妖怪26 クソザコですみません
色々とまずいスキルが出た。
実際、鑑定士兼衛兵が固まっている。
「お前、レベル1で生きてきたのか?」
「え?」
スキルに対してはノーコメントであった。
「もしかして良いところのお坊ちゃんか?」
「い、いや、そんなことはないですけど」
そもそも、ステータス画面とやらを初めて見た少年からすれば突っ込みどころが多すぎた。
「というかそんなステータスで良く魔獣を捕獲できたな。まあ、よく人に慣れているようだからじゃれあっているだけなんだろうけど気をつけろよ? スキルが多くあってもレベルが低けりゃゴブリン一匹に殺されるんだから気をつけろ」
『どういうことだ?』
少年は考える。
不吉な名前のスキルはスルーされた上で、自身のレベルが低いことに指摘をされた。
実際、この世界に来て時間が短い。しかし、経験知的なものは稼いでいる。
だが、少年のレベルは最低のものであり、衛兵に指摘されるほどであった。
「きれいな姉ちゃん守りたいなら、威勢だけじゃなくて身体も鍛えなきゃな」
いつの間にか口だけ番長に認定されていた。
そして、優しく叩かれる肩の感触と、その口調が優しいものに変わっていく。それこそ、幼い子供を諭すように。
「でも、良くわからんスキルが多いが、内職が得意なら食いっぱぐれることはないな」
突っ込まれないのは衛兵が無知なだけだった。
「でも、凶手って何なんだ?」
「手品の一種です」
笑顔で嘘を吐きながら、言って居住まいを正すとおもむろに右手を上げて指を鳴らす。
「この通り」
左手に刃の砕けたタングステンナイフの柄が握られていた。
「ん? いつの間に」
「そして」
それを握りこんで胸元に寄せてから、大きく左腕を開いてその指を鳴らせば、
「この通り」
「おお!」
目の前に差し出された右手にはナイフの柄が握られていた。
「ついでにこんなものはどうでしょう?」
そのまま鳴らされる音と同時に現れたのはタンポポのような花が一輪。
「おお、すごいな」
その花を口裂け女に手渡すと少年はにっこりと微笑む。
「いかがでしたか?」
「まあ、道化師なら多少は奇抜な服でもいいかもしれないな」
いきなりとんでも職業を押し付けられた少年だった。
「とはいえ、この町で普通の服を買いそろえた方が良いだろうな。毎回こういうやり取りをするのも嫌だろ?」
もっともな話だった。
「さて、そっちのお姉ちゃんもステータス鑑定させてもらうぞ」
そう言われれば少年は下がり、前に出た口裂け女は手にしたタンポポのような花を胸に抱きながら、マスク越しに口を開く。
「ステータスオープン」
名前 カレン
性別 女
種族 人間?
LV:15
HP:255
MP:0
STR:100
AGI:258
VIT:110
DEX:157
INT:0
LUK:MAX
スキル
怪異LV:MAX 長剣LV:1 近接戦闘LV:1 華道LV:1
「なんというかお姉ちゃんの方が強いのかよ。しかも種族が疑問形ってことは異族の血が混じってるのか? 苦労してるんだな」
突っ込むべきところを突っ込まれなかった。
「ああ、いいってわかってる。顔隠しているから怪異とかいうスキルがマックスなんだろ? むしろ、華道ってスキルは何なんだよ」
「いや、あたしもわからないんだけど」
口裂け女は困惑していた。そこに入る少年のフォロー。
「俺達の故郷には華道という文化があります。それは草花を器に生けて芸術とするものです。例え、それがお遊びだとしても、行ったことがあるならばスキルとしてカウントされることもあるのではないでしょうか?」
「ああ、気づくと知らないスキルが生えてる時があるもんな」
雑すぎる衛兵であった。
とはいえ、少年達からすれば突っ込みどころの多いところを突っ込まれなくて安堵の息を付きたいところだった。
「よし、これで町に入っても大丈夫だ。ただ、奴隷登録はちゃんとしろよ。それと、冒険者登録か住民登録、もしくは商人登録をしないと通行料を取られるからそこは頼むぞ」
「え?」
「当たり前だろ? お前たちどんな田舎から来たんだ?」
想定外の事態である。
異世界人である少年達に現地の現金なんて持っていない。
しかし、
「魔石でもいいですか?」
とは少年。
「ああ、とはいっても鑑定士じゃないから端数の釣りは返せないぞ」
「構いません。ゴブリンの魔石なら何個ですか?」
「人数分で大丈夫だ。お姉ちゃんが狩ったのか?」
少年は人数プラス獣一頭分の魔石・・・赤く輝く鉱石のような物のかけらを衛兵に渡す。
「そうですね。俺も手伝いましたけど些細なものです。ところで、他にも魔石はあるのですが、換金できるような場所はあるのでしょうか?」
「冒険者ギルドで換金できる。ギルドは門を通り抜けての突き当りだ。まあ、この町周辺なんてろくな仕事が無いから王都に行くといいと思うぜ」
「それはどうも」
それ以上は聞くことはない。そう判断した少年は立ち上がって外に出る。
「ソルトレイクシティにようこそ!」
少年は思う。
間違いなく自分と同じような地球人がこの世界にいるということを。
なぜなら、文字もそうだがネーミングで間違いないと確信する。
良くある設定だと思っても、自分自身が叩き込まれれば様々な意味で警戒せざるを得ない。
当然、衛兵の言葉なんてかけらも信じていない。
少年の生きてきた世界は全てを疑ってもお釣りがくるほどの地獄だったのだから。
つまり、衛兵のスルーなど、ああ、良かったなんてで済ませない。むしろ、なんで、それで済ますのだと問い詰めたいレベルだった。
とはいえ、口裂け女を休ませてあげたい。そう思っていたからこそ、話を広げなかった。
同時に自分のステータスの検証をしたかった。
正直、絶句した。
比較対象はわからなかったが、鍛え上げた肉体。正確に言うなら殺しに特化した肉体だ。この世界の平均数値はわからないがあまりにも低すぎる。
しかし、理由はある程度推察できていた。
「偽装解除」
本来なら口にする必要もない。しかし、今は必要があると判断した。
結果、
「ステータスオープン」
名前 黒
性別 男
種族 殺人者
LV:105
HP:50
MP:0
STR:35
AGI:450
VIT:5
DEX:555
INT:3
LUK:0
スキル
凶手LV:MAX 料理LV:1 裁縫LV:MAX 隠形LV:MAX 調合LV:MAX 解体LV:MAX 状態異常耐性LV:MAX
偽装を解除してもクソザコだった。
よろしければ評価とブックマークをお願いします!




