脅迫・決意・条件
ルフトは、外交官の西村を連れ『ホリゾント街道』を南下していた。
「ところで、『サデウミス』とは一体どういう国なのですか?」
西村はこれから向かうサデウミスの情報を少しでも知っておこうと思ったが・・・。
「今は、タンタルス大陸の南『ユークノトス半島』一帯と治める国、としかお答えする事しかできません。」
ルフトの口が堅くなかなか情報を聞き出せない。
数日前・・・。
クローディアは、あろうことか公国の機密事項であるサデウミスの名前を、異邦人の神宮寺に言ってしまった。
「それは機密事項だぞ!!」
だが、クローディアは堂々と言い放つ。
「日本の方々にはそれだけの権限はあると思います。現に、ゼーレフォン・ラブングル、そしてボルドロ
イゼン。いずれも日本が居たからこそ勝利できたのです。」
「そうだが・・・、それはそれで-」
「日本がいなければ、ジュッシュはボルドアスの属国になっていたでしょう。それに、日本が『燃える
水』が欲しいというのでしたら、我々はそれに応えなければなりなせん。」
公国の存続の為、クローディアはあらゆる手段を講じようとするが、神宮寺から恐ろしい発言が飛び出
す。
「これは脅しと言う訳ではないのですが、仮にジュッシュがボルドアスの属国になったとしても、日本に
はまだ選択肢が残っています。外交で対等な関係を築くか、軍事力を背景に大陸に進出するか。」
「にっ日本がそんな帝国はがいの事するとは思えませんが・・・。」
「その通りですが、国家間の関係が浅い状態なので、もし『ジュッシュを攻撃しろ』と首相、閣僚、何よ
り国民がそう判断すれば、我々は従うざるを得ません。」
個人間のつながりこそ強いものがあるが、国家間の繋がりは無いに等しい。
仮にジュッシュがボルドアスの属国になり日本による大陸進出があった場合、ジュッシュから上陸し、
そこで帝国兵と戦うことになる。
そうなれば、公国は火の海となる。そんな事あってはならない。
「(公国が生き残るには、つまらん規約に縛られる訳にはいかんか。)・・・。公国が滅ぶなどあってた
まるか。」
ルフトは周りに聞こえない様にささやく。
「姉様?」「姉貴?」
「クローディア、リオネン。お前達は公国と日本の仲を取り持っているんだろ?」
「そうですが・・・。」
「一体それが-」
「私は、日本をサデウミスまで案内する。」
「つまり?」
唐突なルフトの提案に神宮寺は少し戸惑う。
「日本国の外交官をサデウミスまで案内すると言いました。」
日本はただ化石燃料さえ手に入れたいだけであったが、『日本の武力を背景とした大陸進出』と言う、
これ以上ない悲劇を回避するため、ルフトは日本の要求をのんだ。
「では-」
「しかし条件があります。案内する人数は一人であると言う事。サデウミスとの交渉期間は私の指示に従
う事、です。」
翌朝、在ジュッシュ外交官西村を連れ、ルフトはサデウミス集合国家を目指し、ゼーベルムートを後にした。