二代目白雪姫の受難
初代白雪姫のサクセスストーリーがあまりにも有名なので、二代目白雪姫のお話をご存じないかたが多いのではないでしょうか。初代白雪姫の物語は、むかしむかしが舞台ですね。でも、二代目白雪姫は現代が舞台なのです。
毒リンゴをかじった二代目白雪姫は深い眠りにおちてしまいました。七人の小人が嘆き悲しんでいると白馬に乗ったハンサムな王子様がやってきました。
王子様は白雪姫の美しさにみとれ、くちづけをしようとしました。しかし、この王子様は、いまどきの若者にありがちな、ちょっと自意識過剰な男の子だったのです。
眠ってる女の子にキスするなんて、なんだか変質者みたいだよなあ、などと、つい余計なことを考えてしまいます。
それに七人の小人たちの視線も気になります。こいつらにそんな変質者的行為を見られたら後々までゆすられるんじゃないかな、最近、世間は王室スキャンダルに厳しいし、王室無用論がマスコミをにぎわせたら困るな、王室への予算削減なんてされたらツライしな、などと、いまどきの若者にありがちな打算的なことが脳裏をよぎるのです。
悩みつつも、おもいきって白雪姫のくちびるに顔を近づけた瞬間、またまた余計なことを思い出してしまいました。つい最近、女の子に「キスが下手ね」と指摘されグサリと傷ついてしまったことを思い出してしまったのです。
王子様はいまどきの若者にありがちな、傷つくのが怖いタイプでした。そして、結局そのまま立ち去っていきました。
初代白雪姫のように牧歌的時代に産まれなかったのが彼女の災難だったのです。
彼女は今も眠り続けています。
今から白雪姫を助けに行くのですか? でも姫もいまどきの女の子なんですよ。「下手くそ」とか「タイプじゃない」とか平気であなたに言うかもしれませんよ。
ほう、そんなことで傷つくようなヤワな男ではないとおっしゃるのですね。素晴らしい方です。さあ、お行きなさい。そうそう、これが白雪姫の写真です。どうです、この雪のように白く美しい肌。
……えっ、こんな女タイプじゃないって?
昔なら色白が絶対的な美の基準だったのですが、価値観の多様化ってやつですか。美が絶対的だった時代は過ぎ去りましたものね。
気にしなくても結構ですよ。初代白雪姫のように牧歌的時代に産まれなかったのが彼女の災難だったのです。
彼女はまだまだ眠り続けることでしょう。
《終》