番外編 考察と決意
この話は、本編でリオネンが気絶してから意識が回復するまでの間、クローディア身に何が起きたのか。
という話になります。
よって、文章の一人称(私、自分)は基本的にクローディア目線になります。
四方八方、周り全てが黒一色。何も見えない。そんな暗黒の世界に私は一人で立っていた。そして、いきなり落下する感覚が全身に伝わる。「このままではいけない。」と悟り必死に足掻く。だが虚しくも全く意味を成さない。
「イヤだ・・・。このまま死ぬのは・・・、絶対にイヤ!」
突如湧き上がる「死の恐怖」。
「もう・・・、ダメなの?犬死しかないの・・・?」
そう思うと落下が加速する様な気がした。
だが、死を受け入れようとしたクローディアに落下とは真逆の力が働く。
体が引き上げられ、ある言葉と共に、私は光に包まれた。
「クローディアっ!!」
謎の場所・・・。
目を覚したは良いが、自分が置かれている状況が全く理解できない。
周りを見渡し整理をつける。
1・ここは公国軍の診療所ではないこと
2・口には半透明の物が被さり、両腕には太いぐらいの糸が繋がれている
3・ピッピッピッと不愉快な音が聞こえる
4・右には自分と同じ状態と思われる人が眠っているがベッドの間はカーテンで仕切られ顔は分からない
分からないのは、自分を暗闇から引き揚げてくれた声の主・・・、だが大体察しは付いている。
「はぁあ。」
呆れ混じりのため息をつくと
「気がつきましたか?」
見知らぬ女性が話しかけてきた。
「貴女は?」
「海上自衛隊衛生科員の星野です。」
ホシノと名乗る女性。どうやら目が覚めるまでの間世話をしてくれていたらしい。
「他に何か聞きたいことは?」
いきなり質問を促され戸惑う。確かに聞きたいことはいろいろある。
「町はどうなったの?」
「町は無事よ。ボルドアス船団は全滅、捕虜は2000人ぐらい居るらしいよ。」
「今、私はどうゆう状況にあるの?」
「一言で言えば患者よ。町の診療所で危ない状態だったからここまで運んで来て治療したの。隣に居る人
はそんな貴女を追ってこの部屋の前まで付いて来たの。気絶していたけどね。」
「そう。(聞いていないことまでペラペラ喋って、この人軍人じゃないの?)」
「じゃあそろそろ行くから、また何かあったら呼んでね?」
「うん。」
小声で頷く。
しばらくすると、隣で起きている人が起きた。
「ここは・・・、天国・・・?」
これは、私に対する質問かと思い・・・。
「違う。」と答えた。
すると隣の人は、勢いよく起き上がろうとしたが、脱力し倒れる。
「(さっきの声と、この反応・・・。間違えない、リオネンだ。)」
「・・・クローディア、居るのか?」
「ええ。貴女の左に。」
身体を動かす事はできないけど、顔だけ向けてカーテン越しに話をする。
「馬鹿ね。」
「エッヘッヘ。」
さすがのリオネンも自覚しているらしい。
だけど、いつもの反応が返ってこないのに少しガッカリする。
「失礼します。」
ホシノが来た。
「点滴交換しますね。」
「あの?」
「はい?」
「真ん中のカーテンをどけて下さい。隣の人と面と向かって話がしたいので。」
「わたりました。」
ホシノが笑顔で答えたので、少し照れくさくなる。
ホシノは、テンテキという液体の入った袋を取替え、カーテンを開き出て行った。
そして、ようやく親友の顔を見ることができたが・・・。
「ヒドイ格好だ。」
先手を取られ・・・。
「お互い様よ。」
と、返すしかなかった。
それからは、ジエイタイやニホンの事について考察した。時々来る星野にもいろいろと聞いた。リオネンの簡単な質問の後、私が確信に迫る質問をぶつけるから星野の困り顔は絶えない。
それで分かった事は・・・。
1・自衛隊という組織は私達を助けた海上自衛隊の他に陸上・航空の二つが存在するが、三つの総兵力は約25万人と公国陸軍の半分にも満たない。だが、リオネンが言うには彼等の大砲は百発百中なのだという。本当なら少数を高質で補っている事になる。
2・日本という国は公国の西方約5000kmにある人口約1億3000万人、面積約38万k㎡の島国であり、一週間ほど前に帝国から攻撃を受けたのだという。確かに地理的に見れば、偏西風に乗り艦隊を10日でゼーレフォンに着く。だが日本の船は3日で到着したと言い、技術力の差が伺える。
3・医学の差も火を見るより明らかがだ。不気味な音を発していた機械は私達の心臓の動きを見るのに必要とのこと。点滴と呼ばれている液体袋も治療に必要だという。そして、液体の正体は簡単に言えば薬だった。この液状の薬は私達が今まで糸と認識していた管を通り、腕に刺さった針の穴から体内に入っているのだという。初めて聞いた時は恐ろしかったが、飲み薬や塗り薬とは比べ物にならないぐらい効果的なのだそうだ。
動けるまで回復した後、日本の梅津提督との会談した。日本に関する資料も見たかったのだが、星野に教えてもらった事を言っただけで「自分たちの負け」と言われた。
だが日本の力は圧倒的であり、国交を結べば公国の発展は約束されたものであろう。
またボルドアスとの戦争終結も日本が味方してくれれば難しい事ではない。
いずも艦内 とある一室
「リオネン、助けてもらった恩を返すにも私は国交樹立までの間日本の肩を持とうと思う。」
「まっそう出るよな。」
「貴方は違うと?」
「いいや。あんたと同じ気持ちだな。あたしも助けてもらったからな。」
私達の思いは固まった。公国の発展と戦争終結のため、日本の力が必要になると公王や大臣達に報告する為に。




