prologue
人間にとって、コンピューターゲームとは、何だろうか。電子情報だけで構成された、今とは違ういつか。こことは違うどこかを題材に、誰かが作った、偽りの世界。そんな世界を、人々はどう感じるだろうか。
世間一般で成功者と呼ばれ、社会貢献を目的に生きる人々は、“失敗した者の逃げ場”と。そう感じるだろう。現実で輝くことのできた彼らからすれば、現実ですらないその偽りの世界に、見出す価値などないのだから。
日々の生活の合間に暇つぶしと称して、ゲームをプレイする者たちは、“面白い遊び”と。そう言うだろう。日々何かを目標に生きる彼らは、ゲームのみに全力を込めるわけにはいかないのだから。
それぞれのゲームで、トッププレイヤーと呼ばれる者たちは、その中に、“誰よりも先に行く快感”を見出しているのだろう。頂点からしか見ることのできない景色はあるのだから。
このように、様々なゲームへの感じ方があるが、しかし。万人に共通なものもただ一つある。現実では失われてしまった、大切であったはずの何か。
科学技術の発展にのまれ。金儲けのために働く人の手から離れ。社会貢献という名の自己犠牲に忙殺され。
そうして失われていってしまった、この楽すぎる世界では、得難くなってしまった、そんな『ワクワクできる何か』。それを含んでいることは、だれも否定できないだろう。そのワクワクが、ゲームを遊び足らしめ、時に遊びを超え、もう一つの現実へと、終わらない夢へと。姿を変えさせるのだ。
さて、前置きはこのぐらいにして、物語を始めよう。この物語を簡単に紹介するなら、そう、こう表現すればいいだろうか。
すべての人々が、ワクワクして楽しく生きる世界を作りたいと願った人間と。
そんな世界をこそ、自らが生きる世界だと定めた人間の物語。
すなわち、現実逃避、と。そう賢しげに言う人々に、“現実に見続ける価値などあるのか?”と問い。
遊びと勘違いしてるもの達に、“これはゲームではあっても遊びではない”と言い。
頂点に立つことが目的の者達に、“もっと楽しいものを見に行こうぜ”と言うようなプレイヤーと。
そんなプレイヤー達が集い、生きていく世界を望んだゲームマスターの、その心湧く軌跡を綴った物語。
終わらない夢は無い。本当にそうだろうか?終わらない夢は無いことを知ってなお、終わってほしくないと願うもの達がいるのならば。終わりがあるがゆえに輝く夢は、終わりがなくとも、常に輝き続ける現実へと、昇華され、やがて………………………