絶望のクローディア
クローディア誘拐から数日 ボルドロイゼン・・・。
「ベルナール、今度の敗戦の責任、どうしてくれるのぉ?」
ジュッシュ公国の指揮官が不在になるので、簡単に攻略できる、という情報を持ってきたベルナール公爵は、王の間において御叱りを受けていた。
「殿下、おっ恐れながら、あの情報を報せたのはガムランで-」
「おだまりっ!!」
責任から逃れようとするベルナールを、王女は一蹴する。
「お前自身であってもなかろうと、お前があの情報を私に教えたのよぉ?違って?」
「いっいえ。その通りにございます。」
「だったらお前は偽の情報に躍らされ、新兵器の『カノン砲』をドブに捨てたのよぉ?」
ベルナールは反論できない。
敗残兵の証言も支離滅裂、荒唐無稽な物ばかりであてにはならない。だが彼にはとっておきの保身材料
が残っていた。
「とうていお前一人の首で払える対価ではないわねぇ。・・・となれば一族郎党を-」
「殿下!お待ちを!!」
「うるさいわねぇ。この期に及んでまだ言い訳する気ぃ?」
「あの会戦では、ただ負けた訳ではありません!しっかりと成果を得てきました!」
「ほう・・・。そこまで言うなら、見せなさい。お前が得た『成果』という物を。」
「おいっ!入れ!」
ベルナールの部下二人が薄汚れた女性を連れて入ってくる。
ベルナールの隣に来たら、連行索を引っ張り床に倒す。
「誰ぇ?この汚らしい女ぁ?」
「殿下、この者が我が帝国の侵攻を尽く阻んできた『クレー騎士団の長・クローディア』にございま
す!」
「あんたなんかに・・・名前を呼んでもらいたく・・・ないわよ。」
「お前が『ジュッシュの英雄』ぅ?」
「そうみたいね。けど驚いたわ、『王女』なんて呼ばれているから、どんな老け顔かと思ったら、私より
全然子供なのね-、・・・うっ!」
王女はクローディアの顔を踏みつけた。
「こうすればその小生意気な口も塞がるかしらぁ?」
そのままベルナールを見る。
「首の皮一枚繋がったわね。」
「ははぁ!ありがとうございます!。」
「後は尋問でも何でもしなさい。それからコイツは北の塔にでも放り込んでおきなさい。」
「わっ私がですか?」
「何言ってるのぉ?当たり前じゃない?この私に捕虜の世話をしろって言いたいのぉ?」
「いえっ!滅相も-」
「分かったらサッサと行けぇえ!!」
ボルドアン城 北の塔・・・。
「うわっ!!」
薄暗く湿気がこもる塔内にクローディアが放り込まれる。
「はぁ・・・。はぁ・・・。」
夏にも関わらず身体は震え、吐く息は白く寒さと圧迫感に押し潰されそうになる。
「(お姉ちゃん、リオネン、助けて、助・・・けて。)」
クローディアは涙を流し心の底から祈る。




