぐらいだろう。イブの嗅覚は何なら俺よりも鋭い。
とはいえ、性別まで嗅ぎ分けるなんて、もはや動物だな。
「……なに?」
「いーえ、なんでもないです」
見透かすな動物。
「……ふ」
少女……じゃない。少年は下を向いた。
「あはははははっ!!」
そして、爆笑。
イブさん。ビクッとする。
「あんまり大きな声を出すな。外に漏れる」
ガイ? だったか。ナイスツッコミ。
こいつらもやはり外の特安の連中の存在に気付いてるわけだ。
「あー、悪い悪い」
少年、ジンは涙を拭いながら笑いを抑えた。
「そっかー。嬢ちゃんは動物なんだな。ガイと一緒だ」
「……殺す」
「待て」
あっさり動物扱いしてきたジンにイブがナイフを振り上げようとしたので止める。
「ガイも動物みたいな五感だからさ。完璧に潜めば、たぶんあんたらでも存在に気付けなかったんじゃないの?」
「……」
たしかに。
ジンが無線を動かすまで小部屋に人がいることに気が付かなかった。俺にさえ気取らせない潜伏スキル。
間近にいたイブも彼に気付けなかったようだ。
動物か。たしかに言い得て妙だな。
「……ジン。話は済んだんだろ? それなら早く出よう。プロとの現場での不要な会話はトラブルの元」
ガイの言う通り、互いに手出し無用となった今、会話ひとつで始末対象になりかねない。互いに。
話がついたのなら早急にこの場を去るべきだ。
「わかってるよー! しっかり者の弟でいつも助かってますー!」
ジンがべーっとガイに舌を突きだす。
いや、というか、
「……おまえが兄、なのか?」
そもそも兄弟にしては似ていないんだが。
「え? そーだよ。どっからどう見ても俺が兄でこっちが弟だろ!」
……いや、どっからどう見ても長身の兄と小さい妹なんだが。
「……驚愕の事実にイブさんもビックリ」
……と、イブさんが申しております。
「あ、ちなみに俺が十八で、こいつが十五ね」
……。
「……またもや驚愕の事実にイブさんはもうビックリが止まらない」
……激しく同意だ。
「もういいだろう。あっちのトランクも回収して行こう」
「あ、待てよ!」
ガイが止まらないジンに呆れた様子で歩きだす。
ジンが慌ててそれについていく。
端から見ると本当に兄についていく妹だ。
……だが、その年齢でこの練度。
「……おまえら、『ホーム』の生き残りか」
「「!!」」
俺の呟きに二人が驚いた様子で勢いよく振り返る。
そのリアクションでそうだと確信できる。
「……あー、おっさん知ってるのかー。ならもう話すことはないね。俺らは早く離れた方がいい」
「……そうだな」
二人の態度が一変。さっきよりも、よりさっさとその場を離れようとする。
「あ、俺たちは正面から出てくけど、おっさんたちは別ルートでしょ? 俺たちが出たら奴らが入ってくるかもだから早く行った方がいいよ」
「ああ。分かっている。
おまえらは堂々と正面から出ていいのか? 連中に目をつけられないか?」
あいつらはしつこいぞ。
「だいじょーぶ。俺たち、あいつらの依頼も受けたりしてるから。直接的に妨害とかしなきゃ基本的には見逃されるの」
「……なるほどな」
免罪符を持ってるわけか。
「じゃーね。おっさんとは依頼で対立しないことを祈るよ。俺たち、まだ死にたくないしね」
「……ああ。こっちもだ」
ジンとガイはそれだけ言うとさっさと入口へと向かった。途中でもう片方のトランクケースを回収して出るのだろう。
俺との力の差も正確に理解している。
たしかに、あいつらと依頼で対立すると、依頼の達成が非常に困難になりそうだ。
「……行くぞ」
「り」
奴らの姿が見えなくなってから俺たちも動いた。
ジンはああ言っていたが、特安の連中はすぐにここには来ないだろう。
奴らは慎重で辛抱強い。
きっと『銀狼』が入口から出てくるまで待つはずだ。
「……さて。じゃあ切り替えて、最後の仕上げといくか」
下水道への道を進みながら呟く。
「仕上げって?」
イブが鼻をつまみながら鼻声で尋ねる。
相変わらず下水の臭いに鼻をやられているようだ。
「……顔馴染みへの嫌がらせ、だな」
そうして俺たちは下水道を進むのだった。
おまけ
「……なんこれ?」
ジョセフから今回の依頼で使う得物だと渡されたナイフは不思議な形をしていた。
先が平らで両刃。
片刃の、いわゆるアーミーナイフを使うことが多かったイブからしたらそれは馴染みのないものだった。
「ミズカタナというナイフだ。
イブの武器は速さと軽さ。
アーミーナイフでは重すぎる。それに水辺で使うことを想定しているから血で切れ味が落ちにくい。連続使用するならちょうどいいだろう」
「……お揃いじゃない」
「あん?」
むくれながらポツリと呟いた言葉は、しかしジョセフには聞こえなかった。
「それねー、ジョセフがイブちゃんに一番合うだろうからって、わざわざ外国の名人にオーダーメイドで作らせたんだよー」
「え?」
だが、それが聞こえたリザがイブに抱きつきながら告げ口をする。
「ジョセフったらねー。私にどんなのがいいか相談しながら、さんざんあれこれ悩んでたんだからー」
「……そーなの?」
「……余計なことは言わなくていいんだよ」
ニヤニヤするリザと期待に満ちた目を向けるイブに耐えきれず、ジョセフは背を向けてドアに向かう。
「……実行日まで日はない。それをよく手に馴染ませておけ」
ジョセフはそれだけ言うと逃げるように部屋から出ていった。
「んもう。照れ屋さんねぇ」
リザはイブの頭を撫でながらニヤついた顔を閉まったドアに向けていた。
「……ん。もう、馴染んだ……」
イブは小さな手に収まるナイフを大事そうに見つめるのだった。