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底辺召喚士と黒髪の少年  作者: くろすく
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部屋繋ぎ




クロアの手を引っ張ってやって来たのはある部屋の前。この部屋からクロアの気配が濃く感じられるから多分ここであっているはずだ。


「ここで良いんだよな?」


「えっと、まあ、一応」


「そうか」


俺は魔力を操作して鍵穴に合わせて物質化させると、それを使って鍵を開けて中に入る。


「なんですかそれ?!」


手を離してさっさと中に入ると、後ろからクロアの叫び声が聞こえるが安定の無視。


一人部屋の寮にしては案外と広い部屋だ。トイレに風呂にキッチンもある。ここって結構金持ってんだな。


「へえ、案外きれいにしてんだな。これが教科書ってやつか?」


ガチャっとリビングに入るとベッドや姿見といった普通の物から魔法について書かれた本まで色々あったがきちんと整頓されていた。


本棚に入っている本を一冊引き抜いてパラパラとめくっていると後からやって来たクロアに取られて元の位置にしまわれた。


「ちょっとそんなにじろじろ見ないでください! 勝手に物も触らない!」


「どうせここで暮らすことになるんだ、ちょっと触ったくらいで文句言うなよなー」


「それについてはお話があります。ちょっとお茶淹れるから待っててください」


「はいよ」


ちょっと怒った風のクロアを見送って、俺は自分の『部屋』をどこに作ろうかと周りを見渡す。


姿見は入り口作るのにラクだし壁は壁で見つかりづらくて良いんだよな。一番無いのは床だな。入るっていうか落ちるから。


「よくよく考えたら別に一つじゃなくて良いんだもんな。じゃあとりあえず鏡と、玄関のドアの二つ作るか。二つありゃ充分だろ」


「何が充分なんですか? これ、紅茶です」


「お、さんきゅ」


床の丸テーブルに置かれた紅茶を遠慮なくもらう。紅茶を飲んだらクッキーが食べたくなったので、『収納』から皿ごと取り出した。


「ほら、お前も食べれば?」


「えっと…ありがとう、ございます」


ぎこちなく礼を言うとクッキーを食べ始めるクロア。遠慮なんてしなくていいのにな。って思ってたんだが。


「なにこれすごい美味しいっ!! 良いんですかこんなに貰っちゃって?」


「おう、気にすんな」


そういえばこいつって遠慮とかしなさそうだよな。ほぼほぼ初対面の俺に色々言ってくるし。前の世界じゃそんなやつ居なかった…って、最初の方は居たか。俺が強くなるにつれていなくなってったんだっけな。


この世界じゃある程度セーブしていかないといけないんだよなあ。でもまあ俺がラクして生きるためには本気を出すしかないよな。


「そういえばさっきのやつな、部屋は二つあれば充分だなって言ったんだよ」


「ふぇ? 部屋でふか?」


「食ってからしゃべれ」


口にリスのようにクッキーをためているクロアを注意して、俺は指を指した。


「あの鏡と、あとは玄関のドアを入り口として部屋作るから」


ごくんとクッキーを飲み込んだクロアは俺が何を言っているのかよくわかっていない様子だ。


「ちょっとした魔法の応用だよ。んじゃ、とりあえず作るから」


そう言うと俺は立ち上がって鏡の前に立った。そして、手を振りかぶって鏡に叩きつけた。


「ちょっと?! それ、高いんですから壊さないでくださ…ってそれどうなってるんですか?!」


「言ったろ? 部屋作るって」


鏡の中に入っている手を見て驚いているクロアはどうやら俺がやっているような魔法の存在は知らないらしい。


「ちゃちゃっと空間開いて他んとこと繋げる魔法だよ。繋げんのはとりあえず元の世界の俺の家だから問題ないだろ?」


「問題ないって召喚以外で世界と世界を繋ぐっていうのは普通じゃありえないことなんですよ?! しかも自分の意思で行き来するだなんて…」


「非常識ってか? んなもん言われ慣れてるっつの」


今さら非常識だの言われたところでこれができるのが俺にとって当たり前なわけだからな。


そうこうしているうちに空間を繋げることができたので、鏡から手を出す。


あとは念のため他のやつが入れないようにしておいて、ついでにクロアに鍵を渡しておけばいいか。いざという時の避難場所になるだろ。


「クロア、腕出せ」


「えっ、嫌です」


俺は無言でクロアを見る。クロアは自分の腕を抱いて渡すもんかと俺を睨んでいる。


「別に変なことするわけじゃねえよ。いいから出せ、じゃないと鍵渡せねえだろ」


「鍵ですか? …てっきり腕でも落とされるのかと」


「んなことしたって意味ねえだろ、馬鹿かよ」


「あっ、今までの自分の行動を胸に手を当てて考えてください!! わかったら私が馬鹿じゃないってわかるはずです!」


わあわあうるさいクロアは無視することにして、クロアの手首を軽く掴む。痛いとかいって喚かれても迷惑だからな。


「『限定権限譲渡』。こいつに俺の部屋への出入りを許す」


俺がそう言ってクロアの手首から手を離すと、細身のシルバーのブレスレットが左手首についている。


クロアはそのブレスレットをしげしげと眺めて、外そうとした。


「え、全然動かないんですけど」


「なんで外そうとしてんだよ馬鹿」


痛くない程度に頭をはたく。

大して痛くないくせに頭をさすりながら俺のことを睨んでくるな。


「それ、俺以外が外そうとすると爆発するから」


「うえぇ?!」


「嘘だけど」


「無駄に驚かせないでください!」


ポカリと叩かれる。

俺はそれに驚いて動きを止めた。


俺が殴られるなんて生まれてからそうそうあったわけじゃない。別に怒ったりはしないが、単純に驚いた。


それを俺が怒ったのと勘違いしたクロアはやばいやってしまったといった顔をしているが。


「俺以外が外そうとすると弾かれるようになってるだけだ。あと、一応死にそうな攻撃も弾かれるようになってる。俺の名前を言いながらそっちの手でドアを開けるか、鏡に手を突っ込めば俺の部屋に行けるようになってるから」


本当はもう一つ機能があるが、これは別にクロアが知らなくたって問題ない。念のため程度の機能だからな。


俺が怒っていないとわかったのか、クロアは少しホッとしてそれから首をかしげた。


「そういえば、あなたの名前知らないんですけど」


「あ? 言ってなかったか?」


「呼び出してからまだ全然時間たってませんし、それにあなたが会話できることもさっき知りましたし、あなたに関して知らないことばっかりです!」


「そうだっけか?」


「そうです! 説明を要求します!」


手を挙げて教師に質問する生徒のようなクロアだが、生憎と俺は教師でもなんでもないので。


「…めんどくさ」




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