事件終幕
「伏せろぉおおっ!」
発砲を受け、陸自隊員たちは車両の影や地面に身を隠したが・・・。
「飛田隊員即死!!」
一人が銃弾を頭部に受け即死、他数十人が重軽傷を負った。
「敵勢発砲!」
「各車、多目的榴弾装填!」
「・・・・・・、装填よし!」
「正当防衛射撃、目標敵陣の最外皮、多目的榴弾っ撃てぇええ!」
10式・74式から放たれた榴弾は半円状に展開する敵陣の最も外側の陣を多数粉砕すると共に、敵兵数千が戦死した。
「・・・・・・。」
海岸の砂、組み上げた家具の破片、爆発が起きるまで兵士だったもの肉片が空高く舞い上がり、雨の様に降り注ぎ、ヴァルサルの戦意は脆くも打ち砕かれた。背後には海、残る三方は敵に囲まれ文字どうりの「背水の陣」であったが、たった4発の砲弾で七千近くの兵を失った。
「これ以上の抵抗は無駄だな・・・。」
ヴァルサルはゆっくりと敵軍の方へ歩き出した。
「隊長、何を?」
「お前等は大人しくしていろ。俺に悪魔の片棒を担がせるなよ。」
ヴァルサルの背を見つめる兵の中には泣き崩れる者も居た。
その様子は自衛隊員たちも確認した。
「敵兵が一人、こちらに来ます。」
「大将か?」
大将と思わしき者は100mほど離れた地点で足を止めた。
「私はボルドアス帝国海軍第4陸戦隊長ヴァルサル!貴軍の大将と話がしたい!」
陸自もSATもこれには戸惑う。様か、攻め込んできた敵が日本語を話しているのだから。
「陸将、どうしましょう?」
「どうするも、行くしかないだろう。」
陸上自衛隊、鎌田第1師団長が全軍を代表して話す事になった。
前線に出ると、そこにはヴァルサルと名乗る男が自軍と敵陣のほぼ中間に立っていた。
「私一人で良い。」
「そんな、危険です!」
「彼はそんな危険地帯に一人で居るが?」
付き添いの准将はそれ以上何も言わなかった。
一人の男が歩いてくる。その服装は緑と茶色を基調とした斑模様で、とても大将とは思えない。男はヴァルサルの目の前で止まった。
「日本国陸上自衛隊第1師団長、鎌田陸将である。」
「こんな奴が大将なわけない、と思っていたが、見事にはずれたわけか。」
「話し合いと言っていたが、まさか抗戦意思を伝えに来たのか?」
「そんな事言う訳ない。私から言えることは唯一つ。」
「・・・。」
「私はどうなってもかまんが、生き残りの三千人はどうか助けてもらいたい!」
「貴方の気持ちは充分尊重したいが、それは、我が国の司法が決める事だ。私には何の権限も与えられていないのだ。」
「そうか・・・。」
「だが貴方ほど優秀な指揮官ならどうすれば良いか分かっているのであろう?」
「まあな。」
ヴァルサルは自陣の方を向き・・・。
「皆っ!武器と陣を捨てこっちに来い!」
鎌田もまた自軍のほうを向き・・・。
「彼らを連行せよ。」
こうして事件は現場から法廷に移った。
九十九里事件
日本
・死者:1000
・重軽傷:800
ボルドアス
・艦隊:全滅
・死者:ベルテクス提督以下20000
・捕虜:ヴァルサル以下3000
ひとまずはこの回で序章は終わり、次章からベルテクス達が言っていた「ジュッシュ公国」が主な舞台となります。