ゼーレフォン沖海戦
翌日、兵士達の顔が暗い。無理も無い、英雄クローディアが病に倒れた挙句、敵の大軍が来るのだから。
「皆どうした。元気出せ!」
リオネンはいつもどうりに兵士達に振舞うが・・・。
「しかしリオネン様。クローディア様を欠いた我が軍では・・・。」
「何を弱気になってる?そんな姿、クローディアに見られてみろ。徹底的に叩かれるぞ。」
「・・・。・・・。」
「あたし達は勝たないといけない!そして奴等の脳裏に刻み込むんだ、クローディアが居なくとも公国に勝つことはできない、とな。」
塞ぎこんでいた兵士達が立ち上がる。後は渾身の一言を言い放つのみ。
「勝つぞー!!!」
「「「おおおおおぉぉぉぉぉ!!!」」」
正午・・・。
「敵艦隊来襲!」
「遂に来たか!?」
ボウドアス帝国の船団約50隻、陸戦隊はおよそ10万に達するもの思われた。
士気が回復したとは言え、5倍のも兵力差を覆すことは容易ではない。
「クローディア、見ていてくれ・・・。」
だがリオネンは親友のため、愛すべき祖国を守る為、覚悟を決めた。
敵を上陸地点ギリギリまで引きつけマスケット銃と大砲の一斉射で打撃を与える水際作戦に加え、上陸後はゼーレフォン市内の建物に立て籠もるゲリラ戦で耐え、首都ゼーベルムートからの援軍をもって敵軍を海上にたたき出す。今のジュッシュ軍にはこれが最善の作戦であった。
しかし・・・。
「・・・?何だアレは?」
リオネンの目にボルドアス艦隊の遥かかなたから飛来する深緑の箱が三つ映った。
第1護衛隊群旗艦「いずも」CIC内
「何とか攻撃前に追いつきましたが、それでも時間の問題でしょう。」
「事態は急を要する。ヘリ部隊で先制攻撃、次いで護衛艦の砲撃で沈めましょう。」
「良いだろう。全艦に通達、戦闘用意。」
発令と同時に三機の「AH-1Sコブラ」がいずもから発艦した。
コブラ三機はボルドアス艦隊を横断し町の上空で旋回し一気に距離を詰めた。
「我友軍。これよりボルドアス艦隊への攻撃に移る。」
町の守備隊に理解できるかどうかは分からないが、ボルドアス艦隊を殲滅した後で敵とみなされるわけにはいかない。
「全機射撃開始!」
一機あたり38発のロケット弾が発射された。無誘導のロケット弾であっても密集状態の船団には非常に有効で、30隻が撃沈10隻が炎上という戦果をあげた。
ボルドアス装甲戦列艦ガウガメロン
デュリアン提督は自分の艦隊に何が起こったのかわからなかった。突如現れた空飛ぶ箱に艦隊の80%を無力化させられたなんて誰が信じようか・・・。だが、原因が何であれ、彼の艦隊は壊滅的損害を被ったという現状が眼下に広がっていた。
「撤退せよ・・・。」
これは、後でどんな罰が待っていたとしても彼に取れる最善の命令であった。
第1護衛隊群所属 ミサイル護衛艦「こんごう」
「敵船、単横陣で向かって来ます。」
「左から順に撃つ。各艦撃ち方よおぉぉい!」
127mmと76mmの両速射砲が一門あたり一隻になるように狙いを定める。
ガウガメロン上甲板
「何だあの船は?友軍か?」
巨大な灰色の船7隻が、横一線となって迫ってくる。
すると全ての船に付いている細長い棒が動き、煙を噴き出す。
「何をしているのだ?」
率直な疑問を持った瞬間・・・。
バババババババゴォォォォン
ガウガメロンの右隣のフリゲート7隻が爆発した。
「まさか砲撃!?ありえん10km以上離れているんだぞ!?!?」
今度は三つの煙が上がる
「!!船を捨て―」
バッゴォォォン
ガウガメロン撃沈、残る2隻の戦列艦もガウガメロンの後を追うように沈んだ。
ミサイル護衛艦こんごう
「敵船全て撃沈しました。」
「うむ。・・・。漂流者は千人程度か。フカ(鮫)に襲われる前に救助せよ。」
「ですが艦長、漂流者は余りにも多過ぎます。全員収容できるか・・・。」
「状況は、駆逐艦「雷」の時より遥かにましだが?」
「・・・、分かりました。最低限の人員を残し、残りは全員救助に向かわせます!「海の武士道」に恥じ
ぬ働きを見せましょう!」
駆逐艦雷と海の武士道・・・スラバヤ沖海戦で漂流した連合軍将兵442人を雷の工藤艦長は独断で救出。無抵抗のものを殺めない武士道の教えを貫いたのだ。
勿論、その時とは明らかに状況は異なり、むしろ好都合なほどであった。こんごう以下7隻の護衛艦はボルドアス将兵千人を余すことなく救出、その中にはデュリアン提督も含まれていた。
ゼーレフォン沖海戦(前哨戦も含める)
日本
・損害なし
ジュッシュ公国
・西方艦隊:全滅
ボルドアス帝国
・艦隊:全滅
・捕虜:デュリアン提督以下5000