ベルナール 粛清
救出作戦翌日 帝都ボルドロイゼン 枢密院・・・。
敵性勢力の帝都侵入と言う、帝国創設以来の一大事に帝国の大臣全員が集められた。
「まず、敵がどうやって侵入したか、それが分かれば対策できるであろう。」
「道と言う道には検問を幾つも設けている。山道でも通らない限り見つけられぬことなどありえない。」
「抜け道があるではないか!?」
「帝都を攻撃するとなれば最低でも百万の兵が必要だ。そんな数の兵が山越えなどできるわけが無い。」
「それに、百万もの大軍、見つけられぬわけが無い。」
ボルドアスの大臣達はまだジュッシュ公国の攻撃であると思い込んでいる。
「これでは話は平行線のままですな。」
「ベルナール公爵、何が言いたい?」
「先日、帝都を襲撃したのは『ニホン国』と呼ばれる新興国です。」
「ニホン国?そんな国あったか?」
「捕らえたジュッシュの将軍から聞き出しました。その者が言うには、ニホンはジュッシュの西約四千五
百kmに在るとされる海洋国です。」
「つまり、大陸進出を狙う蛮族共の国か?帝国が発見する前にこの大陸を見つけ、準備が整ったから攻め
て来たと?」
「そして、愚かなジュッシュ公国はまんまと手玉に取られたと?」
「そこまでにしなさい。」
王女が議論を止める。
「ベルナール、まだそんな世迷言信じてるのぉ?第一、どこの馬の骨とも知らない新興国が、千五百年続
く帝国の力を凌駕しているなんてありえないじゃない。」
実際、王女は南門の爆破を目の当たりにしていたが、御伽噺まがいの事を信じ威厳を消失させまいと、
知らない振りをしていた。
「ですが、帝都を襲撃した奴等、あれはどう考えてもジュッシュのものではありません。」
「確証はあって?」
「鉄の馬車に付けられた『白地に赤い丸』。あれが旗印だとしたら、ジュッシュはおろか、大陸に存在す
るいかなる国の旗とも似ても似つきません。」
ベルナールの言っている事は的を得ていたが、推測の域を出ないので説得力に欠けていた。
「結論から言って、私に『ニホン国征伐の為、兵を差し向けろ』、と?」
「そっその通りにございます。」
「・・・そんなのできるわけ無いじゃなぁい。」
「なっ!?」
「当たり前じゃなぁい。そもそもゼーレフォン沖海戦・ラブングル会戦の時の損失を補えてないの
よぉ?」
「そっそれは・・・。」
「それに、ベルナール。捕らえたジュッシュの将軍にまんまと逃げられているじゃなぁい?それで首の皮
一枚繋がってたけど、また繋ぎ止めておくに値するものをアンタは持っていない。」
「おっお待ちを-」
「アンタの報告書は参考書程度に保管しておくけど、それだけ。」
王女は邪悪なオーラを会議室いっぱいに解き放つ。
「アンタはもう用済みよ、ベルナール。連れて行け。」
「殿下!どうかお慈悲を!!殿下ぁあああああ!!!」
ベルナールがつまみ出された。