閑話 ゴーゴーババア
母親の気持ちなんて分かりません。俺は母親になったことなんか無いし、なるとしたら父親ですもんね。
なので、とりあえず母の顔を思い浮かべながらなんとかかんとか書きました。優しい人でした。
───信じられるかい?いつも平和な都心の一区画でいきなり襲われるだなんて。
俺は信じていたよ。
山の暮らしから離れて、息子は都会の大学へ通いに行った。
「都会でBIGになって母さんに贅沢させてやりたいんだ」なんて言って、ほんとは都会に出たいだけだったんじゃないのか~?
夫と二人、子供も出来ず慎ましく暮らしていたら四十路になって突然産まれやがった、
って程突然じゃないが、それでも急に吐き気を催して、心配無ぇって何度言っても聞かねえ夫に押される様に病院に向かったら、何故か産婦人科に回されてな。
そんで聞かされたのが妊娠だと!?ほんげー!!
そん時分はもう混乱した。夫も混乱したし近所の竹ちゃん鈴ちゃん拓やんもぶったまげてた。だろうよ!
不倫か? なんて話も出たが、あんなババアを相手にする奴なんぞいないって話が出て直ぐに終わったらしい。シメるぞ。
周りが混乱しながらも何かと助けてくれたお陰もあって、息子はすくすくと育った。
わんぱくでも良いから逞しく育ってくれれば良かったのに、私に似て元気で、───私に似ず頭も良くて優しい子に育った。
名前は夫が考えた。助広 広く色んな人を助けられる優しい子に育って欲しいって願いを込めたんだと。(本当は育児でてんてこ舞いだった自分を助けて欲しいって気持ちから考えたんじゃないのか?ん?)
今日上京したのは息子がサボってないかこっそり確認する為だ。
あの子が勉強をサボるなんざ考えちゃいないが、どんな奴もサボりたくなる時は有るもんだからね。
もしサボってたらケツでもひっぱたいてやろうと、その為だけに来た筈なんだがね。
アイツの下宿先に着いたら何かテキトーに置いてくかと昨晩荷物を作って、今朝見たらすげえデカさになってた。おかしいな……少な目に詰めた筈なんだが。
電車を乗り継ぐまでは良かったんだが最寄り駅に着いたら疲れが出ちまって、仕方なくアイツの下宿に荷物を……米とかキャベツとかじゃがいもとか竹ちゃんが浸けたお新香とか急に寒くなったらいけねえからカイロとか急に暑くなったらいけねえから水枕、急に道具が壊れて飯を作れなくなったらいけねえから料理道具それにアイツの好きなチョコレイトとか色々寮母に預けてきた。
さて、後は助広の顔見て帰るだけだ。
元気にやってるかね、あの子は。
ベリーメロン。特に意味は無い。