決戦 ラブングル街道4
ブルフ平原 ボルドアス司令部・・・。
ガムランの耳に驚くべき知らせが届く。
「何っ!?あの飛行機械が落とされた!?」
帝都を襲撃した日本軍を意図も簡単に蹴散らしたハインドが落とされた。勝利を確信したガムランの胸中にあった『大陸統一の野望』の火が冷め切った。
「何故だ・・・!?何故・・・!?」
「<ハインドが落とされた・・・。もう勝ち目は無いな。>」
一緒に居たロシア軍の司令官『ホロゴロフスキー少将』はこの地域での主導権は完全に連合軍に傾いたと判断、一足先に帝都ボルドロイゼンに撤退しようとしたが・・・。
「待てっ!!貴様等何処に行くつもりだ!?」
「<司令部は捨てて、本国に戻ったほうが良いぞ。直に日本軍が来るぞ。>」
ガムランは渋々警告を受け入れ、指揮を側近の『マスケツ』に任せ、自身はボルドロイゼンに撤退した。
ガムラン達が去って数時間、ブルフ平原は静かなもので、ゼーベルムートで敗走した兵士が流れてきた。その数25万。
「50万差し向けて、半分しか残らなかったのか!?」
「皆戦死したか捕虜になりました・・・。」
50万の大軍、これだけでもジュッシュ公国を占領するには充分であった。しかし、半数の25万を残し全員が戦死するなどありえない事であった。
「一体何が起きているのだ・・・。」
ブルフ平原では、自衛隊が放棄した塹壕と重機関銃を利用した防衛戦が再構築され、連合軍の反撃に備えていた。
ゼーベルムート・・・。
「凄い兵器だ・・・。車に大砲を載せるとは・・・。」
87式自走高射機関砲は南の高台や市街地に、他の戦車隊は外周を通ってボルドアス軍の退路を遮断し、大損害を与えていた。
以後は北の盆地に戦車を集め、出発を目前にしていた。
「ブルフ平原から北は日本国政府の許可が要ります。」
「またですか?」
ジュッシュもボルドアスも、攻め込んできた敵に対する反撃として事前、事後に関わらず国境を越えることが許されていた。
「『ジュッシュ公国が無くなって一番困るのは日本だ。』って言っていたわりには随分と行動が制限されているのですね。」
「ですから、ブルフ平原で残りを殲滅します。」
一見無茶と思うこの発言、だが50万のボルドアス軍を屠ったこの戦車なら、残る30万の兵など、敵ではない。
ジュッシュ軍の将官達は全員そう判断した。
しかし、自衛隊はそうは思わなかった。ハインドは恐らく分解して小船で運んできたと推測した。ハインドはもう無いにしろ、携行型の対戦車兵器を持ち込んでいる可能性があったからだ。
どちらにしろ、ブルフ平原のボルドアス軍は殲滅しなければならない。
「エンジン始動!出撃準備!!」
90式戦車約48両が先陣を切ってブルフ平原へと突進して行った。