肆
「これ以上話していても時間の無駄ですね。僕はこれで失礼しますよ」
少しの間続いた優志との言い合いを止めた朔良はどこかに歩いて行った。
「はぁっ!?あいつ、マジで何しに来たんだよ」
「え、そんなの決まってんじゃん。俺を貶しnあだっ」
「紅葉」
「こ、昂輔、ごめんって・・・だからその顔やめて!!」
軽く小突かれた頭を抑えながら横を向くと、黒い笑を浮かべた昂輔の姿が・・・。
「はぁ、いい加減にしなよ」
「・・・気をつけます」
「と、取り敢えず行こうぜ!」
空気を読んだ優志の一言で、俺たちはまた歩き出した。
学校を出る前に、別の場所で一度別れた朔良の姿を視界の端に捉えていた。生徒に優しげな表情を浮かべながら話す姿は、当然だが俺の知る朔良ではない。いつも俺に向ける姿と、俺以外に向ける姿のどちらが本当の朔良なのか俺にはもう分からない。
でも、もし・・・・・・俺たちが俺たちの親が、運動や学力の出来にこだわるような性格でいなければ、周りがもっと俺たち二人を対等に見てくれていたらとか思うと、俺と朔良の関係もここまで悪くなることはなかったんじゃないのか。まぁ今更考えてもしょうがないんだろうけど、ふとした時にそう考えてしまう。