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妖怪25 やんのかこら?!

「ああん? テメェやんのかコラ?」

 少年がもめていた。

 街の入り口、それこそ出入りの門の前で速攻もめていた。

「いや、そうじゃなくて規則だから」

 向かい合うのは二人の男性。

 皮のヘルメットと防具、そして、短い槍を手にしているのだが、その表情は困惑が強い。

「俺達の何が問題なんだ?!」

 なぜなら、見たこともないデザインの衣服を着た少年に、顔に奇妙な仮面もどきを付けた長身の女性。(和傘付き)奴隷の首輪をつけた少女に続く巨大な狼。(首輪無し)

「問題しかないに決まってるだろうが!」

 正論でしかなかった。

 彼が門番でなくとも問答無用で止めるレベルであった。むしろ、近づいた時点で攻撃されてもおかしくなかった。もっとも、そうしなかったのは英断ではあったが。

「身分証明のない子供に仮面を外さない不審者、奴隷登録証のない奴隷に使い魔登録リングをつけてない魔物を街に入れるわけないだろう!」

「わかった。

 そう言って少年は頷く。

「ブラウン、ポチ。お前らは追放と素材になれ」

「!?」「っ!」

 マッハで見捨てられる一人と一匹であった。そもそも、後者は追放ですらない。

「それならどうだ?」

「いや、お前たちも十分不審者だから」

 ど正論だった。

「くっ、かくなる上は・・・」

 何も考えていなかった。

「ねえ、門番さん」

「なんだよお嬢さん」

 どこか疲れた様子の門番に口裂け女が問いかける。

「私が顔を見せれば入れてもらえるのかしら?」

「ん? まあ、それ以外にも通行証作成のための手続きと使い魔登録、奴隷登録にステータス判定をさせてもらえれば通せるぞ」

「面倒だな」

「黙ってろ小僧。姉ちゃんに迷惑をかけるな」

 そんな門番の言葉に少年は眉を顰める。

「姉ちゃん?」

「だってお前たち二人は姉弟だろ? 黒髪なんてこの国じゃ珍しいからな」

 言われて納得、見て納得。もっとも、種族はかけ離れてはいたが。

「俺達は「家族です」

 少年の言葉を遮って口裂け女は目元でほほ笑む。

「だよな。で、どうするんだ?」

「わかったわ」

 そう言って口裂け女はマスクの下で少し口をもにゅもにゅさせる。その仕草がなぜか可愛らしいと興奮する変態少年と、何をしているんだと不思議そうな顔をしている門番だったが、

「これで・・・いいかしら」

 取り払われる白い布。その下に現れたのは薄い紅を塗った唇。紅の瞳と合わさってどこか妖艶な雰囲気を感じさせた。そして、目元だけでもわかっていた造形が露わになる。

 長く伸ばされた黒髪の下にはやや釣り気味ながらも大きな深紅の双眸。細く高く通る鼻梁に続くのは薄くほほ笑む広い唇と細い顎。言葉にするまでもなく美女だ。ただし、手折れるような美しさではなく、女豹のような動物的な美しさだった。

 少年は満面の笑みを浮かべて見入り、奴隷少女は目を丸くして、草原の王者はひたすら身を震わせていた。

「随分な別嬪さんだったんだな?」

「ちなみに吸血鬼でもないわよ?」

 そう言って開かれた口は白くきれいな歯並びだ。少なくとも鋭い牙はない。

「これでいいかしら」

 返事の前に口裂け女はマスクをつけ直す。

「なんでそんな仮面もどきつけているんだ?」

「ナンパ避けよ」

 言っていながらナンパされたことが無いことを自覚し落ち込むが、求婚されたことはあるので大丈夫と胸を高鳴らせる。内心で忙しい口裂け女だった。

「なるほどね。それじゃあ、詰め所で手続きをさせてもらうぞ」

 第一関門突破である。

 彼らはそのまま門のようにある掘立小屋もとい詰め所の前に案内される。

「まずは使い魔登録だ。詰め所に入ったとたんに暴れられても困るからな」

「それってしないとだめなのか?」

 と少年。

「当たり前だろ。暴れたらどうするんだ?」

「解体すればいいだろ」

 逃がすという発想はないらしい。まあ、逃がすことなど認められないだろうが。だって巨大な獣だし。

「お前、なんで連れてきたんだ?」

「乗り物を現地で乗り捨てるなんて当たり前のことだからな」

 嫌な現地があったものだった。そして、少年は草原の王者を乗り物としてしか見ていなかった。

 哀れ過ぎる。

「ダメよクロ君。ペットは最後まで面倒を見ないと」

 そして、ペット扱いである。草原の王者なのに。

「そうですね。速やかに手続きをしましょう」

 あまりの変化に溜息交じりの門番。

「それじゃあ、この書類に名前を記入してくれ」

 そう言って門番が手渡してきたのは木製の板に乗せられた一枚の紙。サイズはA4くらい。少し形は歪だが四角に切り取られている。触れる質感は和紙のようなそれ。そして、その紙の上で踊る文字は、

「日本語かよ」

 国の名前から予想はしていたが少年たちの慣れ親しんだ日本語そのものだ。古文でも何でもない。漢字とひらがな混じりのそれだ。若干ひらがなの方が多い気もするがその程度だ。

「文字は書けるか?」

「ひらがなだけなら」

 そう言った理由は予防線だ。

 なぜなら漢字は難しい。現代人ならともかくとして、文明の発達していない地域や国では識字率は言うまでもなく低い。そして、日本語・・・特に漢字は文化圏が近ければ読むことはできても書くことは困難だ。そして、それが自由に読み書きできるのは高等教育を受けた者だけ。それは、少数であろう。だからこそ、ひらがなしか書けない。そう言った少年はそれが正解だと確信する。

「坊主は学校に行ったことが無かったんだな」

「ぶち殺すぞこちとら高校中退だよ!」

 そして、それが間違いであったことが発覚する。

 深読みし過ぎた結果であった。

「ん? 中学まで行っているなら漢字くらい書けるだろ」

「義務教育万歳!」

 叫びながらボードを奪い取ると、黒という漢字一文字だけを書いて渡す。

 これも予防線の一つだ。苗字か名前が足りないと言われれば書き足すだけでいい。しかし、そのまま受理されればある予測が成り立つ。

 ちなみに書類の内容は使い魔が暴れた場合、その主がすべての責任を負うという内容で、書類に記載された番号が使い魔に装着するリングないしベルトに刻まれた番号と紐づけされるということだった。契約等で縛るなどの魔法的要素は皆無だった。

「よし、これで問題ないな。この首輪を使い魔の見える場所に巻いてくれ」

 門番が手渡してきたのは人間の腰に巻く長さのベルトのようなものだ。材料不明の皮のような素材だった。

「ポチ、首を出せ」

 その言葉に草原の王者は恐る恐るといった様子で近づいてくる。

「・・・坊主お前こいつに何したんだよ」

「首を落としておけば良かったと後悔してる。いや、それなら今からでも・・・」

 そして、草原の王者は逃げだした。


「冗談だよ。そう怯えるなよ」

 逃走後の捕獲のすったもんだの末、胡散臭い笑顔が身動きの取れない草原の王者の首にベルトを巻いていた。

『嘘だ!』

 どこぞのヤンデレ少女のように内心で叫ぶがそれはどこにも届かない。

「おい、これでいいんだろ?」

「むしろ街に入れる選択を無しにしたくなってきたぞ」

「大丈夫だ。こいつはこんななりをしているけど良い奴だ。多分」

 目の前で逃亡は説得力皆無である。

「いや、そんな魔獣をあっさり捕獲する坊主が危険人物にしか見えなくてな」

「っ!」

 馬鹿なという表情をしているが当たり前の評価だ。

「まあいいか。使い魔には悪ささせるなよ。次は奴隷登録だな」

 こちらはすんなり終わった。使い魔と同様書類に名前を記載するだけだった。ただし、奴隷が首に着けているリングに記載されている番号と奴隷協会から発行されている商品台帳と照らし合わせる必要がある。その台帳に記載されている番号に所有者情報があれば、持ち主ないし奴隷協会に差し戻される。所有権を譲る場合は所有権委任状を発行してもらえば、商品台帳が最新の物に更新されていなくても差し戻されることはない。

「なんかこの国の法律って確実に現代日本人が作ってるな」

 結論から言うとブラウンは無登録奴隷だった。違法奴隷とか闇奴隷とかではなくこれから奴隷として登録される。

「それはどうしたらいいんだ?」

「リングで名前を奪われているから開放するなら奴隷商会で解除してもらえばいいが金はかかる。奴隷登録するなら奴隷商会で登録するといい。ちなみに有料だ」

「そのまま連れ歩いたら?」

「意図的に連れ歩いたままだと違法扱いになって捕まるぞ。ちなみにそのつけられたリングは魔道具で追跡できるからおすすめしないぞ」

 まさかの追跡装置付きだった。

「所有権がいらないっていうなら奴隷商会に返せばいい。多少の金はもらえる。金額は奴隷商会に聞いてくれ」

 少年としてはまったくもっていらなかったので速攻返却したいところだ。

「次はステータス判定だな。詰め所の中に入ってくれ」

 草原の王者の面倒は奴隷少女に任せて、少年と口裂け女は門番と一緒に詰め所に入っていく。

 そして、

「ステータスオープン」


名前 黒

性別 男

種族 人間


LV:1


HP:10

MP:0


STR:5

AGI:10

VIT:1

DEX:10

INT:3

LUK:0


スキル

凶手LV:MAX 料理LV:1 裁縫LV:MAX 隠形LV:MAX 調合LV:MAX 解体LV:MAX 状態異常耐性LV:MAX


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