番外編 大国の戦略
タンタルス大陸東方数百km・・・。フォーネラシア大陸・ギル=キピャーチペンデ王国
この国は、元々タンタルス大陸の十数倍の広さを持つフォーネラシア大陸の弱小国であったが、周辺国に人質をして差し出した王子や姫がその国の実権を握り、王国に併合させるよう仕向ける。それにより、痛手を被る事無くフォーネラシア全土を支配し、今ではこの世界の指折りの列強国をなっていた。
大陸の周辺国はこの国から独立保障を掛けて貰う事で目立った国家間の戦争もなく、均衡を保っていた。ボルドアスもまたその一国に過ぎず、この国の支援が有ったからこそタンタルス大陸の半分を支配できていたのだ。
王都ソーンヘルム ボルドアス大使館
「これはこれはメーガン殿、この度はどうされた?」
ボルドアスの駐在大使メーガンの『商談』に顔を出したのは、ギル=キピャーチペンデの軍需省副長官
ジグソーであった。
「お忙しい中ご対応頂きありがとうございます。」
「貴国は王国のお得意様。当然ではないか。」
「早速ですが、王国に頼みたいものが二つ有ります。」
「ほ~う。」
「一つは軍艦百隻。」
「百隻かぁ~。そんな数何に使われる気か?」
「新興国を保護する為です。」
「『保護』ねぇ。・・・それで、もう一つは?」
「これを作っていただきたい。」
メーガンが取り出したのは、ガトリング砲と専用の実包の設計図であった。
「これは・・・。」
「我が帝国の新兵器です。手動のクランクを回す事で弾丸を連続的に発射する事ができる代物です。」
「王国でも連発銃の研究はしているが考察の域を出ない。これは参考になる。直ぐにでも開発して運用し
たいものだ。」
「軍艦の購入費と合わせて、開発資金は帝国が出費します。」
「ほう、それは助かる。万が一貴国が滅んでも、王国は損をしないどころか研究が促進する。」
ボルドアスの大陸統一を影で支援するギル=キピャーチペンデにとって、かの国は単なる養分に過ぎ
ず、ジグソーは二つ返事で商談を終えた。
商談終了後・・・。
ジグソーは、対ジュッシュ公国諜報員ミランダを召喚した。
「ジュッシュは一体どうなっている?何をすればボルドアスに軍艦百隻を使わせれる?」
「はっ、何でも最近ジュッシュに『ボルドアスとの戦闘を肩代わりする代わりに、こちらの要求するもの
を提供しろ』と言った国があるようで。」
「物好きな国があるものだな。その国の名は?」
「ニホン国と申します。」
「ニホン?聞いたこと無いな。」
「恐らく、メーガン殿の言っていた『新興国』かと。」
「新興国がいきなり『戦わせろ』とは、そうとう狂った蛮族どもの国なのだな。仮に王国がジュッシュと
同じ立場なら、まずは力を見せて貰うところだが。」
「噂ですが、艦船七隻でボルドアスの艦隊五十隻を損害なしで殲滅したとか、兵士百人でボルドアスの輜
重隊一万五千人を圧倒したか。」
「信憑性皆無だな。そんなことが現実にあってたまるか。」
ギル=キピャーチペンデ王国は日本の存在をジュッシュの情報操作から生まれた架空の国として扱いつ
つ、引き続きジュッシュ=ボルドアス戦争の長期化を狙い両国の陰で暗躍する事となる。
「それにしても、お前の部下が買ってきたこの桃、絶品だな!」
「恐縮です。」