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アッブファート  作者: U_oi
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第二話 トラゲーディエ


「いってきます!」


「いってらっしゃい」


俺はおばあさんに見送られ、元気よく家を飛び出した。これから一人で、山へ薪集めと、水汲みをしに行く。

養子になってもう4年経った。出会って初日の時焦って普通に話していて、気がつかなかったが、この世界は日本語で会話して、そしてドイツ語で文字を書くらしい。ドイツ語は運よく、趣味程度だが勉強していたから良く使われる文は難なくできた。難しいところは、おじいさんに習い今ではすらすら書ける。

おじいさんとおばあさんにはたくさんのことを学ばせてもらっていた。例えば、おじいさんには剣の扱い方、弓の扱い方、剣と弓と盾の扱い方、そして魔法の扱い方。どうやらこの世界では、魔法が扱えるらしい。使うのに半年はかかった。何せ難しい。例に挙げると、初級魔法のフォイヤー。ちなみに魔法名も詠唱もドイツ語だ。ただ火を想像すれば出るだろうという感じで発動してみようとしたが、無理だった。体の中を流れる魔力を感じて、指に魔力をどんどん溜めて、その魔力を火に変えるイメージをしてやっと成功する。体内の魔力を感じるだけで数ヶ月もかかった。今でも初級魔法しか使えない…おばあさんには料理や掃除を徹底的に教え込まれた。鬼だね、あれは。調味料入れるときに目分量で入れると怒られるし、掃除は部屋の隅のちょっとしたほこりすらも許してくれない。そのおかげで全部うまくなった。そして、2人のおかげで村の住民と、とても仲良くなった。はじめはあまり歓迎されていなかったが、おじいさんが村の集会に俺を参加させたり、おばあさんが村の全部の家に俺と一緒に挨拶まわりをさせてくれたりして、徐々に受け入れてくれるようになった。

でも、やさしくて大好きだったおじいさんは1年と数ヶ月前に他界した。仕方がないことだ。おじいさんとおばあさんは会ったときから、相当歳老いていた。おばあさんも、もうあまり動かなくなってしまった。


「さてと、薪は拾えたし、水も汲み終わったし、もう帰ろうか!」


一日のやることが終わった俺は家に向かった。山を降り、村の開けたところに行くと、村長が待っていた。なんだか悲しい顔をしている。


 「どうしました村長?」


 「残念な知らせだ。数時間前に君のところのおばあさんが倒れた。処置はしたのだが…回復はあまり期待できないな…そういうことだから、早く家に行きなさい。」


 「わ、わかりました!ありがとうございます!」


(うそだろ…おばあさんまで死んでしまうのかよ!何でだよ!)


猛ダッシュで家に向かった。


 「おばあさん…」


家に着くとベッドに眠っているおばあさんが居た。


 「あぁ、エルマーお帰り。おばあさんもう目を開けないかもしれない…そばに居てあげて。」


隣の家のリーザベルさんが、おばあさんを看病してくれていたらしい


 「ありがとうございますリーザベルさん。」


「いいのよ。」


そういって彼女は家を出た。


 「おばあさん、ただいま。エルだよ。」


俺は眠っているおばあさんに話しかけた。返事はない。しばらく様子を見ていたが起きる様子はない。


◇                  ◇                  ◇


「…ル。エ…。」


 「ん?」


声が聞こえる。どうやら眠っていたらしい。


 「エル…」


おばあさんの声だった。


 「おばあさん!起きたの?」


 「いや…もうお父さんが呼んでいるよ、来いって。私行かなきゃならないねぇ…エル、今までありがとう。子供ができなかった私の元に養子でも来てくれて。楽しかった…」


 「おばあさんそんな…行かないで…」


泣き声で必死に俺は言った。


 「だめだよ、もう行かなきゃ。あぁあぁ、ほらほら泣かないでおくれエル。エルの笑っている顔が私は好きなんだ。ほら笑っておくれ?」


少し笑っているような声がするが、火をつけていないのでわからない。


 「無理だよ!おばあさん…」


「じゃ、もう行くからな…空から見守っているから安心していてな。元気でな。」


 「嫌だ…行かないで…おばあさん!」


返事が消えた。

おばあさんはこの世を去った。


「いままでありがとうおばあさん…」


俺はそう一言言って大声で泣いた。朝が来るまで大泣きした。


日が出てから村長におばあさんが亡くなったことを話したところ、明日葬儀を執り行うとのことだ。

悲しすぎてそれから一週間家に篭った。村長やリーザベルさんのおかげで、俺は少しずつ元気になっていった。


だいぶ元気になった頃、村長が今後どうするかを聞いてきたので、俺は「ギルドメンバーになるためにこの村を出て、町に行こうと思っています。」と言った。村長は「そうか、わかった。辛いだろうけど頑張れよ!あんまりギルドのことは知らないからアドバイスできない、すまんな。まぁ、いつでも帰っておいで。俺たちは待っているから。」と言ってくれた。


ギルドのことはおじいさんに教わった。この国はいくつものギルドが結集してできているらしい。総ギルド数は数十個あり、日々土地を争っているらしい。ほとんどのギルドは金目当て、もしくは国を統一して自分のものにしようとしているらしい。この村はあまり領地にしても経済効果がないためどのギルドにも属さない、無所属という形らしい。国自体にはもちろん所属しているが。

なぜこうなったのか、原因は昔の王政が独裁者で市民たちが革命を起こしたのがきっかけらしい。その代表は今のギルド連合の総長らしく、総長は革命成功後に「我々は政治を行わない。やりたい人はここに来て欲しい。」と言った。その後、総長と共に数十人の人が集まり会議をしたが、欲と欲がぶつかるだけで何もまとまらず。そこで総長が「もういい、俺が仕方がないが仕切ろう。この集まった者たちに土地をやろう。それでギルドとして存在させる。俺らはそれを仕切るだけ。中立だ。ギルドメンバーの登録とか裁判とかにしか首を突っ込まない。それでいいだろう!」と言ったらしい。俺からしたら意味不明な気がするが、その場の全員賛成。それでいいのかって突っ込みたくなる。こうしてできたらしい。

町にはギルド連合受付という役場みたいなのがあり、そこで冒険者登録をし、メンバー募集しているギルドを探し選んで入る。大体、いつでもメンバー募集はしているらしい。

そこで俺は活躍したいと思っている。


おばあさんが亡くなってから3週間後、村のみんなに挨拶をして、俺は町に向けて出発した。


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