双方の準備
防衛省作戦司令室
「九十九里に上陸した敵はおよそ一万。ほぼ全員が「フリントロック式マスケット銃」を携えている。これに対し我が方は、第1師団だけでなく、陸上総隊やSATまで投入しているため、兵と武器の質・量共に勝っている。」
第1師団長、鎌田がスクリーンの灯りだけが燈る司令室で、各連隊やSATの隊長に作戦地域と敵の実情に平行し作戦の概要を説明する。
「作戦はいたって単純である。まず、特科及びヘリ部隊で沖に停泊中の船団を殲滅する。
次いで74式・10式戦車を先頭に敵歩兵を上陸地点に追い込む。」
「降伏した者はどのように?」
SATの隊長、荒木は自衛隊の人情を疑っているわけではないが、万が一のことを考え、投降した者の処理をどうするか問う。
「それは全て司法に委ねことになるが、射殺することは許さん。」
鎌田は毅然と答える。この世界に地球のような国際機関が在るかどうかは分からないが、捕虜の虐殺など論外であると答えた。
「他に質問は?」
一時の静寂が司令室に流れた。
「・・・・・・なしっ!」
「各隊出撃準備を整えよ。以上!解散!!」
まさしく防衛出動発動の瞬間であった。
夜 九十九里浜・・・。
「バクト、ロプリエース号はどうだ?」
フリゲート艦ロプリエース号、この艦は、ベルテクス艦隊の後方二日の位置に居るデュリアン艦隊の先導を行う為航行準備を行っていた。もともと両艦隊はジュッシュ攻略の為の艦隊であったが新大陸を占領し、その利権の独占と戦況優勢を確定させる、というベルテクス提督の意志を伝えることがでれば彼は十万の援軍を得られるのだ。
「荷の積み込みは30%完了、明日の夕刻には出発できます。」
「なるべく急がせろ。明日の昼過ぎには動けるようにしておけ。」
「わかりました。」
ロプリエース号が荷物の搭載を進める間、浜の陸戦隊は周囲の民家から引っ張り出してきた家具を使い方陣を組んでいた。方陣には騎兵に強く砲撃に弱いという特徴が在る。ヴァルサルがこれを指示した訳は「蛮族の土地に馬は有っても大砲は無い」というのが理由だ。
そんな彼は「ニモリのソファー」という椅子の踏ん反り返り夜空を見上げていた。
「あと二日すれば、この大陸は王女殿下と帝国の物だ。ジュッシュの連中よ覚悟していろ。」
早朝 陸上自衛隊第1特科隊・・・。
「覚悟してろよ海賊共め!目にもの見せてくれるわ!」
155mm榴弾砲FH70が狙うのは荷物を積載中の帆船であった。
「0600十秒前、9、8、7、6、5、4、3、2、1、打てぇえ!」
午前六時、陸上自衛隊による反撃が開始された。