本音
ボルドアン城 女王の自室
レッソンは日本との交渉経過を伝える為部屋に入るが・・・。
「どうだったぁ~?」
そこには、ベッドの上で大の字に仰向けになるリーエンフィールが居た。
「もう少し品格というものを・・・。」
「良いじゃな~い別に~。私と貴方の仲なんだからぁ。それに家の確執なんて有って無いようなものじゃ
ない。」
「一体どうされたのですか?帝都が襲撃されてからというもの、ずっとこの調子では有りませんか!?」
「・・・『レン』、この国はこのままじゃ無くなるわ。そうなれば私は処刑台よ。」
『レン』とは、『レッソン』の幼少期の名前だ。
「そんな事・・・、講和すれば-」
「それを許さない者達が居る。私の力では抑え込めない。」
「・・・。」
「私はねぇ、もう疲れたの。大人たちの勝手な都合でレンと切り離され、訳分からない王国にこの国を牛
耳られ、その国に良い様に使われ・・・。」
リーエンフィールとレッソンは、身分は大きく違うが双子の姉弟である。リーエンフィールが王女とし
て即位したのも、周辺国への戦争も、全て『ギル=ランシンド王国』の差し金であった。
「なあ?まだ日本の外交官が枢密院に居るから話だけでもしてみないか?」
「え?」
「日本なら、もしかしたら帝国の現状を分かってくれるかもしれない。」
敵国が救ってくれるまず無いと思いつつ、リーエンフィールはレッソンに言われるがまま、枢密院へ向
かった。
枢密院・・・。
「お待たせしました。」
「どうでしたか?」
「本人が直に話すという事になりました。」
レッソンに連れられた少女は、容姿も雰囲気もレッソンにそっくりで双子との印象を強く受ける。
「第13代王女、リーエンフィール=ボルドアンと言います。」
「お目に掛かれて光栄です。日本国外交官の西村と申します。」
「まさかとは思いますが、このまま宣戦布告するおつもりでは?」
「・・・。」
王女は周囲を気にして落ち着かない状態であった。
「どうされた?」
「ここで話すわけにはいきません。いえ、下手をすればこの大陸での発言は命取りになるでしょう。」
「どう言う事ですか?」
「詳しい事は、この大陸の外・・・、日本でお伝えします。」
「なっ!?」
よもや戦争中の国の、ましてやその王女が日本国内での会談したなど、宣戦布告を予想していた二人の
予想の斜め上を行く発言に、西村も神宮寺もただただ困惑する。
「そんなっいきなり言われましてもこちらとしても対応に困ります。」
「この場で言えないのです。どうかご理解を。」
「・・・。どうしますか?西村さん。」
「・・・。お招きいたそう。」
「本当ですか!?」
「ただし、会見まではこちらに都合の良い上辺だけの身分で振舞ってもらいます。」
「構いません。」
西村が来日を許したのは、わざわざ敵地で宣戦布告するなどと言う馬鹿げた事をするとは思わなかったのが大きい。そして、宣戦布告でなければ講和と言う可能性があったからだ。




