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第14話 アツアツ天狗焼

 今日はいつもより少しゆっくり。 それでも休日にしては早起きして、お弁当をせっせと作った。

 卵焼きはダシがきいててほんのり甘め。 いつもお弁当は唐揚げとか食べてるから、鶏肉は好きなはず。 でもそのままだといつもと同じになっちゃうから、小さめに刻んでナゲットに。

 あとは、アスパラと……。 あ、レンコンもある。 それに、人参とトマトがあれば彩りも大丈夫。


 よし、お弁当はこんなものかな。 今度は着替え。 今日は動きやすさ最優先で、大きめのサングラスなら普段の眼鏡とも印象は違うでしょ。 髪は……今日はお団子かな。

 あとはキャラだよね。 テレビ用、テレビ用。 ちょっとボケた感じ、と。 それと、呼び方。今日は菊野くんじゃなくて大地。 大地、大地、大地。 よし。


 準備オッケー! いざ出発!


 同じ駅であることが一番バレちゃいけない、ってことで約束よりも20分くらい早く着く電車に乗った。 これなら同じ電車ってことはないはず。

 早々に高尾山口に着いて、駅のベンチに腰を下ろした。

 背中にのしかかっている重いリュックもベンチに下ろしてしばしの休息。 予想したよりも電車が混んでて座れなかったのは誤算だった。

 十分ほど経って、次の電車がホームに滑り込んできた。 約束に間に合うように来るならこれか、次だ。 ああ見えて律儀な大地はきっとこの電車だと思う。


 この予想はビンゴで、あまり似つかわしくない水色のリュックを背負った大地が降りてきて、階段に向かって歩いている。


「おっはよ~♪ 」

「おう、久しぶり」


 久しぶり? そっか! 久しぶりだよね。 あたし毎日会ってるから気づかなかった。

 感覚のギャップに面食らっていたら、次の言葉にもっと面食らった。


「転ばなかったか? 」

「いきなりこども扱いっ!? 」


 ってか転ばないし!

 そんなにおっちょこちょいキャラじゃないんだから。 大地の中でどんなキャラになってんのよ。


「さっ、行こうよ♪ 」


 ちょっぴり不満に感じつつも、気を取り直して山に向かおう。 気合い入れてお弁当も作ってきたしね!


 ――あたっ!?


「ほぇ? 」


 あたしの気合いは改札機によって見事に打ち砕かれたのでしたとさ。

 ICカードに精算機でチャージして改札まで戻ってきたら、大地はニヤニヤして待っていた。 「やっぱりおっちょこちょいじゃないか」と言わんばかりの顔で。


 くっ、くやしいぃ〜! そのドヤ顔、崩してやるんだから!






「なんで山登りなんだ? 」

「今度ロケで高尾山に来る予定があって、できれば下見がしたいなーって思ってたの 」


 そう、ロケの下見。 別にデートってわけじゃないのよ。


「そんなの友達と行けばいいだろ。 なんで俺なんだ 」

「だって頼めそうな男友達なんていないもの。 女友達だけだとナンパとか鬱陶しいし。 大地なら優しいし、男除けになるし♪ 」


 そもそも他に思いつかなかったんだもの。 仕方ないじゃない。 いまだにあたしの個人スマホには大地しか男性の連絡先は入ってない。


 大地も高尾山は来たことがなかったのか、キョロキョロと辺りを見回していた。


「食レポとかするの? 」

「そうなの・・・。正直言って自信なくって」


 食事の感想だけなら多分レポートできる。 舌だってお母さんのおかげでそんなにバカじゃないはず。

 問題は、千春のキャラに求められていること。 これがすこぶる難しい。 きっとナツの方がこういうのうまくこなしそう。


「それじゃ今日は下見がてら練習だな。 ほれ、さっそくこれでやろう」


 大地はすぐ近くにあったお店て、天狗焼というお菓子を買ってきた。 中は黒豆のあんがぎっしりと詰まっている。

 どんな感じでコメントしよう。 大地がどんな反応するかしっかり見てないとね。


「ほれは、ははひふほはんははひっへ」

「食べながら喋るな! 」


 これは面白そう。 下品にならない程度なら使えるかも。 ふむ。


 しかし、この天狗焼美味しい! 小豆と違って粒の食感が残っている。 甘さも少し控えめで男の人が好きそう。 皮もパリっとしたところと、しっとりふんわりしたところがあって、食べた場所によって食感が変わるのがおもしろい。


 だけど、これじゃテレビ的には違うんだよね。 ……となると。


「とっても熱いです」

「小学生の感想か」

「噛むとあんが甘いです」

「だろうな」


 これだとおバカすぎる。 加減が難しいよ!


「ぅぅ」


 それにしても間髪入れずにツッコミを入れる大地も瞬発力あるよね。 コメントさせてみようっと。


「大地もどうぞ? 」


 いいのか?って顔をしつつも、パクっとかじりついた大地のコメントを待つ。


「これって、小豆のあんこと違って、食感が結構しっかりしてるのな」

「それいただき! 」


 あたしも思ったけど!

 そういえば、お金払ってなかった。


「ねえ、大地、お金は? 」

「ん? あ? 何? 」


 話聞いてないのっ!? もう!


「お金は? って聞いてんのー」

「おごりだよ。 ほら、登ろうぜ」

「いいの? ありがとっ」



 嬉しくなって顔がほころんじゃった。

 まずはここからケーブルカーに乗って中腹へ。 ホントにお手軽登山って感じだね。



 それではレッツゴー!

ケーブルカーに乗る前に天狗焼食べてますが、実際の高尾山ではケーブルカーを乗った先に売っています。

実際に高尾山行ってみよう、食べてみようという方はご注意ください。

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