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妖怪7 盗賊ネタって多いよね

 少年は目を覚ます。不寝番をすると言いながら寝てしまったのだ。

 本来なら許されないことだ。彼の職業は一秒の油断で一生の死が訪れることもある。

 にもかかわらず彼は寝てしまった。

 そして、その起床は心地の良いものだった。

「・・・あ」

「起きたの?」

 見上げるのは赤い瞳。見下ろされるのは黒い瞳。不思議と嫌ではなかった。本来なら起き上がり薙ぎ払うものなのに。

 少し切れ長の瞳。黒くつややかな髪。そして、小さな白いマスクが印象的だった。

 ただ、思う。愛おしいと。

「お、俺、寝てしまって・・・」

「そのままでいいわよ」

 口裂け女が眼もとでほほ笑む。口元が見えなくても笑っているのがわかってしまう。それだけで幸せを感じてしまう自信に驚いていた。

 ともあれ、少年は幸せな人生を歩いてきたわけではない。むしろ、対極であると言っていいだろう。だからこそ、この不自然に幸せに歓喜しているのは仕方のないことであった。

 もっとも、人生どころか、怪異としてのありかたすら理解できていない口裂け女の喜びは天上天下を突破していたが。

『可愛い! 尊い!! この感情を表現する手段がこの世にはないわ!』

 割かし変態の思考だった。

 とはいえ、彼女の浮かべる表情は菩薩さながらだ。マスクをつけてはいるが。

「夜が明けたようですね」

 さす日差しは肌を焼いている。少なくとも早朝ではないのだろう。そう思いながら少年は体を起こす。

「あっ・・・」

 そして、どこか残念そうな声を上げる口裂け女。

 だからこそ、少年は彼女の手を握って笑顔。

「おはようございますカレンさん」

「ぴっ!」

 相変わらず奇声を上げることしかできないらしい。とはいえいつまでも膝枕プレイを続けているわけにもいかないのだ。

 少年は赤面ガクブルしている口裂け女から手をほどきながら鼻を鳴らす。

「遠くから血の臭いがしますね」

 そんな言葉に口裂け女は肩を揺らす。

「あ、それは夜に良くないことをしようとした輩がいて・・・」

「そうなんですか」

 あっさりと納得され、その内容に触れられないことを若干不安に思いつつも、口裂け女は口を開く。

「これからどうするの?」

 口裂け女自身、この世界で自分がどうなるのかわからない。この世界で肉体は得られたようだが食事や睡眠、排泄が必要なのか? それこそ、彼との性的なうんちゃらかんちゃからができるのか? 何もかもが謎すぎる。

「結婚するには文明が必要ですからね」

「ふぁっ!」

 スタートがマックスだった。

「ぶ、文明が無かったらどうするの?!」

 もっともな話である。

「そしたら俺たちがアダムとイブになればいいだけでしょう」

「ふぃーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 口裂け女がのけぞった。

「あ、あたしがイブで彼がアダムで・・・・・・でも、アダムがあたしでイブなあなたで」

 怪異が本気で錯乱していた。

「カレンさん大丈夫ですか?」

 お前のせいで大丈夫ちゃうわ! そう言いそうになりながらもマスクの位置を整えて口裂け女は言葉を口にする。

「考えておくわ」

 でも愛してる!

 言葉にはしていない。しかし、指はハートを作っていた。

 モロバレである。

 見方によっては新型の気功砲であるが、彼と彼女の意識はツーカーであった。


 そして、彼と彼女は歩き続ける。

 目標はない。そもそも、どこに何かがあるかも知らない。

 というわけで歩き続ける。

 だからこそ、だろう。

 歩き続けた結果、その先から争いあうような音が聞こえた。少なくとも何かがぶつかり合うような音だ。そこに日常はない。

 そして、少年は思う。

「面倒だな」

 街が近いならともかく、厄介事の香りしかしない。解決したとしても無賃のアフターフォローが発生する可能性があるなら近寄りたくすらなかった。もっとも、利益があるかもしれないが、その判断は今できない。

 一方、口裂け女は、

「情報が欲しいわね」

 赤い和傘を握りしめていた。

 慎重な少年とわかりやすい怪異だった。


 どうやら少し先の街道、開けた中継地点のような場所で馬車と馬車、その乗組員同士が争っていた。どちらが襲撃者でどちら被害者なのかはわからないが、攻め立てる側は粗野な服装をしていた。さながら盗賊である。

 しかし、場合によってはレジスタンスという可能性すらある。ならば、

「積み荷は奪え! 抵抗する奴は殺せ!」

 マーダーライセンスまっしぐらでした。猫もびっくりです。

「どうするのクロ君?」

「ちょっと行ってきます」

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