妖怪10 変態でした
こんにちわ異世界こんばんわ異世界。
様々な感想はあるかもしれないが、相変わらず彼女と彼は二人きりだった。
トラブルはありつつも回避しつつも結果として二人でしかなく、世界の情勢すらも理解できていなかった。幸い、街道はある。それに沿って歩けばいつかどこかに歩きつくことはできるだろう。もっとも、その距離と時間は不明だが。
少年は歩き口裂け女も歩く。
お互いに知りたいことばかりで会話には事欠かなかった。
「カレンさんの好みは何ですか?」
直球だった。
「サバの味噌煮ね」
昭和臭が半端なかった。
「それは素晴らしいですね。俺、料理もできるんですよ」
「異世界とかいうのにサバがあればね」
一刀両断だった。
とはいえ、悪意のあっての言葉ではない。
口裂け女がそもそも異世界という概念を知らないのだ。それを誰も責めることはできない。しかし、少年の心はハートブレイク寸前だ。
『愛する人と言葉のキャッチボールができないなんて!』
それこそ発想が昭和である。平成に生まれたならうまく打ち返してほしかった。
「この先どうしましょう?」
それは口裂け女も考えていた。
しかし、答えるための言葉を持たない。
なぜなら、ここは異世界であり、口裂け女にはそれこそ未知の世界である。
なおかつ、彼女の容姿は場合によっては化け物としてみなされる。
口が裂けているのだ。
しかも、端から端まで。
彼は可愛いと言ってくれる。
一瞬、ずきゅーんとのけぞった。
しかし、それは万人に受け入れられるものではないだろう。
つまりは排除されるかもしれないのだ。
ならば、距離を取らなければいけないかもしれない。
でも、忘れてもいけない。
あたしは彼が好きなのだ。
大好きなのだ!
仕方ないだろ?! 好きになったんだから!
街道までの道は続く。会話は色々あるわよ! 質問ばかりよ!!
嬉しいわよ?! 悪い!!
でも嬉しかった。
私のことを知ろうとしてくれる彼のことが。
そして、事態は移る。
少年は手にしていたナイフを地面に落とす。
それは地面に触れた瞬間、切っ先から砕けて二つに割れた。
つまり、限界だったのである。
しかし、それを責めることはできない。
人外という存在に牙を剥けた武具が無事な方がおかしいのだ。
少年は思う。
なぜ、人外は強いのだろうと?
当然の疑問でしかない。
しかし、古来からもあった。
人は人にしか強くない。
悪霊や妖怪に対して対抗策はある。しかし、限定種なのだ。酒を飲ませたり唾で刃を濡らしたりと限定的だ。ルールで縛っている感触がある。
だからどうしたと言われればそれだけだ。
でもねと思ってしまう。
怨霊と呼ばれながらも、神様になった人もいた。
神様から悪になった存在もあった。
そして、私は変態だった。




