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妖怪18 ドキドキバグバク

 好きな人?! そもそもあたしは人じゃないし、クロ君が言いたいのはそういうことじゃないのもわかってるんだけど、わかりたくてもわからない! 脳が沸騰して何も考えれなくなってしまってる。それでも言葉を返せなきゃいけないのはわかってるんだけど、胸がバクバクしてて言葉を形にすることができないわ! とんだ怪談ハンターがいたものね!

「カレンさん?」

「だいじょばないわ!」

 大丈夫と言おうとしてこの始末だった。

 でも、クロ君も悪いのよ? あたしの胸をかき乱すような言葉を使ってくるんだから。

 もう、どうしたらいいのよ。彼の視線を感じるだけで胸の奥が熱くなってくる。慎まやかな胸がね。

 ・・・あかん、自分で考えてて凹んできた。年増の上に胸薄ってどうなのよ。

「俺は、カレンさんが思っている以上にカレンさんが好きで、今の状況をとても楽しく思っていますよ」


 少年は思う。

 使い捨てられる電池のような人生が約束されていた。動力がなくなれば廃棄されるだけで未来は決して続かないことを知っていた。にもかかわらず、少年はこうして空を見上げたり、傍らにいる女性を見ることができていた。

 緑の匂いと土の匂い。そして、傍らの女性の香り。もう一人は認識の外だが気にしない。

「見た目や年齢を気にしているみたいですけど、俺は何一つ気にしませんよ」

 少年は知っている。見た目も何もかもがカモフラージュすることができることを。どんなに美しく着飾ったとしても、どんな皮をかぶったとしても、醜い人間は一目でわかる。

 目の奥が濁っている。所作に不自然がある。音が正常ではない。

 すべてを超越したものもいる。しかし、それでも、それは現実から乖離するのだ。少年はそれを見逃したことはない。だから、少年は思うのだ。この、小さなマスクで口元を隠す女性はどこまでも素直で正直すぎるのだと。疑うことすら馬鹿らしいレベルであり、それ以上でも以下でもない。それはこれまでの少年の周りにいなかった人物感である。

 なんというか素直すぎた。疑う余地すらないまっすぐ過ぎる女性。それが彼女だった。

「そもそも、俺自身が自分の見た目を気にしていませんしね」

 少年は自分の見た目を気にしたことはない。痩身痩躯で特徴のない顔立ち。しかし、それは目立たないためのカモフラージュであり。特徴のない顔というものはパーツが整っているということだ。つまりは美形だ。野暮ったい眼鏡辺りをかけていれば隠せていたかもしれないが、そんな可能性はなかった。もっとも、目を隠すような髪の長さが少年の見た目をオタクっぽくさせているのは否めないが。

 しかし、少年はインキャではないのだ。思ったことは口にするし行動にする。

「だから、カレンさんみたいに鮮やかな人は好きですよ」

 少年の言う鮮やかという表現は見た目だけではない。行動も含めて鮮やかというなら口裂け女の行動は派手だろう。そして、少年の好みが一致した結果と言える。

 結果、口裂け女は、

「PPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPP」

 よく分からない機械音もどきを鳴らしていた。せめて音を鳴らすやかんの様にわかりやすい音を出してほしかった。


 クロ君は何を言っているの?! あたしを殺したいの? そうじゃないなら教えてよ!! なんであたしを苦しめるのよ!

 好きすぎて死にたくなっちゃう!

 あかん、あたし、関西人になっちゃう!

 違う!

 言葉を返さないといけないのよ!

 返せるか!

 脳が沸騰寸前よ!

 胸なんて核融合間近よ!

 薄くって悪いわね!


 完全に勘違いな方向に暴走していた。



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