戦勝晩餐
ゼーベルムート・・・。
ジュッシュ公国陸軍大臣ホルステ邸で戦勝を祝う晩餐会がしめやかに催された。
出席者
ジュッシュ
・陸軍大臣 ホルステ夫妻
・近衛兵団長 ルフト
・クレー騎士団長 クローディア
・元ハーゼ騎士団長
現クレー騎士副団長 リオネン
日本
・ジュッシュ駐在外交官 西村
・特殊作戦群第一連隊長 神宮寺二等陸佐
・US-2機長 江田野二等海佐
リオネンがクレー騎士団の副団長なのは、ハーゼ騎士団がラブングル会戦で壊滅的な損害を出したので、その日のうちにクレー騎士団に吸収されたのだ理由だ。
「すまんな日本の方々よ。本来なら国を挙げてもてなすべきなのたが、この程度しか用意できなんだ。」
と言いつつも彼等の前にはジュッシュ公国えりすぐりの高級料理が並んでいる。
「いえいえ。これだけでも十分過ぎるぐらいです。」
「ええ。それにビールが飲めるとは思っても見ませんでした。」
「ビール?」
同席する全員のグラスには、公国特産の麦酒が注がれていた。
「日本では麦酒はビールと呼ばれているのですか?」
「そうですね。私共の年齢になれば、これが恋しくて恋しくて。」
「日本でもこれは高級酒なんですか?」
「日本ではどちらかというと、庶民的な飲み物ですね。基本的に何処でも買えます。年齢制限は掛かりま
すが。」
「公国の高級酒が、日本の庶民酒だと・・・。」
ジュッシュ公国は何でもいいから日本に差を付けようとしているが、何をやろうと日本はその全てを越
えてくる。もっとも、日本国とジュッシュ公国では歩んで来た道のりが違いすぎるのだが。
「にしても、西村殿が残ってくれていてよかった。貴殿が帝国の侵攻を伝えてくれなければ、我々は今頃
途方にくれていたであろう。」
「とんでもない。あれは私だけの力ではありません。」
「何を仰せられるか。貴殿と、日本の力が有ったからこそ公国が滅亡を免れる事ができたのだ。感謝して
もしきれない。お礼となるか分からんが、日本の提案、わしは無条件で受け入れようと思う。」
「本当ですか!?」
「日本は救世主だ。公王も民も文句は言わんでしょう。」
この瞬間、今後の交渉は日本にとって非常に優位に動く事になる。
宴は日を跨ぐまで続いた。
「では私共はこのあたりで。」
「ああ。今日は本当に助かった。改めて礼を言おう。」
「それではまた。」
西村達が退出した。
「私達も帰るか?」
「そうだね。大臣、本日はどうも-うわっ!?」
クローディアの背後からリオネンが抱きついた。
「ちょっとリオネンッ!!」
「クロ~ディアだんちょ~お~。」
完全に酒が回っていた。
「貴女絶対酔ってるでしょうっ!?」
「よってないよ~。ひぇっく!」
「お酒臭いし、しゃっくりまで!」
ルフトはそんな様子を近くに居ながら遠くから見つめるように、傍観を決め込んだ。
「相変わらずだな、リオネンの酒癖の悪さは。」
ジュッシュ公国特産の麦酒自体の度数は日本のビールと比べると僅かに低い。だが飲みすぎれば個人差
は有れどリオネンみたいになる。
「ちょっ!変なとこ触んないでよっ!!」
「いいじゃ~ん。減るもんじゃなんだから~。」
リオネンは完全に酒に飲まれ、本能の赴くままクローディアの成長著しい胸部を触る。
「まったく。では大臣、我々もこの辺りで。」
人前、しかも大臣の目の前で一切の抵抗のなさにさすがのルフトにも呆れが生じる。
「うむ。朝までには酒を抜いておけよ。」
「ほら帰るぞ。」
ルフトはリオネン後頭部にチョップを叩き込み気絶させた後肩に担ぐ。
開放されたクローディアは両腕で先ほどまで揉みしだかれていた胸を押さえ、気絶しているリオネンを
睨みつける。
「・・・。お、お邪魔しました。」
だがそんなことしてもリオネンに気付くよしもなく、クローディアはホルステ大臣夫妻に別れの挨拶を
した。




