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ミトスター・ユベリーン  作者: カズナダ
第2章 必要なもの
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ラブングル会戦 1

「何としてもこの街道を死守するのだ!」


 十万にも達するボルドアス軍を迎え撃つジュッシュ軍の兵力・・・。

 ・正規歩兵1万2千

 ・騎兵2千

 ・砲兵5百

 ・ハーゼ騎士団5千

 ・徴用民兵1万7千

 であった。


「道の両脇に起伏が幾つも存在する。そこに兵を隠し奇襲をかけ続ければ-」


「奇襲など卑怯者のすることだ。我が軍は正々堂々、真正面から敵を粉砕する。」


「無茶だ!3倍以上の敵に正面から戦いを挑むなど-」


「臆病風に吹かれたか?貴様は後ろで縮こまっていろ!どうせその足では何の役にも立たんからな!」


 臆病・・・。リオネンの脳内にこの言葉だけが永遠と繰り返される。

 リオネンはルフトに負けず劣らずの勝気な性格であり、戦場では常に先頭に立って陣頭指揮を執っている。そんなリオネンが一番嫌いな言葉はまさしく『臆病』であった。


 ガシャァァン


 憤慨したリオネンは机に拳を振り下ろし、粉砕した。


「奇襲が卑怯で臆病なら、正攻法など愚か者のする事だ!!」


 戦いにおける定石は、まず奇襲で敵の全体戦力の約2割を殲滅した後、正攻法で残りの1割を全力をもって叩く。

 こうすれば軍団としての戦闘能力がなくなり壊滅状態となる。


 だがリオネンの進言は聞き入れられず、結局ジュッシュ軍は「ブルフ平原」での正攻法による迎撃と言う、ある種自殺行為ともとれる方針に決定した。


「リオネン様・・・。」


 彼女の性格上、開戦ともなれば一番槍を得ようと先頭に立って切り込むのだが、足の怪我と司令部の方

針に異議を唱えた為後方待機となった。


「・・・分かっている。」


 望遠鏡越しに映る自軍の様子は悲惨なものであった。


「民兵を盾に・・・。なんてことだ・・・。」


「しかも司令部の連中、督戦隊まで出しています。」


 督戦隊・・・軍隊において、自軍部隊を後方より監視し、自軍兵士が命令無しに勝手に戦闘から退却

(敵前逃亡)或いは降伏する様な行動を採れば攻撃を加え、強制的に戦闘を続行させる任務を持った部隊のことである。


「敵と奴等に挟まれて生きた心地がせんが、万が一、撤退するなら殿は我等ハーゼ騎士団だ!」


「はっ!!」


 意気込むリオネン率いるハーゼ騎士団だが、クレー騎士団や近衛兵団、そして日本の援軍が早く来てほ

しいと願うばかりだあった。


「報告っ!敵前衛、ブルフ平原に現れました!!」


「来たか!!(クローディア、姉貴、早く来てくれよ。)」


 日本・・・。

 奥村から告げられた衝撃的な真実、ジュッシュ査察団は一刻も早く帰国しなければならなかった。


「急いでジュッシュに戻らなければ!」


「待ってください!今政府に問い合わせているので!」


「クローディアよ、気持ちは痛いほどわかるが少し落ち着け。」


「ですが大臣!」


「大臣の言う通り。焦っても何も始まらん。」


「それに今から戻ったって三日かかるのだぞ?どう考えたって間に合わん。」


「では、ゼーベルムートの民は!?リオネンは!?」


「・・・。残念だが、諦めろ。」


 姉から親友を見捨てろと言われ、膝から崩れ落ちる。


「リオネン・・・。リオネン・・・。」


 ついに涙を流す。


「(すまないクローディア・・・。本当に・・・。)」


「皆様、諦めてはなりません!」 


 奥村の熱の入った言葉が飛ぶ。


「しっしかしいくら貴国でも三日の距離はどうにもならんだろう?」


「いえ。海上自衛隊の「US-2」なら七時間で行けます。」


「何っ!?」


 US-2・・・海上自衛隊が運用する世界最高の救難飛行艇で、日本-ジュッシュ間の約4500㎞を(航続距離4700㎞とギリギリであるが)移動できる(ジュッシュ側に飛行場が無い為)唯一の航空機であった。


「わかった。貴国を信じよう。我々を公国に帰してくれ!」


「では皆さん、急いで横須賀に!」


「ほらっ!行くよ、クローディア!」


 クローディアはルフトに腕を引っ張られながら査察団は奥村の跡を追う。

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