ロザリンド7
こうして大人になっていくんですね。
その夕飯の席で公爵はとんでもないことを言い出した。
「わしの次男のアルフレッドがフランクリン伯爵と婚約をしたいと言っておる。確かフランクリン伯爵はまだ決まった相手はいなかったよな?次男はまだ12歳だが、中身はもう大人だ。いい話だと思う。」
「待ってください!私はもうウィル兄様と婚約しています。」
とんでもない!とすぐに反応した私を作ったような完璧な笑顔で黙らせてから、ウィル兄様が公爵の方に向き直った。
「本当につい先日のことですので、公爵はご存知ないかもしれません。伯爵家には今すぐに成人した婚約者が必要なのです。転生者だと噂のご令息ですが、法律上はまだ12歳。どうか状況を汲んでください。」
あの子、転生者だったの?ということはテオドールというのは前世の名前か。
この国の王族は精霊の血を引いていて加護があることから、死んでもまた王族に生まれると言われている。その中でも何人かは今までの生の記憶を保持したまま生まれてくるようで、「転生者」と呼ばれている。
最近の王族にテオドールという名前はいなかったように思うから、前世というのはかなり昔の話かもしれない。
今まで他者を見下したような目しかしていなかった公爵がウィル兄様の話を聞いて瞠目した。
「婚約をしていたとは知らず、失礼した。ではこの話はなかったという事で、アルフレッドにも伝えておく。」
相手の都合を考えず、何でもかんでもめちゃくちゃにする人かと思っていたので、少し拍子抜けだ。
当然だが、常識的な一面もあったのだろう。
ひょっとしたら私が強く出なければもっとうまくいったのかもしれない。
ちょっと反省した。