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ミトスター・ユベリーン  作者: カズナダ
第3章 継戦の限度
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フォノス村

 ジュッシュ・サデウミス暫定国境『ベレリューの森』

「ここからは、馬車ではなく徒歩で移動します。」


「道はあるのですか?」


「獣道を使います。それで、一番近い『フォノス村』に向かいます。そこからは友人にも協力を仰ぎます。」


 言われるがまま、西村はルフトの後を追う。


 二十分後・・・。

「まっ待ってくださぁい。」


「だらしないですね。それでも男ですか?」


「私は基本デスクワークですから、こんなアウトドア的なことは全然やらないもので・・・。」


「もう少しでフォノス村です。頑張って下さい。」


 更に十分後・・・。

「はぁ。はぁ。つっ、着きましたよ。」


 ヘトヘトの西村を抱えながらの移動で流石のルフトも体力が限界だった。


「エフィー!何処だー!?」


 ルフトは友人の名前を叫ぶ。


 そして、しばらくすると・・・。


「おやっ?ルフトじゃねぇか。その男は?そしかして旦那ぁ?」


 エフィーは現れるなり、速攻でからかう。


「あんたらの国への客人だ。だけど疲れ切ってて起きないんだ、あんたの家で休ましてくれぇ。」


「はっはっは!お安い御用だ!手ぇ貸すぜ。」


「ああ。助かる。」


 ルフトとエフィーは、西村をまるで森で仕留めた鹿のように村内に運び込む。


 西村は目覚めると、見覚えの無い場所に居た。

「ここは・・・?」


「目覚めましたか?」


 隣でルフトが胡坐をかいていた。


 額には濡れた綿花の布と直ぐ脇には水の入った桶が置いてあり、介抱してくれていたことがわかる。


「もしかして、ルフトさんが?」


「違う、この家の主だ。」


 ルフトの向く先にはもう一人女性が居た。


「貴女が?」


「応っ!俺は『エフィセット』気軽に『エフィー』って呼んでくれて構わんぜ!」


「看病していただき、ありがとうございます。日本国外交官の西村といいます。」


「話はルフトから聞いたぜ。首都に行きたいだろ?ならサッサと行こうぜ!」


 返事を待たずエフィーは部屋を飛び出した。


「すまんな西村殿、エフィーは良い奴なんだが、こういう所がたまに傷で。」


「気にしていません。それより早く行かなくては。」


「そうですな。」


 村の中を見た瞬間、西村は度肝を抜かれた。

「ここは『エルフの町』なのですか?」


「日本にもエルフが?」


「御伽噺の中だけかと思っていなしたが、さながら異世界に来たようです。」


 それもそうだ、日本は異世界に転移したのだから。


「あまりそういう目で彼らを見ない方が良いですよ。彼ら凄く人間嫌いしているので。」


「そっそう言う事でしたら、控えさせていただきます。」


 交渉は相手を刺激してはならない。西村は神秘に浸っている場合ではなかった。


「では村長に挨拶しに行きましょう。」


「でも、エフィセット殿が-」


「あいつはほっといて構いません。どうせ寄り道しているでしょうし。」


 ノフォス村の村長は決まってご神木の根元に居る。

「よく来たな。混じり者よ。」


「サミエル様、ご機嫌麗しゅう。」


 ルフトに続き、西村も挨拶するが『混じり者』と言う事が気になってしまう。


「して、そこの人間はサデウミスの元首に会いたいのか?」


「はい。その通りにございます。」


「なら私から話は付けておく。早速向かうがよい。」


 僅かな面会を終え、出発地点で待つエフィセットのもとへ向かう。

「先程言われてた『混じり者』とは一体?」


「そのままです。私とクローディアは人間とエルフの貴重な混血児、所謂『ハーフエルフ』なんです。」


「貴重な?」


「本来、人間とエルフの血は水と油の関係。胎児が生まれたとしても持って数年。ですが私達は二十年以

上生きています。両親が身代わりとなったから。」


「身代わり・・・?」


「クローディアが生まれる前後で、父を事故で、母を病気で失いましたから。」


 ルフトの表情が段々暗くなる。西村は、地雷を踏んだのではと数歩後ろを歩く。


 しかし、ルフトは立ち止まる。


「あの・・・。」


「なっ、何でしょうか?」


「さっきの事、クローディアには言わないで下さい。あの娘、両親の顔、知らないので。」


「個人の尊厳に大きな傷をつけるようなこと、言う訳有りません。」


 知りたくない真実を知ってしまった。


 だが、サデウミスとタンタルスの歴史は更に血なまぐさいものであった。

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