004
校長室の前の廊下には沢山の人がいた。
廊下はどこへ行くにしても必ず通らなければならない位置にあるため、普段は会うことがない人ともしばしば出会える場所だった。
とん。
すれ違いそうだっただれかがジエンの肩を掴んだ。
「だれだこれ?知らない人かと思った。おい!デーブン、ちょっと見てみろ。」
ジエンを掴んだのはデーブン輩の中の一人で、デーブンは学期の始め頃にジエンと些細なことで揉めたことがある学生だ。
それでこの二人は教授参観なしの組手までした。結果はジエンの負け。いや、一方的な暴力だった。
組手だけで終わることなく、その時から一時期デーブンからのいじめが始まった。
「どうせ魔道具も召喚できないゴミだし、もう興味ないな。」
軽蔑するような冷たい視線。
デーブンがジエンに持っていた興味をなくしたのはジエンがつぶれ始めた時からだった。残留マナで体は廃人になり、それが原因でジエンは魔道具を召喚することを失敗し続けていた。
セイバーの資格を無くしたのだ。
ジエンは体の調子が悪くなり、剣術の実力をなくしてデーブンのいじめは止まった。
「くすくす、いくら何でも二人で組手までした仲なのにひどいな。」
デーブンの隣にいた二人がくすくすと笑った。ジエンの目からすると、セイバーだとしてもまだ若い学生たちのように見えた。
「話は終わったよな?」
ジエンが寮に戻ろうとすると、デーブンはゆがんだ表情になった。
「この野郎。俺が話してる途中に帰ろうとするのか。」
さっきまで平然としていたデーブンの顔の血管がバキバキになった。デーブンは190㎝の長身で、威圧感が凄かった。
「可哀そうで大目に見てあげたのに生意気な奴だ。どうかしてるぜ。」
「ちょっと!デーブン落ち着け!廊下だぞ。教授たちも通るしさ。」
面白くて始めただけのいたずらにデーブンがブチ切れると 輩たちは慌てているようだった。
「君たち二人もよく覚えておけ。こんな奴らは最初からしっかりと教育しなければならない。ふざけるのを大目にみてあげると自分たちと同じレベルだと勘違いするからさ。」
「うん、るん。知ってる。C洞にいる女子たちはもう着いたらしいぞ。もう遅いし早く行こう。」
刺々しい態度だったデーブンは輩たちの言葉に表情が柔らかくなった。
「おい、デブ野郎。今日は気分がいいから許す。さっさと消えろ。」
ジエンは消え去る奴らの後ろ姿を冷たい目で見た。
そうだったけ?
前世の記憶を取り戻したジエンにはこれぐらいのいじめは可愛いレベルだった。ただ、セイバーを志望する学生があんな行動をすることに対してがっかりした。
ジエンは100年間世の中が沢山変わっていることを認めていた。
ゲートを征服したと燥ぐ人類は今を平和の時代たと呼んだ。今のセイバーに昔のような切実さと真剣さはもうなかった。
「変わりすぎだよ。」
それについてジエンは気の毒に思っていた。
* * * * *
再び寮に戻り、
ジエンはすぐに机の前に座った。
とりあえず校長から許可ももらったし、スケジュール作成から始めてみよう。
ジエンは誰よりも計画表の大事さについてよく分かっている。特にセイバーの計画表には大きな意味があるが、ただ「時間を大切に使おう」ぐらいではなく、トレーニングの効率を極大化することができる。
肉体の成長はマナと深いつながりがある。
今みたいにマナの循環が詰まっていると、残留マナにより体がむくんでしまうが、ほどよく循環させながらマナを体に流すと、マナの消耗が自然になることでマナのポテンシャルは上がり、筋肉はマナにより敏感な状態に変わる。
それはトレーニングの時も戦闘の時も良い反応だった。
運動よりマナのスケジュールを前にしよう。
ジエンは少ししてメモを終わらせた。
<第1スケジュール。マナ循環>
参考:運動をする前のマナ循環は運動の効率を上げてくれる。
時間:午前6時から9時まで
マナ循環は精神力の消耗が激しいから、3時間ほどにして。
次は考えるまでもない。体にあるマナを安定させて運動に最適化した状態に作ったなら、当たり前のことだが運動をすればいい。
ジエンのペンが再び動く。
<第2スケジュール。1次体力トレーニング>
参考:1次トレーニングはランニングといった有酸素運動で体重を減らす。
※軽い運動をすると体の中にマナを自然に流せる機会が増える。
時間:9時10分から11時50分
時間を11時50分にした理由。
ジエンは運動をするにあたって一番大事なのは食事療法だと思った。
運動するだけでは効果が出にくいし、食事を減らすだけではダイエットにならい。大事なのは運動と食事療法のバランスを取ることだ。
<第3スケジュール。食事療法>
食事のレシピ:食事は減塩食で始め、むくみが取れたらタンパク質が多い食品に変える。
ポーションレシピ:毎日調合式を変え、マナと筋肉を交互に増やす。
時間:11時50分から13時