参考
西暦2026年、転移紀元年・・・。
転移後の混乱も終息に向かい、食料や石油等の日本に必要不可欠な物資の輸入も安定してきた。
そして、この世界で生き残る為には、この世界の有力国と対等な国交を結び、一通りの国に顔を利かせるのが一番であった。また、人工衛星の軌道投入に成功し、稼動を待って独自にこの惑星の調査を行っている。
しかし、国内から反対意見が最も多く上がったのが、『防衛予算の増額』であった。ジュッシュ公国を含め、タンタルス大陸の国々は軍縮に向かっているが日本はその逆で、拡大が進められていた。
計画では、ボルドアス戦争で得た教訓から、『長距離』『高速』『多用途』を三本柱とすることとなっている。
だが、それを効率的に両立できるのはアメリカの『ジェラルド・R・フォード級航空母艦』に匹敵する大型空母の建造が求めらた。
「東京タワーと同じ長さの空母を造るなど、世論は黙ってないな。」
「ですが、現場の隊員の生命を考えますと、これは必要です。この世界の国全てがジュッシュ公国の様な友好的な国とも限りませんし、ボルドアス帝国のように問答無用で撃ってくる国があるぐらいですから、この世界の覇権争いの波に呑み込まれないようにするには空母は必要です。」
「一隻あたり5000人のクルーが必要なんだぞ?」
「建造に10年を想定にており、人員はその期間に在日米軍の協力の下、艦載機の搭乗員を育成します。」
艦載機は『B7A3流星』や『A-1スカイレーダー』等の二次大戦中のレシプロ機が参考にされた。ジェット機でないのは、翼下に大量のロケットや爆弾を搭載でき、翼中には20mm機関砲が複数、固定武器として内蔵されているので、近接航空支援が効果的に行えるたかだ。
海上自衛隊には空母部隊が新設され、陸上自衛隊にはボルドアス戦争で鹵獲した『AK-74』や『MI-24Vハインド』を参考にした新装備、航空自衛隊には『F-22』や『F-35』、『F-3心神』をベースとした新型ステルス機に加え、『P-47』『A-10』を参考とした近接航空支援機の研究・開発が平行して行われる事となった。
ジュッシュ公国 サンジェロワ航空基地・・・。
この基地は航空自衛隊が管理するが、駐屯地も兼ねているので陸上自衛隊の一個旅団が駐屯していた。だが、配備された装備は『F-4EJ改』『74式戦車』など、退役を間近に迫ったロートル兵器のオンパレードであった。
「62式・・・。まだ現物が残っていたのか・・・。」
62式軽機関銃・・・。戦後初の国産火器であったが、信頼性の低さから、『言う事機関銃』『無い方がマシンガン』とまで言われる有様であった。背広組みも制服組もこの銃に関しては、満場一致で『廃棄しても困らない』と言うことで、当然のようにこの基地に捨てられた。
「どうしましょうか?」
「ハインドの傍にでも置いておけ。それと、今後その銃には絶対に触るなよ!!」
以後この基地は、ファンの間では『宝箱』、現役自衛官からは『ゴミ捨て場』と言われる様になる。
ゼーベルムート ルフト宅・・・。
ジュッシュ公国を含め、タンタルス大陸の各国は、経済成長を活性化させるため、軍隊の予算を大幅に削減し、資金と人員を確保した。
その流れのままに、クローディアは自身が団長を勤めるクレー騎士団を親友のリオネンに任せ引退、民事的にでない別の方法で公国を支えたかったからだ。
「・・・。よ~し、こんなところかな。」
家中に日本語とジュッシュ語で書かれた書物が散乱している。日本の本から、何か広告の為になることは無いかと思い、神宮寺や西村に頼んで取り寄せてもらったものであったが、翻訳作業に手間取るあまりほとんど読めていない状態であった。
「ただいま~。・・・ん!?クローディア!!」
ルフトが帰ってくるなり怒鳴る。無理も無い、安らぎの場が訳分からない本でごった返しているのだから。
「ああ、お姉ちゃん。お帰り~。」
部屋から顔だけ出して何気ない感じで返事をする。
「お帰りじゃないだろ!?何だよこの本の量は!?」
なんとか足場を見つけ、ルフトはクローディアの傍まで来れた。
「日本語?」
「日本から学ぶ事は沢山あるからね。けど、まずは日本語を理解する事から始めないとね。ほら!」
喜々とした表情でルフトに見せたのは日本の五十音表とジュッシュ語で書かれた五十音表であった。
「これで基礎中の基礎が出来上がったんだ!」
「凄いじゃないか!けどなクローディア?」
「何?」
「だからって、家を散らかしていい理由にはならないぞ?」
「えっ、えぇと~。」
突如汗が溢れ出す。
「サッサと片付けろー!!」
鬼の形相で迫ってきた。
「ごっ、ごめんなさーい!」