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ミトスター・ユベリーン  作者: カズナダ
第4章 激突
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滅亡と誕生、そして終戦

 ボルドロイゼン・・・。

 ガムランは一足早く戦場から離脱し、手勢1万と共に帝都に着いたが、そこで見聞きしたものは彼を失意のどん底に突き落とす物であった。


「どうなっているんだ!?」


 帝都の門は硬く閉じられ、城壁にはボルドアスの海軍旗が所狭しと掲げられていた。そして、ガムランたちの前に姿を現したのは、戦死したはずのデュリアンであった。


「これはどう言うつもりだ!?」


「王女は貴様に失望した。『陸軍総帥の権限を与えるべきではなかった』とな。」


「戯言をぬかすな!!」


「ならば、王女御本人から聴くが良い。」


 デュリアンが右に逸れると後ろから一人の少女が現れた。その人物こそ、ガムランが連れ攫われたと思い込んでいたリーエンフィール=ボルドアンであった。


「でっ殿下!?」


 ガムラン含め全員が動揺する。


「ガムラン、私が居ない間に随分と好き勝手やってくれていたみたいねぇ?」


「こっこれは・・・、殿下をお助けする為に-」


「私はこの通り何とも無いけどぉ?それに随分と陸軍の数を減らしてくれたわねぇ?今ではデュリアンの海軍3万しか残ってないし。ほぉんと、どうしてくれよう?」


 ベルナールを粛清した時を同じ顔をガムランに向ける。


 周囲に潜伏していたデュリアンの部下達が飛び出しガムランたちを取り囲む。


 そして、リーエンフィールが一言呟く。


「デュリアン、やれ。」


「放てーーっ!!」


 パパパパッパパパパパッパパパパッパパパ


 ガムランは数百発の銃弾を浴び、地に伏した。


 ガムランの死後、軍事力の殆どを失ったボルドアス帝国は、バロダイレ共和国に吸収される形で滅亡し、バロダイレ共和国が日本、ジュッシュ、アストランと講和を行う事となった。


 ボルドロイゼン 旧枢密院・・・。

 講和と言っても、ジュッシュ公国のシュヴァーベン公王以外、日本が用意していた『台本』通りに進めていた。その内容は・・・。

1、バロダイレ共和国は、旧ボルドアス帝国が併合した国々を解放し、独立を認める。

2、日本国、ジュッシュ公国並びに、圧制を強いていた属国各国に対し、賠償金を支払う。

3、軍隊は自国防衛可能な最低限の所有のみ認める。

4、ボルドアス第1王女リーエンフィール=ボルドアンは国家の全権をバロダイレ共和国人民に委託し、自らはバロダイレの象徴として、立法・行政・司法にいかなる干渉を禁じる。


 シュヴァーベンは終始不満気ではあったが、講和は問題なく成立した。


 ギル=キピャーチペンデ王国・・・。

 薄暗い部屋でギル=キピャーチペンデ国王『ギル=シンボラー』が外交省の者と密会を思わす雰囲気と漂わせていた。


「国王陛下、ボルドアス帝国が滅びました。」


「主犯は何処の国か?」


「ニホン国なる国にございます。」


「なら、貴公はこの国をどう見る?」


「非常に危険な国家です。野放しにしておくわけにはいきません。」


「であるなら、戦か?勝算はあるのか?タンタルス最強のボルドアスに勝ったのであろう?」


「タンタルスほどの大陸に、ボルドアス程度の国力を持つ国などいくらでも居ます。ボルドアスを打ち負かしたところで、王国には敵いません。」


「侮るでないぞ。苦悩の末ようやく7列強の序列5位の座に就いたのだ。決して滅ぼすでないぞ。」


「御心ままに。」


 ギル=キピャーチペンデ王国はボルドアス帝国が滅亡して初めて日本と言う国の存在を認識し、まずは小手調べとして外交官の派遣が決定した。その結果次第では、周辺の国と同様に扱うつもりだった。


 数ヵ月後 ジュッシュ公国 サンジェロワ・・・。

 ゼーベルムートの南西20kmに位置するこの土地は、穀倉地にも放牧地にも適さず、破棄していたこの土地に、自衛隊が建設した軍民併用の『サンジェロワ国際空港兼航空基地』が開通。それまでの船舶往来とは段違いの物資や、人の往来が可能となり、ジュッシュ公国に『観光業』と言う新たな収入源がもたらされた。また、ゼーベルムートで撃墜したハインドの残骸もここに保管されていた。


 そして、空港の基地事務所側をとある珍客が訪れた。


「指令、ロシア軍が来ます。数は約1000人。白旗を揚げています。」


 突然、ロシア軍がやって来た。あまりのことに基地指令の真木空将も戸惑いを隠せない。


「・・・。」


「いかがいたしますか?追い返すわけにも・・・。」


「そうだな。恐らく不本意ながら我等を頼ったのであろう。敵同士に成ったとは言え、一番良く知っている相手だからな。」


 ゲートを開け基地内に通すが、その姿に覇気は感じられない。皆一様に痩せ細り衰弱していた。まるで敗残兵だ。


「水と食べ物を。」


「はっ!」


 『アーメン』と言い終えれば、ガツガツと口にほお張る。3000食あった料理は直ぐになくなった。


 そして、指揮官のみ司令室に呼び出される。


 司令室・・・。

「航空自衛隊の真木空将です。」


「イトゥルップ島(択捉島)隊指令ホロゴロフスキー少将です。」


「何故いきなり自衛隊に攻撃を仕掛けた?」


 当事者として当然の質問であった。


「我々の部隊は貴国と共にこの世界に転移し本国から切り離されました。

 我々の部隊は食料や飲料水を本国からの配給に頼っていました。しかし、転移後はそんなことは出来ず迷った結果、日本に救援を求める事にしましたが、日本が食料の消費と供給に制限をかけました。

 それにより食糧問題は加速し強硬手段に打って出る以外なくなった。」


 日本国政府は確かに国民と在日米軍への食糧消費の制限を宣言していたが、これにより物価が急上昇しされなる混乱を招いた。その対応に必死になるあまり、ロシア軍のことは気にも留めていなかった。


 その結果、ロシア軍は一時期北海道への侵攻も計画していたが、離島に派遣された部隊が北方方面隊に敵うわけないので頓挫した。次に考えであされたのは新たな土地への進出であった。


「まずは大陸の最も有力な国に協力し対価として土地を貰う。その後、その国の隙を突き実験を掌握し大陸その物を手に入れる。

 そこに、『新たなロシア』を建国し、事によっては日本に宣戦した。誤算だったのは自衛隊が協力した国の敵国に手を貸していたことだ。」


 ロシア軍は軍事的にも外交的にも敗北して、大陸全土と路頭に暮れていた。兵士達の間に限界を訴える者が続出したので、兵達をこれ以上苦しめるわけにもいかないので、自衛隊に助けを求めたのだ。


 その後、ロシア軍は全員武装解除の上、日本に移送される事になった。


 ジュッシュ公国はボルドロイゼンでの講和で対ボルドアス戦争は終結したが、日本はこのロシア軍の降伏で対ボルドアス戦争が終わりを迎えたのである。

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