秘密会談
日本国 首相官邸・・・。
ここに『ジュッシュ公国の皇族』と言う人物と、その付き人が居た。
会談の場にはまだこの二人しか居ない。
「大陸からわずか海路三日・・・。陸路でもたった六時間とは・・・。」
「この国には心底驚かせられてばかりだよ。」
「けど、早くしないと取り返しの付かない事になる。」
遅れて、日本国の総理大臣が入室する。
「遅れて申し訳有りません。日本国総理大臣の永原です。」
相手が皇族と言う事で、緊張している事が手に取るようにわかる。
「緊張なさらずとも良いのですよ?」
「何を仰いますか。我が国と協力関係に在るジュッシュ公国の皇族との会談なのですから。」
「・・・。残念ながら、私は『ジュッシュ公国の皇族』ではありません。」
「何と!?では何処の・・・?」
「ボルドアス帝国です。そして、私は第13代王女リーエンフィールなのです。」
「なっ!?」
よもや敵対国の、しかもその王女が目の前に座っている。永原総理の緊張は一瞬にして動揺に変わっ
た。
「ご安心を。宣戦布告をしに参ったのではありません。むしろその逆です。」
「ぎゃ、逆とは?」
「講和を申し入れに来たのです。」
動揺していることもお構い無しに淡々と話を進めるので混乱する。
「ひっ一つずつ整理してよろしいですか?何故講和を?」
「答えは単純です。このままでは我が帝国が滅びる、そう判断したまでのことです。」
先程まで、防衛省にてヴァルサルから提示された計画を盛り込んだ新作戦計画の説明を受けていただけ
に、この講和の申し入れは良い意味で出鼻を挫かれたものとなった。
しかし、事態は誰もが予想も出来ない方向へと向かう。
「講和の条件は日本が示したもので構いませんが、ボルドアン家の存続はお許し願いたい。」
「内容に付いてはジュッシュ側と協議のうえ、後日提示いたし-」
「総理・・・!」
秘書官がノックもせず入ってきた。
「実は・・・。」
耳打ちで何かを伝えている。
内容を聞いた総理の顔は一様に険しい。
「・・・。非常に言い辛いのですが、日本の最北端『宗谷岬』沖数百km海上に、ボルドアスの大艦隊が現
れたと。」
「えっ・・・!?」
「まさか・・・?」
「そのような命令は出していません!」
「ですが現に攻め込んで来ようとしています。貴女以外に誰が命令を出せるのですか?」
王女は回答を渋っていたが・・・。
「ギル=キピャーチペンデ王国なら・・・。」
付き人のレッソンが答える。
「ギル=・・・なんですか?」
「帝国を陰で操る列強国です。そこの刺客が軍部をたぶらかしたのでしょう。一度暴走した軍は王族の力では抑えられません。
この場をお借りして申し上げます!どうか、どうか-」
レッソンの魂からの叫びに、総理はどのように答えたのか・・・。