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ミトスター・ユベリーン  作者: カズナダ
第5章 転移紀
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交渉2

 夜、クインテッサホテル佐世保に着いたシガラーと彼の部下は、資料作成に追われていた。と言っても、会談のための資料を作っているのは部下で、シガラー本人は本国への報告書を作っていた。


 その中にはシガラー自信が目で、耳で、肌で感じたことが事細かく綴られていた。


『本国を出港して一ヵ月半。遂に新興国との接触に成功した。かの国はニホンと言うことだ。


 彼らはまず、純白で海軍の駆逐艦より50mほど小柄な船2隻で港まで誘導。その後は着眼地点までをタグボートに託す。


 出迎えは極少数であったが、事前通告なしの来航であった為致し方ないとしたが、出迎えた者達は軍人であったがのその者達の礼は一糸乱れぬ見事なもので感動すら覚えるものであった。


 上陸した地点はサセボと呼ばれる港町のはずれであったが、それでも街の中心部はベルマギーアに匹敵するぐらいに発展していた。このことから分かることは、ニホンは聖皇国より経済力、技術力で上回っていることになる。建物は目測でも高さ30mを超え、街を行き来する一般人の眼はとても煌びやかで、聖皇国民と同じく自国が衰退するなど夢にも思っていない様に見えた。


 技術力に関しては、私を上陸地点から会談場まで運んでくれた車を例にするならば、まず揺れが極端に少ないこと。舗装道路ならともかく、山道でさえ同様にスラスラと駆け抜ける。それは恐らく優秀なサスペンションが成せる技であろう。それに加え、運転手はクラッチを操作している様子はない。ギア変更は手動と言うのが我々の常識であるが、ニホンはそれの遥か上を行く技術があるようだ。


 軍事力に関しては、規模こそ不明であるが士気の面では我が軍を越えている。訳としては前述の通りだ。服装、各々の配置、礼の角度、挙動にかける時間・・・。全て定められた物の通りに動いている。閑散とした場所に配置された警備隊ですら高い士気が保てている。これが旅団や師団、さらには軍団にまで拡大すれば・・・。想像するだけでも我が身が震えだす。』


 日記調で書かれている報告書であった。だがその内容は短絡的に言えば「ニホンの国力は聖皇国より強大である。」と言うことだ。そう考えれば出迎えの者達がさほど動じなかったのにも納得がいく。だがそうなるとニホンが一体どうやって聖皇国の事を知り得たのかが気になるところである。


「シガラー様、こちらは大方終わりました。後は翌早朝でも問題ありません。」


「ご苦労。」


 長旅の疲れの中資料の作成に奔走してくれた部下には惜しみない感謝を示す。


 そしてたまたま宿泊部屋に有ったニホンの地図を広げる。


「ここがニホンの首都でしょう。」


 部下が指差したのは地図の中で唯一星印がつけられている場所であった。


「(『東京』?読めんな。)」


「上陸したと思われる場所までの距離は大よそ1200km。移動には3日掛かりそうなのに、会談が明日とは・・・。」


 ニホンの時間配分に部下は困惑するが、シガラーはいたって冷静に・・・。


「陸路なら・・・な。だが空ならどうだ?」


 現実的な目測を立てた。


「空ですか?」


 シガラーは窓の外、それも斜め上を指差した。


 その方向に目を向けた部下の目に映ったのは緑と赤の点滅に挟まれた光点であった。


「アレは恐らく航空機だ。」


「航空機?夜間でも飛行できるのですか?」


 ヨル聖皇国では夜間飛行は昼間飛行に比べ危険性が段違いに上がるため、空軍の訓練を除き禁止にしている。だがシガラーの予測では現在自分たちの上を飛んでいるのは軍用機ではなく民間機であると。


「軍の物でもないのに夜間に飛行できる・・・。私には何が何やら・・・。」


「この国には我々の常識は通用しない。今のうちに捨てておけ。」


 シガラーは聖皇国のみならず各列強の官僚と違い変質者扱いされていた。だが逆に言えばどんなことにも柔軟に対応が出来ると才能が有り、それをヘッケラーに買われ若干30代にして外務大臣に任命された。


 行動力も高いが、その高さが災いし大体の会議は欠席している。なので彼は今回のニホンとの会談は4月に開催される世界会議にも欠席するほど長引かせることも想定していた。


「まぁ・・・。色々疑問に思うところだが、今は寝よう。」


「・・・。」


「なぁに、心配するな。明日全部分かることだ。」


 資料を片付け、部屋の明かりを消し、シガラーと部下は深い眠りに付いた。

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