005
ポーション
人々がポーションについて 最も勘違いしていることは何だろう。それは値段だ。
高価の材料で作ったポーションが効果も良いと思いがちだが。
実情は材料のシナジーと配列式の方がもっと大事だ。材料代はただ手に入るまでの難易度と需要を現した指標。
ポーションを作ることはそうやって金で解決できるもんじゃない。
ジエンは前世でポーション製造を専門的に学んだため、自分なりのこだわりを持っていた。
人それぞれ体質が違うし、必要なポーションもそれぞれだ。
ジエンは特に今体にどんなポーションが必要なのか正確に知っていた。
ジエンが再びペンを動かす。
4つ目はハードトレーニングを主にした2次体力トレーニングを…5つ目は剣術で感覚を取り戻すのだ。
ジエンがニコッと笑いながら校内の時間割をチェックした。
時間もピッタリだ。剣術はアルカナの教育カリキュラムにもあるし、組手授業に参加することにしよう。
たった数分でスケジュール表が完成した。
この紙一枚にはノウハウがギッシリと詰まっている。ジエンは前世でもうすでに一回頂点に立ったことがある男だ。
その経験が輝き始めた。
* * * * *
「テンション低いな。低い。」
ロミナ。
聖痕学の教授。独身。自称美人。
彼女は普段も時々ヒステリーなところがあるが、今日はいつもより怒っていた。
いくらなんでも10間も欠席するなんて、理論がどれだけ大事な科目なのか分かってるの?
はぁ、こいつもどいつも理論をなめてる。
カツカツ。
神経質な音が鳴るヒール。ロミナはドアの前に立った。
「ちょっといい?」
D4洞の寮。
手すりは汚れがひどく、ロミナは手すりを触る気がしなかった。
ガチャ。
ドアを開けると変な臭いがした。ロミナは一足遅くれて鼻を塞いだ。
あっ、この臭いだっけ?
部屋の中に物が散らかっている様子は見物だった。
灰色の水。フラスコの中のポーション。
ポーション?寮でポーションを作って飲んでるのかな?
ロミナは鼻を塞いでも感じられるにひどい臭いに眉間にしわをよせた。
「ちょっと、君!いったい寮で何を…えっ!」
ごく。
その時ロミナの小言が止まった。
ガッチリした体と汗でびしょ濡れの髪。痩せたことでより濃くなった顔と憂愁に満ちた深い目つき。
あれ?この子こんな顔だったかな?
10間は誰かにとって短い時間でもあるが。
英雄には十分な時間だった。 最初鏡を見たときは分からなかったが、前世だからか。
元気を取り戻した今、ジエンとエバンは外見も似ていた。
「ロミナ教授?」
ジエンの呼びかけでやっと気が付いたロミナ。彼女は記憶の中のジエンと目の前にいるジエンを照らし合わせた。
「う、うん。」
ロミナは再び寮の住所を確認した。
私間違ってるのかな?
住所はD4洞411号で合っていた。
建物には問題が無かった。変わったのはそこに住んでいる学生。ジエンは前と印象が全く逆だった。
もちろん良い方向に。
唇がパサパサになったロミナが嬉しそうな目をしてジエンを見つめた。
完全に別人じゃん?
しかし、ロミナの行動は思ったより冷たかった。
「君、もうすぐ聖痕学テストがあるのは知ってるの?」
「いいえ。知りませんでした。」
「はぁ、そうやって欠席してるから分かるはずがないよね。10日間も欠席するだなんて、どうしてそんなかってなことしたの?」
「あ、それはもう校長先生から許可をもらいました。」
「な、なに?こ、校長先生?」
「はい、次のゲート評価テストまでに個人訓練をしてもいいと。」
「そ、そう?」
いじわるだが、校長であるセルフィスは理事長の次にあたる権力を持っている。ただの教授であるロミナは言葉を失った。
気まずい沈黙。
ロミナが静かな声でつぶやいた。
「で…それで?」
「は、はい?」
ジエンは突拍子もない質問に慌てたが、すでにロミナのヒステリースイッチはオンになっいる状態だった。
「大事なのはゲートテストだけなの?聖痕学は?理論は?あんたたちにとって大事なのは実戦だけなの?そうなの?皆自信満々のようだね…頭が空っぽだとゲートで殺されてしまうんだよ!」
ロミナのターゲットはもうジエンではなかった。ジエンに罪があるとしたら、今ロミナの前に立っていること。
「最近の学生たちはずる賢くて最低限の成績を残そうとするけど…昔はね!とても…」
ロミナはそうやって長い間説教を続けた後、落ち着いた。
「とにかく!あんたは今回のテストで点数取らないと留級だからね。それだけは覚えといて。」
「分かりました。」
「返事の仕方がシャキッとしてるのはいいけど、私は結果中止だからね。あ、そしてあんたは…」
ロミナは言おうとした言葉を呑み込んだ。
臭いを何とかして。
彼女はため息をすることで話を終えた。
「いや、もういい。テストのこと覚えといて。」
そうしてロミナは去り。
ジエン一人だけになった空っぽの寮。
…テスト祭りだな。
まだ理論のところまで時間を費やす余裕はなかった。いや、時間があっても理論を勉強するはずがない。
ジエンは前世の記憶を取り戻した。その記憶がある以上、自分が誰よりも聖痕に対する理解度が高いと自信を持って言える。
「10日間で体調がこれぐらいなら問題はない。」
そしてジエンには数日前に準備していた秘密兵器があった。
ベットの下に隠したもの。
共通点もなく自由過ぎてがらくたのようにも見えるが、見た目とは違って貴重なものだった。
これは全てアーティファクトだから。
[アーティファクト]
過去には全ての宝具をそう呼んだが、現代の概念はより細かくなったため、下記のように叙述する。
[ゲートの神秘が宿るアイテム]
アーティファクトの価値は様々だ。国と企業が欲しがる財宝がある一方で、難易度の低い1級や2級ゲートで手に入れたような下級品も存在した。
そろそろ使わないとな…
ジエンがアーティファクトを探し求めて来たのはアーティファクト国際保管所。
AIA(Artifact International Archive).
100年も経ち、建物は変わったが、前世で保管所に預けたジエンのアーティファクトは全てそのままだった。パスワードさえ分かれば誰でも預けた物を受け取れるシステムになっている。
エバンが預けたアーティファクトだが、そのおかげで記憶を受け継いだジエンがパスワードを入力してものを受け取ることができた。
様々なアーティファクトの中で初めてジエンが手に取ったメガネだった。
普通のメガネのように見えるが、アーティファクトの名前は大げさな「知識の目」だった。
メガネをかけてこうしてマナを少し流すと。
<忍耐のリング>
クラスー – 一般
情報 – 1エリアの呪いを変えて修練用に製作したリング。
効果 – 同じ動きをしても体の疲労度が高くなる。短い時間に効率の高いトレーニングをすることができる。
こうして事物や生物の情報を表示する。メガネが不便でよく使ってはいないが、今回の仮像ゲートでは使う予定だった。
次のアーティファクトは奇妙な魔よけがついたひょうたん。一見つまらない物のように見えるが、このアーティファクトの効能はジエンにぴったりだった。
<再臨の酒>
クラス – 貴物
情報 – 第3エリアで一番の酒造りの職人。チエンジャリョンの力作に裏面世界の良能が宿り誕生した酒。
効果 – マナを増やす。
※持続時間は一週間以下。
これで準備は整った。
ジエンはひょうたんの中にある液体を一気に飲んだ。
100年ものの酒だが、さすがアーティファクト。
マナが体を裂き散らすように広がった。
「これで魔道具を召喚する準備も終わった。」
薬は薬剤師に、セイバーは前世に。専門家の成長力は本当に素晴らしいものだった。