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ミトスター・ユベリーン  作者: カズナダ
第5章 転移紀
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サデウミス油田

 タンタルス大陸北岸 イリオス王国 トガフロー海岸・・・。

 万が一のギル王国陸軍の上陸に備え、陸上自衛隊第12旅団を中核とする『タンタルス諸国連合軍』約5万が警戒に当たっていた。


内訳

 陸上自衛隊:2,000

 ジュッシュ軍:10,000

 バロダイレ軍:11,000

 イリオス軍:8,000

 マゴニア軍:5,000

 タモアン軍:5,000

 アストラン軍:9,000


 総司令官には第12旅団長 鳥居1等陸佐が起用され、防衛計画を宿舎のテント内で議論していた。


 軍縮の流れにあるタンタルス各国は退役間もない予備軍を召集して数をそろえたが、それも直ぐに無駄だったと知る。


「旅団長!」


 通信員がテント内に入ってきた。


「サンジェロワから電報が入りました!」


「読め。」


「はっ!」


 内容は、第4潜水隊の雷撃、護衛艦及びF-2戦闘機による対艦ミサイルの波状攻撃で、南下してきたギル艦隊を全滅させたというものであった。


 鳥居は大きく息を吐いて緊張を解いたが、一部の軍団指令は不満を爆発させた。無理も無い。敵の大軍との陸戦に備え援軍として派遣されたのに、戦わずして本国に帰るのだから。


「ふざけるな!我等は日本がどうしてもと言うので、援軍としてはせ参じたのだ!それが無駄に物資を消費しただけで終わっては本国に何と説明したら良いのだ!?」


 イリオス軍指令の意見に「そーだ!そーだ!!」とばかりにマゴニア軍とタモアン軍の司令官も頷く。

だが、自衛隊の実力を知るジュッシュ、バロダイレ、アストランの軍団指令に、物資は失ったが同胞の命は失われなかったと諌められ、後日日本が謝礼として消費した物資の1,5倍の金銭を払うことになった。


 タンタルス大陸南部 ユークノトス半島東岸 ガツゥバロー海岸・・・。

 近くに日本の大規模油田施設があり、絶対防衛拠点と言うことで施設内を特戦群、その周囲を第7師団が防衛していたが、こちらには諸国連合軍は参戦していない。


 そして、ここにも第12旅団と同じ電報が届いた。


「よーし。撤収するぞ。」


 秋山陸将は直ぐに師団を引き上げた。


 だが、油田施設には僅かな異変が起きていた。


 サデウミス油田 管理棟地下2階・・・。

「・・・これか?」


 上に向けてあるトグロスイッチの一つを下に下げる。すると一瞬で室内が暗闇に包まれた。


 施設は主に『管理区画』『油水分離区画』『分留区画』『採掘区画』に分けられ、連隊直轄の10名が管理区画、残る90名は30名1個中隊を編成し他の区画の警備に当たっていた。


 1階の会議室には特戦群の司令室が置かれていたが、突然停電になる。


Sシエラ5!誰が切れと言った!?」


「<自分ではありません!>」


 神宮寺は部下が勝手な事をしたのかと思い、発電室付近を警戒中の隊員を怒鳴ったが違ったみたいだ。


「ならサッサと付けてこい。」


「<S5了解。>」


 管理棟の地下2階には発電室があり、常用電源から補助電源への手動切り替えや大元の電源の切断などはここで行っていた。


 電源設備の前まで来た。

 特に破損箇所は見当たらなく、電源を入れなおした。


「01、01。こちらS5。設備に以上無し。スイッチが落ちていただ-っ!?」


 報告の途中、背後に気配を察知し振り向き様に小銃を構える。ここには一人しか居ないので他に居るのは電源を切った犯人であることは想像に固くない。しかし自衛隊の中でも精鋭の特戦群の隊員が犯人の顔を見ることは無かった。


「うっ!?」


 口を押さえられ首筋から冷たいものが体内に侵入し、体内の血液が一気に体外に流出する。隊員はわずか数秒で失血死した。


 だが、通信機が開通状態になっていたことが幸いしたか、神宮寺はこの事態を施設全域放送で伝えた。


「各員に達する!管理棟地下2階で緊急事態発生!班ごとに終結の後急行せよ!」


 無論その放送は侵入者にも聞かれていた。


「さすが精強と言ったところか。気配を感じられたか。」


 施設に侵入し電源を遮断し、隊員を刺殺したのは・・・。


「ここを破壊すれば日本は我が王国には勝てない・・・。決して。」


 ギル王国諜報員ミランダであった。


 自衛隊から逃走し、山岳部に潜伏中に自衛隊の戦車隊が南に向かって行くのを確認し追跡。一般人なら1ヶ月は掛かる道のりを、脅威の身体能力を以って僅か2週間で走破し、このサデウミス油田に辿り着いた。


 サデウミス油田は日本唯一の石油産出地で、これを叩けば日本の軍艦などはたちまち動けなくなる。ミランダは油田への破壊工作を開始した。


 刺殺した兵士の遺体を漁っても爆発物は所持していなかった。


 当然と言えばそれまでで、王国では銃火器の携行すらない油田警備隊も居るぐらいなのだから。銃火器を携行しなければならないほどこの油田は重要なのか、それとも銃火器の携行が出来る程頑丈に造られているのか。どちらにせよ相当重要は油田には違いなかった。


 そこに階段の方からガンガンと足音を立てながら自衛隊が近づいて来る。数にして6~12人。


 一方通行な上階段はもう使えない。となれば使える手段は一つ。


「こちらZズール第2分隊、現場に到着。送れ。」


「<まだ敵が潜んでいるかもしれない。注意して捜索せよ。送れ。>」


「了解。アウト。」


 懐中電灯を付け奥へと進む。


 電源設備の前で隊員の遺体を発見、その隣にはダクトの格子が落ちていた。


「死亡した隊員を発見。侵入者はダクト内を通って移動したと思われる。送れ。」


 管理棟1階 会議室・・・。

 パソコンのツインモニターとなっているディスプレイには全隊員の位置情報を棟内の見取り図に重ねた映像と定期的に変わる監視カメラの映像が映っていた。


 だが、ダクト内を移動しているとなると監視カメラには降りて来たところを偶然捉える役目しかなくなる。なので、ほとんどの部分は隊員の目で確認して貰うしかなくなる。


「すべての扉を閉鎖しXエクスレイは屋外の監視に当たれ。」


 管理区画から最も遠い採掘区画を警備していた第3中隊を屋外に配置し、第1・第2中隊は地下1階と地上1階に配置し、網を張った。


 しかし・・・。


 ガシャン


「んっ!?」


 侵入者は思いもよらない場所に現れた。

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